やっと前回のお話で、キョーコちゃんが自分の気持ちに素直に向き合えるようになりましたw

予定より長くなってしまいましたが、今日で最終回。

二人の出した結末をどうぞお楽しみください音譜


キスマーク一部、キョーコちゃんのセリフをなおしました。

ちょっとわかりにくかったかな?とも思い、もう少し丁寧に書いてみましたが・・・

はてさてどうでしょう?

上手く伝わればいいな♪



氷の仮面 ~消滅と誕生~ 24


Dr.の診察が終わり、また二人っきりになった病室で、キョーコは笑顔でクオンに話しかけた。


「他にどこも異常がなくてよかったわね。入院も2、3日で済むそうだし、安心したわ。」


「うん、ありがとう。でもこの右手がしばらくは動かせないのが、ちょっと辛いな。」


軽くギブスで固められた右手をあげて、恨めしそうに見つめるクオンの右手に触れて、そっと下に降ろす。


「私が貴方の右手の代わりになるから、我慢して・・・ごめんね、クオン。」


「さっきから何回、謝っているんだ。もう気にしなくていいから、顔を上げて。俺は、レイナが無事ならそれだけで、よかったんだ。」


「ありがとう-------でも、私-----

他にも貴方には、たくさん謝らないといけないことがあるの。」


少し寂しそうに笑うレイナに、嫌な予感がした。


もしかしたら、俺の怪我が治ったら出て行くつもりだとか言うんじゃないだろうな?


高橋と一緒にNYに行くのか!?


嫌だ!絶対に許さない!


レイナを一挙手一投足まで見逃さないようにと、クオンは痛む身体も顧みず、無理に起き上がろうと左手をベッドの脇についた。


すぐにその様子に気づいたレイナは、彼に手を貸し、抱き起し、少しでも痛みを和らげるようにと、背中に枕や毛布を置いてクッション代わりにして、ベッドの背に寄りかかるようにして座らせた。


「ありがとう。で、他に何を謝りたいって言うの?まさか俺の部屋から出て行くとか、言うんじゃないだろうね?」


疑心のせいか、棘のある物言いになってしまう・・・優しく尋ねたいのに・・・怖がらせたくはないのに・・・


「違う!私の為に怪我をした貴方を置いて、出て行ったりしないわ!

ただ私---------クオンに隠している事があるの。ごめんなさい・・・

貴方が知っているレイナは、もうここにはいない。私は、キョーコ。

ずっと黙ってて、ごめんなさい。」


「えっ!?キョーコ!キョーコなの?一体いつから・・・はっ!」


焦ったように口に手を当て黙り込んだクオンを見て、レイナは苦笑いを浮かべて言葉を続けた。


「もう隠さなくてもいいの・・全部先生から聞いたわ。ごめんなさい・・・敦賀さん。

黙ってあなたから逃げ出してしまって・・・随分あなたを苦しめてしまったのね。

本当にごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい。」


何度も頭を下げるキョーコの頬にそっと手を添えて、流れ出る涙を拭い取る。


「俺の方こそごめんね。君が苦しんでいる事にも気づかず、ただ君を手に入れた事だけに満足してしまい、浮かれてた。本当にごめん。もしあの時、もっと早くに君の辛さに気づいてあげてたら、こんなに君を苦しめることもなかったのに・・・本当にごめん。」


手を伸ばし彼女を抱き寄せようとすると、彼女も身体を寄せて、素直に俺の胸の中に顔を埋めてくれた。


「よかった・・・本当によかった・・・キョーコが戻って来てくれて・・・もう何度も駄目かと思ったことがあるんだ。」


「ごめんなさい・・・」


「でもいつから?いつから、キョーコと入れ替わってたの?」


「-----------あなたと----クオンと寝たあの夜から---

私はずっとキョーコだった。ごめんなさい。」


「そんな前から・・・・? くっそお!!!

