発熱 ー後編ー


寝室に戻って、声をかけたが、返事はなかった。


寝ちゃったかな?


温くなったアイスノンを取り替えて、まだ少し赤い顔のキョーコに額を当てて、

熱があるか確かめた。


だいぶ下がってきたかな?

さっきよりも寝息がだいぶ落ち着いている。

薬が効いてきたようだ。


彼女の汗ばんだ額を拭いてやりながら、肘をついてぼんやりと彼女の顔を見つめていた。


恋をする事を昔、彼女は『愚かな行為』と言っていたが、

本当にそうかもしれないな・・・

弱っている彼女の姿すら、こんなにも愛おしく思えて

恋心が募ってくる。


俺も相当の愚者(バカ)になってしまったか・・・


彼女の表情一つで幸せにも、不幸にも思えるんだから

『恋愛』は、やはり怖い。


「お嬢さん、早く元気になって、俺にまたあの可愛い笑顔を見せてね。」


顔色がだいぶ良くなってきた頬に唇を寄せる。


「んん・・・んんん・・・」


瞼がぴくぴくと動き、頭を何度か揺り動かすと、ゆっくりと目が開いた。


「蓮さん・・・私・・・どうしてここに寝ているの?確か、私はリビングで・・・」


「うん、リビングでうたた寝していたのを、俺がここまで運んだんだ。

熱があったからね。」


「あっ・・・ごめんなさい。

蓮さんを待っている時から、本当は、熱っぽかったんです。

でも、帰りたくなかった。

------久しぶりだったし------ちょっと---だけでも---会いたくて、

待っていたら、そのまま寝ちゃったんですね。

蓮さん、ごめんなさい。」


フラフラと起き上がり、しょぼんとなって頭を下げた。

どうしてこの子は、自分がしんどい時まで、自分の事より、俺の事を気にかけるんだ。

もっと俺を頼ってくれたらいいのに。

そんなに辛そうな顔で、我慢して謝らないでほしい。


こっちまで辛くなってしまう。


下げている頭に顔を潜りこませ、両頬をむぎゅっとつかんで、顔を上げさせた。

驚いて目を見開いてこっちを見つめているが、アヒルのように尖った唇がなんとも可愛くお茶目で、思わず吹き出してしまった。


「ひどい、蓮さん!人が真剣に謝っているのに、どうして人の顔をおもちゃにして、吹き出すんですか!」


「くっくっくっ・・・ごめん、ごめん・・・

あまりにも可愛くて、つい笑っちゃったんだ。ごめんね。」


まだ文句の言い足りないキョーコの唇をキスで塞いで、ギュッと強く抱きしめた。


「キョーコがあまりにも悲しい事言うから、つい苛めたくなったんだ。

だって、そうだろう?俺だって、会いたかったのに、キョーコが俺に会いたいと思ってくれて、うれしかったのに、どうして謝るの。俺にそんな事で謝らないでほしい。辛い時には、辛いと言って。もっと甘えて欲しいから。」


「でも・・・風邪をうつしたら、蓮さんにまた迷惑かけちゃうし・・・」


「いいんだ。キョーコにかけられる迷惑だったら、何だって嬉しいよ。

キョーコからもらう風邪だったら、さぞや甘いものだろうしね♡」


「もお~~、蓮さんたらww」


神々しい笑顔で彼女を見つめると、恥しそうに俺の胸に顔を埋め隠していたが、耳の裏は真っ赤になっていた。


「可愛い。」


真っ赤になっている耳をぱくっと甘噛みして、チュッというリップ音と共に口を離した。


「食べちゃいたいくらい可愛いよ。これは、ちょっとだけ味見ww」


ぷるっと震えて、おずおずと真っ赤になった顔を少しだけ離して、見上げている。

怒るのかな?と思っていたが、キョーコは、不安げに上目づかいで瞳を揺らしていた。


「本当に、風邪がうつっても知りませんよ。」


「心配しなくても大丈夫だよ。それより身体まだ辛いだろう?

