さあ続きもファイト!

って、何の気合? ww


早速お話をお楽しみ下さい♪


氷の仮面 ~消滅と誕生~ 5


「クオン・ヒズリ・・・」


今日、私が演じるマリアの相手役で、この映画で一番長い時間、お芝居を共にする人に初めて会った。


オーディションで選ばれた新人と監督には聞いていたけど、ひどく現場慣れしていて落ち着いた、綺麗な男の人だった。


どこかで俳優をやっていたんだろうか?

年齢は、私よりも年上よね・・・


えっ?


私は、どうして今日初めて会っただけの人が、こんなにも気になっているのだろうか?


あの人の傍にいると、どこか懐かしくて、胸が締め付けられる・・・


キョーコ!あなたは誰を思い浮かべてるの?


彼は、あの人とは違う!


髪の色も瞳の色も全然違うじゃない・・・声・・・は、少し似ているかな?


駄目!駄目よ!


もう終わった人を思い出してはいけない。


あの人は、私という汚濁から解放されて、今もきっとあの煌びやかな世界で一際輝いているんだから・・・


想ってはいけない・・・思い出してもいけない・・・忘れるのよ・・・


もう一度、私の心ごと闇に沈めて、しっかりと鍵をかけ直して封印せねば・・・


2度と想いがあふれ出さないように・・・


『最上キョーコ』は、もう死んだ。


半年前に、日本を旅立った時から・・・


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


クオンが合流して、初めての共演シーンは、K-13号とフランツとの出会いのシーンだった。


「K-13号、新しい仕事の依頼だ。お前は、これからマリアという人物になりすまし、社交界に潜入して、この写真の男を始末するんだ。決行日は、こちらから連絡するから、お前は今から連れて行く場所で、俺が手配したお前の教育係と共に生活をして、教養を身に付けろ。社交界にデビューしても恥ずかしくない教養を身に付けるんだ。」


「ボス、どうして私がそんなまわりくどい訓練を受けねばならないんですか?殺ればいいんでしょう?どんな遠くからでも、私は確実に仕留めれます。」


「ああ~、お前の腕は俺が一番わかっている。幼い頃から、お前を一流の暗殺者にすべく育て上げたのはこのおれ自身だからな。だが、今回のターゲットは、失敗の許されない相手だ。それに彼自身、非常に用心深い男でもある。今回の暗殺を決行するには、周到な準備と緻密な計画が必要だ。お前は、俺の言う通り動いていれば、それでいい!」


「ラジャー」


革張りのソファーに両手をかけふんぞり返った姿勢で、後ろに控えていた部下に目配せする。


「フランツを連れて来い。」


**************


しばらくして、ポールの部下に引き摺られるように連れて来られたフランツが部屋に放り込まれた。


「痛ぇなあ~」


きつく掴まれた腕を擦りながらフランツは、ポールの前に直立不動で立っているK-13号の背後によたよたと歩き出した。


すると、一瞬のうちに彼女の気配が消え、フランツの背後に腕を捻って拘束し、もう片方の手にはナイフが握られていて、フランツの首筋に切っ先を突きつけていた。


いきなりの殺気に身体を硬直させ、目だけをゆっくり動かして、首筋に当てられたものが何だったかを確認する。


「ツッ!・・・・」


ぞっとするような悪寒に身を震わせ、額に冷や汗が滲み出る。

抑えようとしても止まらない震えが、首筋に当てられた切っ先に触れ、赤い血が滴り落ちる。


「K-13号、止めろ!今は殺すな!この男は、まだ使えるから、もう少し生かしておけ!」


「Yes,sir」


ナイフを素早く下ろし、腕の拘束も解いて、フランツの背後に鋭い視線を向けたまま、静かにかかとをそろえてまっすぐに立っていた。


「フランツ、最初に言っておく。K-13号の背後には、今後一切近づくな。次は殺されても、俺は知らんからな。」


「は・・・はい!」


顔を真っ青にして、ガクガク震えて崩れ落ちるフランツを嘲り笑って、ポールは、これからの簡単な指示を出していった。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「カット!OKだ。今日の撮りはここまで!セット撤収!」


「「「はい」」」


「クオン!」


「はい」


座り込んだままだったクオンは急いで立ち上がり、監督の前へと走り寄った。


「お疲れさん。首の血を拭け。衣装が汚れるぞ。」


お礼を言って、差し出されたハンカチを受取り、血の滲んだ首筋に当てて、血を拭い取る。


「クオン、初めての絡みにしては、なかなか度胸があってよかったぞ。

あのレイナを相手に、引き摺られていなかったしなww

この調子で、明日からもしっかり演じてくれ。」


「はい!ありがとうございます。」


深く頭を下げて、足早にスタジオを後にする。



あのレイナを相手に引き摺られなかったか・・・


昔は、俺が彼女を演技で引張っていったのに・・・

ここへきて、立場逆転か・・・皮肉なものだな・・・


だが、今日は本当に危なかった。

気を抜くと持っていかれそうなほど、彼女は強い殺気を放っていたからな・・・


演技の中で、私情を持ち込んだら一気に彼女のペースに持っていかれる。


割り切らないと・・・


フランツになり切るんだ。

こんな事で、彼女に負けるわけにはいかない。




物思いに耽っていて、すっかり彼女を見失ってしまった俺は、また急いで彼女の姿を探し歩いた。


「誠一!」


その時、背後で愛しい彼女の声が聞こえたので、焦ってキョロキョロと辺りを見回すと、あの無表情だったキョーコが嬉しそうに微笑んで、彼女の担当医である高橋に駆け寄っていく姿が目に入った。


6へつづく



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