俺は何を見てたんだ!一緒に暮らしていたのに・・・

君の変化にも気づけなかった・・・情けないな・・・」


彼女を抱きしめる左手に力が入り、ぐしゃりと彼女の洋服を握りしめた。


「あの日、貴方が苦しんでいる姿を見ていられなくて、レイナが私を心の奥から引っ張ってきたの。『自分は消えてもいいから、彼を助けてあげて欲しい・・・クオンを救って欲しい』って言ってキョーコちゃんと二人で私を外に押し出したのよ。」


「そうだったんだ・・・はははははっ・・・・・・

まったく俺は、間抜けだよな。レイナがキョーコとも気づかずに抱いて、キョーコを裏切ってしまったと、ずっと後悔してたなんて・・・何やってるんだ・・・俺は!

1年前とちっとも変わってないじゃないか!」


キョーコを胸に抱いたまま、左手で自分の頭を小突いて、情けなく笑っているクオンを見上げ、レイナもつられるように笑みをこぼしていた。


「私も同じ・・・クオンが敦賀さんと同一人物だと気づかず、ただ敦賀さんを裏切ってしまったと自分を責めて、クオンからも距離を置こうとしてたの・・・馬鹿よね。

せっかく私を迎えに来てくれたのに、気づいてあげられなくてごめんなさい。」


「もういいよ。お互い様だろ----それよりもう一度、始めからやり直そう。俺の元に戻って来て欲しい。」


彼女の頬に手をあて懇願するように見つめていると、少し揺らいだ瞳が何かを考えるようにしばらく目を伏せ、そして静かに首を横に振った。


「ごめんなさい・・・それはできない・・・私はもう最上キョーコには戻れないの・・・

だから、無理なの・・・敦賀さんとはやり直せないわ。」


翳る瞳を逸らして、静かに身体を離そうとするキョーコをもう一度強く抱きしめた。


「違う!最上キョーコには戻らなくてもいいんだ!

ここで・・・この国で、俺と、『クオン・ヒズリ』と、一からやり直してほしいんだ。

君をいらないと言った『最上』の姓なんて、捨ててしまえばいいんだ!

これからは、『キョーコ・ヒズリ』として、新しい家庭を二人で作っていこう。

キョーコ、君を・・・君だけを愛してる。これからは、ずっと側にいて君を守るから・・・一生君を離さない!約束する。これからの人生を死ぬまで二人で歩いていきたいんだ------

だから、お願い---結婚しよう。」


「クオン・・・・」


思っても見なかったクオンからのプロポーズに嬉しくて、ぽろぽろと綺麗な涙を流しながら、キョーコはクオンの胸で、ただ泣きじゃくっていた。


「私・・・『敦賀蓮』として振舞っていた頃の貴方にも、今、本来の姿に戻っているクオンにも、気づかないまま恋をしてしまったわ。

一度に二人の人を愛するなんて、相手に対して、どんなにひどい裏切りになるかとわかっていても、想いは止められなかった。

でもね・・・一つだけ違った事があったの。

私は1年前と同じ、今でも、敦賀さんだった貴方とは、一緒に暮らせないと思っている。彼の光り輝いている世界を、私の汚れた闇で穢したくない!彼は、私の憧れであり、目標だったから、綺麗なままでいて欲しいってね・・・