もう少し寝ていた方がいいんじゃない?」


「うん・・・もう少しだけ・・・でも、蓮さん・・・

もう私は、大丈夫ですから、蓮さんも休んでください。明日も朝、早いんでしょう?」


「また気をつかう!俺の事は心配しなくてもいいから、自分の身体を心配しなさい。

辛い時は、甘えないと駄目なんだよ。病人の特権なんだから。」


「特権?」


「そう、特権!それとも何!?俺に、側にいて欲しくないとか思ってるの?」


「ち・・違います・・・そんな~本当は、もう少し側にいて欲しい・・・いて欲しいです!

そして、ずっと手を握っていて下さい・・・蓮さんの温もりを感じていたいの。

せめて私が眠るまで・・・

でも、本当にこんな我儘なお願いしてもいいんですか?」


「当たり前だよ。ずっと側についていてあげるから、安心して休みなさい。

社さんにはもう連絡してあるから、明日の仕事の心配はないよ。

スケジュールは1日、休みにしてもらってるから、ゆっくり休みなさい。」


「ありがとう・・・蓮さん」


ふわりと、心底安心したような笑顔を浮かべると、握っていた俺の手にふにふにと嬉しそうに頬ずりをしてきた。


まるで茶色の猫みたいだな・・・

無茶苦茶可愛いww


風邪がなおったら、

あんなことやこんなことをして、それから・・・

思いっきりこねくり回して、可愛がってやりたいな。



「喉、乾いてない?水飲む?」


「はい、欲しいです。」


もう一度、ゆっくり起き上がるキョーコに水を手渡し、一緒に持ってきた濡れタオルで汗を拭いてあげた。


「だいぶ、汗かいてるね。もう一度着替える?」


「うん・・・着替えたいです。なんだか、べとべとして、気持ち悪いし・・・」


「はい、じゃあ、これが着替えとタオル。俺は後ろを向いてるから、自分で着替えてね。」


そう言って、この家で着る用のパジャマをベッドの上に置いて、持っていた水を受け取って、その代わりにタオルを手渡すと背中を向けた。


少し恥ずかしかったけど、蓮さんがこの部屋から出て行くのはやっぱり嫌だったので、自分も背中を向けて、汗ばんだシャツを脱いでいく。


あれっ・・・私、いつの間に着替えていたんだろう?

これも、蓮さんが着替えさせてくれたのかしら?

じゃあ、私が着ていた服はどこ?


すこしきょろきょろして辺りを見渡したが、それらしきものは置いておらず、蓮さんが、いつ帰って来たかさえ、よく覚えていなかった。


汗ばんだ身体を拭きながら、必死でリビングでうとうとしていた時の事を思い出す。


確か私は、ソファーで横になりながら、蓮さんの夢を見ていていたんだ。


蓮さんは、私の頭を膝の上に乗せて、頭を撫でてくれた?

とっても気持ちよくて離れたくなくて、

「夢だし、いいよね?」と思って、蓮さんに思い切って、しがみついちゃったんだ。


ふふふっ

私って、大胆ww


でも夢だから、何でもできるよね~ ふふふ・・・

そしたら、蓮さんたら・・・


「こんな事してたら、俺に襲われても、文句はいえないよ。」


な~んて言うから、私も本当の気持ち言っちゃったんだ。


//////////


リアルでは、絶対に!恥ずかしくて言えないけど・・・・


えっ?ちょっと待って?夢?本当に夢だったのかしら?


もしかして・・・あれって・・・リアルな出来事!?


本当に、蓮さん帰って来てたの?


ウソ ウソ ウソ


いやだあ~私、なんて恥しい事しちゃったのかしら・・・


先ほどの自分の大胆な行動を思い出し、茹でダコのように真っ赤になって、ベッドで頭を抱えてしまった。


スプリングが軋む音に、蓮さんは頭を捻って、振り返ろうとしたが、すぐに思い直したのか、そのまま後ろを向いたままだった。


もう~、せっかく下がった熱がまた上がりそうだわ。


私ったら、なんて馬鹿な真似をしてしまったんだろう。


え~っと、他にまだ私は、何か・・・やらかしていなかっただろうか?


