魔人様の指摘により、もう少しわかりやすくなれば?と、劇中劇を追加してフランツとマリアのやりとりと今の2人のやりとりを対比できるようにしてみました。

また前半の当初の文章に手を加えて違和感を取り去ったつもりですが、まだ矛盾しているかな?、上手く伝えられたでしょうか?

難しい展開を、文才のないピコが書くので上手く伝わるかが不安です。


わかりづらかったら、どこからでも構わないので、遠慮なくご意見下さいm(_ _ )m


今後の展開でも、2人が役を抜け切れれないまま、役に翻弄されるようにそれぞれに違う人物として惹かれあっていきます。


ややこしい!!


妄想力を研ぎ澄ましてお読み下さいあせる




氷の仮面 ~消滅と誕生~ 7


(『アサシン』劇中劇 シーン27)


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「マリア、ディナーに行くよ」


「・・・・・・・・・・」


無視をして、フランツの横をすり抜けようとする彼女の腕を取って引き止めた。


「これも仕事のうち。食事のマナーもレディには大切なんだよ。

さあドレスを用意しているから、着替えておいで。」


反論したげな表情を浮かべたマリアだったが、自分の今の指令を思い出し、フランツに言われた通り、部屋に戻って彼が用意したドレスに身を包んだ。


真っ赤なタフタのミニのAラインドレスで肩は大きく開かれ、ウエストは共布の大きなリボンで絞られていた。


「なんだこれ?ちょっと待って!どうして私がこんな派手で恥かしい服を着て、あなたと一緒にディナーに行かないといけないの!?」


不服そうに見つめるマリアに、フランツは呑気に笑いながら頷いた。


「着飾って外出するのも、レディとしての動作を身につけるにはいい訓練なんだよ。それに、そのドレス・・・マリアの綺麗な黒髪が引き立って、とても似合っている。

ちっとも恥ずかしくなんかない。さあ行くよ。1ヶ月でレディになってもらわないと、俺の命が危ないから、悠長な事はしてられないんだ。時間が勿体無い。」


部屋のドアを開け、腰に手をあて待っているフランツに、マリアはしぶしぶ近寄り腕を組んだ。


そして、2人がやって着た場所は3つ星フレンチレストランで、事前に予約していた個室へと通された。


その店内の優雅な雰囲気とは打って変わり、室内では細かいまでの食事マナーをフランツによって、徹底的に厳しく指導されていった。


あまりのしつこい注意にせっかくの美味しい食事も冷め、とうとう切れしまったマリアは席を立ち、一睨みして言葉も発しないまま背を向けて帰る為、扉へとさっさと歩きだした。


「帰るの?ボスに報告するよ。マリアは暗殺者失格だって。

指令も全うできない君なら、そう言われても仕方ないよね。」


フランツはニヤッと笑みを浮かべて彼女の背に声をかけると、後ろを振り向いてキッと睨みつけるマリアの傍により、、髪の毛を一房すくって指に絡める。


「俺も必死なんだよ。時間があまりないので、つい厳しくなってしまった。ごめんね・・・さあ食事を続けよう。」

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


(シーン27終了後のお昼休憩)



「レイナ!お昼に行くよ」


「…………」


声をかけてきたクオンを無視して通り過ぎ、最近のレイナの定位置にもなっている大道具置場に歩き出した…が、追いかけてきたクオンに腕をとられてすぐに引き戻される。


「これも仕事のうち。しっかり食べて体力つけるのも役者には大切なんだよ。」


「くっ…」


小さな呻き声を上げるが、すぐに無表情に戻って顔を背けた。

クオンは、構わず彼女の頬に手を添えて、そっと耳元で囁く。


「監督に報告するよ。レイナは、役者失格だって。

自分の体調管理もできない君なら、そう言われても仕方ないよね。」


クオンはニヤッと笑みを浮かべて彼女の背に声をかけると、後ろを振り向いてキッと睨みつけるレイナの髪の毛を一房すくって指に絡める。


「俺も必死なんだよ。ごめんね・・・さあ遅くなるから、早く食事に行こう!」


「ちょっと待って!どうして私があなたと一緒にお昼に行かないといけないの!?」


先ほどのフランツと同じ表情で語るクオンに、レイナもまたマリアとして返してしまい、無視できないまま彼のペースに乗せられるように、手を握られどんどんカフェテリアへと連れて行かれた。



この現場でキョーコに再会してから一週間、ずっと彼女を見続けていた。

何度無視されても、へこたれず声をかけ、周りに『もういい加減諦めたら』と呆れられながらも、誘い続けた。


見事に全て無視されて、言葉を交わす事もなかったが・・・


しかし、最近になってある事実に気づいた。


彼女は、役から抜けきれていないんだと・・・


昔の彼女なら、撮影が終わると、スイッチが切れたように『最上キョーコ』に戻っていたが、今の彼女は、全くその様子が感じられなかった。


『最上キョーコ』を捨てた彼女にとっては必要ないからかもしれないな・・・


だが、この彼女の変化は、俺にとって彼女に近づくチャンスでもあった。

彼女がマリアでいるなら、俺もフランツとして彼女に接していれば、俺の言葉にも耳を傾けてくれるかもしれない・・・

そう感じていたからだ。


それに情けない話、彼女に役で振り回されないように必死でフランツにのめりこんでいった結果、俺自身たまに今自分がフランツかクオンなのかわからなくなる時が最近良くあった。


まるで、終わりのないお芝居で彼女と接しているようだった。


そして、今日も役から完全には抜け切れていない状態で交わした会話のおかげで、今まで何を話しかけても無視だった彼女が、俺の方を見て、人間らしい感情を出し話しかけてくれた・・・怒りの感情だったけどねww


それでも初めて俺を見てくれた!