なのに、クオンへの想いは少し違っていた。

クオンとなら・・・同じ闇を持つクオンとなら、一緒に人生を歩んでいける。

離れたくない!ずっと一緒にいたい!と思ってたのよ。

高橋先生から、クオンが敦賀さんだと教えてもらうその前から、ずっとね・・・

可笑しいでしょう?同じ人なのに・・・

愛してるわ・・・クオン・・・この先もずっと自分の闇は無くならないだろうけど、貴方を信じて、共に寄り添って生きていきたい・・・貴方を愛してるの。」


「ありがとう・・・キョーコ。本当の俺を選んでくれて。これからは、キョーコのすべてを愛させて欲しい.。

苦しさも、悲しみも、痛みもすべて、二人で分かち合って生きていこう。

どんなキョーコも、全部受け止めて見せるから。ありのままの君を愛すると誓うよ。」


キョーコは、クオンの左手に指を絡ませてギュッと握ると、嬉しそうに見上げた。

ゆっくり頷く彼女に、破顔してそおーっと顔を近づけ、振動が伝わってきそうなほど近い距離で一言


「愛してる」


と囁いて、唇に誓いのキスを何度も交わしていった。


キョーコを守っていた氷の仮面は、クオンの大きな優しさに触れて溶けてゆき、

ありのままの心で彼に触れ、深く愛されていった。


もう自分の闇を恐れなくてもいいんだ。


互いの闇と共に、二人でずっと手を携えて、生きていこう。


ずっと ずっと 永遠に・・・・・


愛してる 愛してる 愛してる 愛してる


君のすべてを・・・  貴方のすべてを・・・






それから3ヶ月後、クオンの怪我の完治を待って、映画の試写会は行われた。

当初は、撮影時に起こった大事故という事もあり、公開が危ぶまれていたが、当人たちの強い意向の元に公開が決まったのだ。


公開前からこの事故のせいで注目を浴びていた映画は、

二人の気迫あふれた迫真の演技に、観客は皆度肝を抜かれ、

この夏最大のヒット作となって、アメリカ全土にクオンとキョーコの名前は知れ渡るようになっていた。


もう誰もクオンを、クー・ヒズリの息子と言うものはおらず、一人の実力派ハリウッドスターとして扱われるようになっていった。


そして翌年の冬・・・



「レイナさん、おめでとうございます!

見事アカデミー主演女優賞の栄冠を得られましたね。日本人女性としては、初の快挙!ご感想をお聞かせください。」


「ありがとうございます。これもすべて私を支えて下さった皆様のおかげだと思っています。心より感謝しています。そして・・・隣にいる彼がいなければ、今、私はこの場には立っていられなかったと思っています。」


そう言って、隣で彼女の腰を抱き、穏やかに微笑む彼に軽くキスを落とした。


「クオンさんは、惜しかったですよね。下馬評では貴方を推す声が多かったようですが、結果はジェフリー・バーグマンがとった。その辺、どうお考えですか?奥さまに先を越されたのは、やっぱり悔しいですか?後悔とかしていませんか?」


「彼が獲ったのは、当然の結果だと思っています。彼の演技は、素晴らしかった。彼に比べたら俺なんて、足元にも及びませんよ。

それに俺はこの映画で、自分にとって、『かけがえのない宝物』を手に入れることができた。

後悔なんてとんでもない!最高に今、満足していますよ。

まあ、オスカー像は欲しいですが、これからまたいい作品に巡り会えるでしょうし、その時にまた頑張ればいい、それだけですから。妻には、負けられませんよ。」


そう言ってカメラに向かいウインクをして、艶やかに微笑む姿は、周りにいた女性陣はもちろん、TVで見ていた視聴者たちも骨抜きにして、世界中の女性を虜にしていった。


結婚をして、一段と艶がでてきたクオンは、その後、一気にアメリカでもスターダムに上りつめ、


それから数年後、


宣言通り、クオンはアカデミー主演男優賞の栄冠を勝ち得るのだった。



【Fin】



終わりました!!

やったあ~! ドボン脱出!って、

まだ本当は抜け出せていない、ただの仮出所ですがにひひ

その上、なぜかドボン穴が二つに増えてる気も汗


見なかった事にしよう・・・

きっと老眼が酷くなって、二つに見えるだけよねw


もう1話♪

あとがきとおまけをちょっとだけUPしたら、本当に終わりです。


だらだらと続けてしまったピコの妄想劇場にお付き合い下さった読者様

ありがとうございました!


次回作(放置状態の連載ですがあせる)もお楽しみにパー



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