例え役の上でも・・・ ー後編2ー



「んん・・・ん~~・・・・・・寒い・・・・」


もぞもぞと布団を自分の方に引っ張りよせようとしたが・・・あれ?動かない?


有り得ない重力


一人で眠るベッドでは、簡単に自分は温もりの中に戻れる。


でも・・・たまにこういう事がある-------


彼女が隣で眠っていて、布団を一人で抱きかかえている場合だ。


いつも思うんだよな・・・・・


抱きかかえるのは布団ではなく、俺にしてくれたらいいのにって


あ~~本当に寒くなってきた。


風邪ひく前にキョーコを抱きしめて暖まろう・・・・・えっ?・・・待て?・・・


昨日は確か・・・ドラマの打ち上げで・・・皆と飲んでて・・・


相手の主演女優がしつこくて、鬱陶しくなって誤魔化すように飲んでた?


そして・・・・・イタタタッ・・・・頭が痛い!・・・まずい・・・・・


何も覚えていない・・・・・まさか?


俺は、とんでもない裏切りをしてしまったんじゃあないだろうな?


恐る恐る目を開けて、顔を横に向けた。

隣には背中を向けて、布団を自分の方にまきこんで眠る・・・知らない女性(ひと)?


キョーコより少し明るめの茶色くて長いロングヘアーだ。


まさか・・・・


ゆっくり視線を下に向けて、自分の身体を確認すると、

何一つ身に着けていない生まれたままの姿?


嘘だろう・・・・やってしまったのか・・・本当に? 何も覚えていない・・・・


「んん~・・・・ん~~~・・・・・ムニャムニャム・・・・・」


隣でスヤスヤと眠っている女性は、小さな声で何かを呟くと、身じろいで腕をだし

寝返りをうって、枕に顔を埋めるようにしてうつ伏せになった。


布団の隙間から、染みひとつない白く透き通った素肌が垣間見え、彼女も何も身に着けていないことが予測できた。


自分の有り得ない失態と二日酔いのダブルパンチでガンガン痛む頭を押さえて、のろのろと起き上がり、ベッドサイドのごみ箱を覗き込んだ。


丸められたティッシュの固まりがいくつも捨てられていたが、四角い袋の破りカスは一つも見当たらない。

一気に目の前が真っ白になり、今まで作りあげてきた『敦賀蓮』の虚像がガラガラと崩れていく。


俺は、なんてことをしてしまったんだ!

酔った勢いで、避・妊もせずに他の女を抱くなんて・・・


キョーコにこの事がばれたら、もう終わりだ。

本当に俺は、捨てられる?


嫌だ! 絶対に! 彼女を失いたくない!


何としても、彼女にばれる前に、手を打たないと。


意を決して、ゆっくりと隣で眠る女の顔を覗き込んだ。

枕に埋もれた頭からわずかに見える横顔は、俺の大切な女性(ひと)によく似ている?

穏やかに寝息をたてて眠る彼女を起さないようにそっと布団をめくってみる。


滑らかな素肌が綺麗な曲線をえがいているその先に、可愛らしいヒップが見えて、その足の付け根に俺しか多分知らないであろう彼女の印・・・

小さなほくろがあった。


よかったああ~~~


キョーコだ!!


嬉しくて彼女の印に唇を寄せて、俺の印を刻み込んだ。

起きるかな?と思ったけど、軽くお尻を揺らして、また寝返りを打ち俺の方に顔を向けてきた。


やっぱりだ-----この2週間---会いたくて 会いたくて

温もりを確かめたかった愛しい人


俺がこんなにも彼女との別れを恐れ、思い悩んでいたのに

君は今も寝息をたてて無邪気に眠っている・・・


それが少しだけ悔しくて、彼女を抱きしめたい衝動を抑え、ベッドを出た。


彼女が俺と同じように昨晩の事を覚えていないとは限らない。

でも少しだけ意地悪をしたくなったんだ。


彼女が目覚めた時に、俺の温もりを感じられなくて、

寂しがってくれたらそれでいい・・・


彼女に俺の姿を探して欲しかった。


先に、シャワーを浴びるか・・・


寝室を出て、リビングに行くと、点々と散らばる脱ぎ捨てられた服が、昨日の情事を想像できて、思わず頬が緩んでしまう。


ここまで彼女が一人で連れ帰ってくれたんだろうか?


彼女の荷物は隅の方にきちんと置かれているのに、それ以外はぐちゃぐちゃだ。

すべてが投げ捨てられたように点在していて--------


なぜ俺の下着がこんな所に落ちてるんだ?


こっちはキッチンだろう?


それにならばと------

一緒に落ちている筈の彼女の下着は-----なぜトイレの前にあるんだ?


おかしいだろう? 場所が離れすぎだ!


俺達は、一体-----どんな愛し方をしてたんだ!?


頭痛い・・・まったく覚えていない。


あちこちに散らばる服を拾い集めながら、昨夜の事を思いだそうとするが、

2次会の途中あたりから記憶が途切れて全く覚えていない。


あの時はまだ彼女はいなかったから、その後に彼女が迎えに来てくれたのか?

それともこの部屋で待っててくれたんだろうか?


また例の癖が出て、そのまま・・・彼女を襲った?


ふふふっ・・・キョーコは、俺のあれに弱いからな・・・


まあいいか---これで仲直りできるなら、この後どれだけキョーコに怒られても我慢出来るさ。


と----なぜにトレーニングルームにズボンが落ちてるんだ?