にやけそうになる表情を何とか取り繕って、半ば強引にカフェテリアへと引張っていった。


「さあ、このトレーを持って。」


また怒って逃げ出す前に、どんどん俺のペースで先に進めていく。

彼女に持たせたトレーに、少量ずつ色とりどりの食べ物をお皿に盛り付けていった。


いつも、昔、彼女がしてくれてたように・・・


「敦賀さん、ちゃんと食べないと駄目ですよ。

一度にたくさん食べれないのでしたら、いろんな種類のものを少しずつ食べればいいんです。

ほら、見てください!綺麗でしょう?

こういう風に綺麗な色合いで食べると、栄養バランスのいい食事が取れるんですよww

茶色だけとか1色だけでは、駄目なんですww」


彼女の愛らしい笑顔が脳裏に浮かんで、泣きそうになってくる。


「・・・・・・・・」


不思議そうに覗き込んでくるレイナと目が合って、現実に引き戻される。


「ごめん・・・昔の事を思い出して、ぼ~っとしていた。」


「ふ~ん・・・昔の恋人とか?あなたさっき、とても幸せそうな表情をしていたわ。」


「ふふふ・・・そう見えた?さあ、早く席について食事を始めよう。

すぐに午後からの撮影が始まるよ。」


彼女の質問をはぐらかして、近くの席につき食事を始めた。


言えるわけないよな・・・昔、君に言われた言葉を思い出してたなんて・・・


「量は少なめにしてあるから、ちゃんと全部食べるんだよ。

このお皿が君のノルマだからね。」


ぼんやりお皿を見つめていたレイナにフォークとナイフを持たせ、彼女の前に少しトレーを押した。

レイナは、反論する事もなく、クオンのいう通りおとなしく食べ始めた。


*******


この盛り付け・・・昔、私が敦賀さんによくしてあげたものによく似ている・・・

この量も?


あの頃は、食の細い敦賀さんが心配であれこれとおせっかいを焼いていたけど、まさか将来、自分が同じように世話を焼かれるなんて・・・あの頃は、思いもしてなかったな・・・


敦賀さん、ちゃんとご飯食べているんだろうか・・・

またおにぎりや栄養補助食品で誤魔化してなんかいないだろうか?


鍵をかけてすべて忘れた想いなのに、何故かこの人といると昔を思い出してしまう・・・

役にひきずられて、彼のペースに惑わされている場合じゃない!


いけない!この人は危険だ。早く離れないと!


彼が話しかけてくる言葉も無視して、黙々と食べ急いでいると、通りかかった監督に声をかけられた。


「レイナ、食事中に悪い!少し話してもいいか?」


「はい。」


監督は、持っていたトレーを置いて、クオンの隣に腰掛けた。


「セットの都合で撮影の順番を入れ替えないといけなくなった。

マリアとフランツの社交ダンスのシーンを3日後に撮影したいんだが・・・いけそうか?」


「えっ?3日しかないんですか・・・」


困ったように考え込むレイナを見て、監督も顎に手をあて難しい顔で口を開いた。


「やっぱり・・・3日で社交ダンスを画になるようにするのは難しいか・・・仕方ない・・・それなら・・・」


監督の次の言葉を恐れて、レイナは焦って遮るように喋り始めた。


「やれます!大丈夫です。3日間でマスターしてみせます。」


「おお~そうかww悪いな。じゃあ、3日後ということで・・・よろしく頼むよ。」


監督はレイナの返事に安心したように立ち上がり、トレーを持って、脚本家の元へと去っていった。

監督の後姿を見つめていたレイナは大きく息を吐いて、視線を戻すとクオンと目が合った。


「本当に大丈夫なの?社交ダンスの経験はあるの?」


クオンが心配そうにレイナに問いかけると、彼女は小さく首を振り、しょんぼりして俯いてしまった。


「やっぱりね・・・よかったら、俺が教えようか?少しぐらいなら踊れるよ。

今回は、フランツがマリアにダンスを教えるんだから、演技練習にもなるし、ちょうどいいと思うけど・・・どうかな?」


「いいの?本当に教えてくれる?」


顔を上げて、戸惑った表情でクオンを見つめる。


駄目だろ!その表情・・・可愛すぎる・・・無自覚なんだろうけど、今の俺には刺激が強すぎる。

思わず抱きしめてしまいたくなる衝動を、俺は腕を組む事で何とか抑えて、大きく頷いた。


「ありがとう・・・じゃあ、今夜撮影が終わったら、うちに来て。

私、一人暮らしだから、遅くなっても気にする事ないし・・・」


「えっ?」


「やっぱりうちは嫌?だったかな・・・・」


「いや!そんな事はないよ。わかった。

じゃあ、今日はレイナの家で、ダンスの特訓だ。

覚悟しておいてね。俺は、妥協は嫌いだから、ビシビシしごくよww」


「はい!よろしくお願いします。」


立ち上がり綺麗な姿勢で頭を下げるレイナの姿に、一瞬キョーコがだぶって見えた。


戻ってる?


一瞬でも・・・今、確かに彼女が戻ってきた。


嬉しい・・・もっと彼女に逢いたい・・・近づきたい・・・


抑えようとしても、笑みがこぼれ出してくる。


しかし・・・いきなり見ず知らずの男を自分の部屋に呼ぶとはお説教ものだろ!?

相変らず無防備にもほどがある!


俺だからいいが、他の男なら絶対に許せない!


そんな資格すら今の俺にはないくせに、少しだけキョーコに近づけたことで有頂天になっていたのかもしれない。


まだその時、俺は大事な事に気づけていなかった。

俺がクオン・ヒズリである限り、彼女とはずっと平行線であることを・・・



8へつづく




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