うろ覚えな意識を必死で手繰って、その後に、起こった事を思い出していた。


確か・・・急に蓮さん、焦りだして、急いで私から離れて、背を向けてそれから----


思い出した!!


ボッ! ボッ! ボッ!


顔から火が出るとはまさしくこの事だろう。


恥しい・・・穴があったら、このまま入って、春まで冬眠して、すべてをなかった事にしてしまいたい。


でも、蓮さんの方がもっと恥ずかしかった?


私の為に、ずっと我慢してくれていたの?


私はまだあなたにとって、対象外のお子様なんですか?


ソンナノ・・・イヤダ


私は、蓮さんとなら・・・・


持っていたタオルをギュっと握りしめ、唇を噛みしめると、目を瞑り大きく息を吐くと、勇気をもらうためにナツ魂を宿らせた。


着ていた服を全部脱いで、シーツを自分の周りにかき集めて隠し、前は着替えのパジャマを手に持って隠した。


「すみません、蓮さん。背中の汗を拭いてくれませんか?」


「ん?ああ、いいよ///」


振り向いた俺の目には、一糸纏ってないキョーコの色っぽい背中が飛び込んできた。

熱のせいか、仄かに桜色に染まった背中が妙に艶めかしい。


前を着替えのパジャマで押さえて見えないようにしているが

何故君は、俺の前で平気で脱ぐんだ!


俺を信用しすぎだろう。


この状態で俺に何かされても、文句は言えないぞ!


無防備にもほどがある!

襲ってくれと言ってるも同じじゃないか!


マズイ・・・またよからぬ場所に熱が集まってきている。


駄目だ! 駄目だ! 駄目だ!


彼女は病人なんだ。

ただ汗ばんで気持ち悪いから、俺に甘えてるだけなんだ。


熱を出してる彼女を襲ったら、俺は本当に、けだもの以下になってしまう。


早く済まして、この部屋を出て、一旦頭を冷やそう。


震える手を伸ばし、ゆっくりと彼女の滑らかな背中を拭いていく。


出来るだけ彼女の肢体が視界に入らないように、目を逸らしながら。


「蓮さん、私はもう///子供じゃないです///

目を逸らさないで下さい。私を見てください。

男の///男の人の生理現象だって--もう知ってるし--------

私の---私の為に、我慢なんてしないでください!

一人でやらないで下さい!

私にも///手伝わせてください!!


えっ・・・・・・・・・・・・・? 手伝う? 何を?

うそ・・・・・・・・・・・・・?

見られてた?


「うそだろおおお~~~~!!!!」


頭を抱えて蹲る俺に、振り返った彼女が必死の形相で詰め寄ってくる。


「教えてください!私、頑張ります!」


「何を頑張るの!?熱があるんだろう!もういいから、早く寝なさい。」


「嫌です!蓮さんの看病のおかげで、熱は下がりました!もう大丈夫です。」


「こら、そんなに近づかない!見えるだろ!」


「やっぱりこんなお子様体型では、欲情しないんですか?」


「んなわけないだろう!だから、俺は今こんなにも苦労しているんだ!」


「苦労?」


「こら、これ以上近づくな!おい、どこ見てるんだ君は?

君は歩く純情さんだったんじゃないのか!

こら!首傾げて、手で確認するな。」


「頼む!頼むから・・・もう------------」



うわあああ~~~~~!!!!




おわりです♡



いやあ~キョーコちゃん、言っちゃったよ(///∇//)


スレタ大人のラブコメは、いかがでしたでしょうか?


終わりをどこまで書くかで迷ってしまいましたが、

もうこの辺でいいですよねw


だってこの続き書いたら、勉強熱心なキョーコちゃんが

蓮さんのお手伝いをする為に、頑張るしかないものねラブラブ


実は、このお話、セカンドを書くためのリハビリのつもりで書いたけど、

切ないは、スレてるは、可愛くないわで全然リハビリになってなかった汗


結局、無理!ということで、答えは出たので

諦めてこれからセカンドの続きを書き始めますグッド!


目指せ!週末UP!



お気に召しましたら、ぽちっとよろしくです。

ピコを調子に乗せちゃうボタンwかな?



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