俺の昨日の動線は全く想像できない。


シャツとネクタイがリビングで、上着と下着がキッチン、そしてなぜにズボンだけトレーニングルーム?


何だかとんでもなく恥ずかしい醜態を曝したようで、頭を抱えたくなる。

とりあえず頭を冷やすためにシャワーを浴びて来よう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


バスローブを羽織って、濡れた頭をわしゃわしゃとタオルで拭きながら、寝室に戻ってみると彼女が真っ青な顔でごみ箱を覗き込んでいた。


全く俺と同じ反応をしている彼女に思わず吹いてしまった。


「ブッ・・・・クククッ・・・・何してるの キョーコ?」


「蓮さん・・・・」


明らかに俺の顔を見て、安堵する彼女の表情に

キョーコもまた俺と同じように記憶がない事が想像できてほっとした。

これなら俺のいいように誤魔化せるかな・・・フフフッ・・・


「ごみ箱なんか覗き込んで、何やってるの?」


「----////----ごめんなさい---昨夜---私---蓮さんに何かしました?

どうして私は、ここに来ているんでしょうか?もしかして!?

酔って、呼びつけたり、管巻いて襲ったりしたんでしょうか!?」


「------昨日のキョーコは----情熱的で---激しかったよ----」


「えええええ~~~~!!!!

申し訳ございません。」


ベッドから飛び降り、一糸も纏わない姿で土下座する姿が何だかとてもエロくて、無意識に喉を鳴らしてしまう。


頭を深く下げているので、さっきつけた俺の印が存在を主張して・・・


このまま背後に回ってと・・・またよからぬ事を考えていると

俺の反応が何もないのを不安に思ったのか、手をついたままゆっくりと顔を上げて、俺の顔を覗き込んできた。


その顔はひどくあどけなくて可愛いんだが、その恰好は拙いだろう!


小さく揺れる胸が俺を誘っているようだ!?


ああ~あそこにもたくさんの俺の印がある・・・昨夜の情事の証…

どくどくと脈打ち動き始めた俺の欲の塊を強引に抑えつけて、彼女の前に跪いて強く抱きしめた。


「ごめん・・・嘘だよ・・・実は、俺も何も覚えていないんだ。」


「ひど~い! 本気で今焦ったのに!!」


「みたいだね・・・クックツクッ・・・さっきのキョーコの反応---

とても半年前までは、何も知らない歩く純情さんだったとは思えない姿だったよ。」


「///----誰が私をこんな風にしたと思ってるんですか///」


「うん、わかってるww 俺だね。 ちゃんと最後まで責任持つから、安心して。

ちょうどいい機会だし、この前預けた指輪もそろそろここにはめて貰えないかな?」


左手をとって、薬指にキスを落とすと、キョーコを熱く見つめた。


「今・・・こんな時に言うなんて…ズルい・・・」


プイと顔を背けた頬が赤く染まっていて、あともう一押しと口を開きかけた時、

無粋な着信音が静かな部屋に鳴り響いた。


「ふううう~~~っ-----社さんか---キョーコ、ちょっとごめんね。」


「早くでて下さい。私もシャワーを浴びさせてもらいますから。」


そう言って、シーツを体に巻きつけ、逃げるように部屋を出て行った。


「社さん、間が悪すぎますよ---」


誰に言うでもなく悪態をついて、さっきテーブルに置いた携帯を手に取り、

受信ボタンを押した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


シャワーを浴びて、身体はさっぱりしたが、昨日の余韻か重だるい下半身を引きずるように、蓮がいるであろうリビングに戻った。


蓮さんには言えなかったけど、さっきはマジで焦った。


目が覚めたら自分の部屋と違うベッドで眠っていて

隣にさっきまで誰かが眠っていたような温もり・・・痛む下半身・・・


何も覚えていない自分


思わずゴミ箱を覗き込んでしまった自分が情けなかった。


でも、蓮さんの声を聞いて安心しただなんて…絶対に言えない。



彼も記憶がないようで、とりあえず助かった。


でも本当に私たち、昨日は一体何をやらかしてしまったんだろうか?

皆に迷惑かけるようなことしてなければいいんだけど・・・


どうしていいかもわからなかったが、まずは蓮の予定を聞いて彼に食事をさせてから次の事を考えようと思ったキョーコは、ぼお~っとテレビの画面を見つめている蓮に声をかけた。


しかしキョーコの呼びかけにも彼は振り返ることもせず、ただ夢中でテレビ画面に見入っていたので、心配になって彼の隣に座り、もう一度身耳元で呼びかけた。


「蓮さん・・・」


振り返ったその顔は、ひどく困ったような…戸惑ったような表情で、私の肩を抱き寄せるとまた、テレビの方に向き直った。


私も彼と同じようにテレビの画面に向き直り・・・そして・・・

言葉を失った。


3へつづく



この回は、ただ寝起きのゴミ箱確認をさせたかった!

それだけで書いちゃいましたww

よくあるシチュですが、一度自分で書きたかったんです♪

そしてどうせなら・・・ダブルでやっちゃえ!と思い

こんなお話に----


二人の性格、激しく変わってますよね!

ごめんなさいm(_ _ )m


もう今さらですか?(゚_゚i)


すみません!次回はラスト! もう少しおつきあいください。




こんな話ですが、気が向いたら拍手下さいガーン



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