久しぶりの連載再開なので、今日も再UPです。
ただ今回は後半(Dr.の部分)だけ加筆訂正いたしました。
これからのお話にも関係してきますので、読んだ方も是非もう一度読んでください。
今回も、また蓮(クオン)sideからです
氷の仮面 ~消滅と誕生~ 3
「失礼します」
「おっ来たな」
部屋に入ってきた蓮はミスウッズに髪を金髪に戻してもらい、コンタクトを外して元のブルーアイにして、本来のクオン・ヒズリの姿になっていた。
「ほれ これが次に最上君が出演する予定の台本だ。」
テーブルの上に置かれた『アサシン』(暗殺者)と書かれた台本を手に取り、ローリィの前に座ると、台本をパラパラと読み始めた。
「最上くんは前回出演のマフィアのボスの恋人役が好評で今回は暗殺組織の暗殺者役で出演することが決まっている・・・助演だが準主役級の扱いでな。
凄い快挙だが・・・色々と気になる事も多い・・・
お前はクオン・ヒズリとしてこの映画にでたいのなら、オーディションで役を勝ち取らないといけない・・・その辺は了解済だな?お前はもう『敦賀蓮』じゃないんだから。
彼の10年のキャリアは語れない・・・何のキャリアもない、ただの新人俳優クオン・ヒズリとしてオーディションを受けるんだぞ・・・俺はこれから先は何の協力もしてやれないからな・・・」
「今までありがとうございました。
これから先は自分の力で必ずこの役をもぎ取り彼女の側に行きます!
彼女は以前、俺を闇から救い出してくれた・・・
今度は俺が彼女を助け出す番なんです!」
何の迷いもなく、力強い目でじっと見つめるクオンをローリィは頼もしく思った。
あの弱々しかった少年のクオンはもうどこにもおらず、愛する人を救い出すために
今の立場を捨てて、身体一つで立ち向かおうとしているりりしい青年の姿にローリィは目を細めるのだった。
台本を持ち、深々と頭を下げて出て行くクオンの背中にローリィは声をかけた。
「頑張れよ!彼女を頼む!今度、ここに戻ってくる時は最上くんと一緒にだからな。」
「はい!!!お世話になりました!」
振り返り力強く返事をすると、もう一度感謝の思いを込めて深くお辞儀をして、そのまま部屋を出て行った。
社長・・・この10年・・・俺を守っていただいて・・・
愛する素晴らしさを教えていただいて・・・本当にありがとうございました。
貴方が教えてくれた愛で、必ず最上さんを闇から救い出して帰ってきます。
絶対にこのオーディションに受かって見せます!
これが俺にできる貴方への恩返しだと思うから・・・
いってきます!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『アサシン』
闇の組織である暗殺集団「エンゼルハート」のボスのポール(この映画の主役)は、自分が始末した裏切り者の一人娘を密かに引き取り、人間が持つすべての感情を根こそぎ奪い去り、人を殺す為の様々なトレーニングを積ませて究極の美しき暗殺マシーンK-13号として育て上げた。
組織下にあるマフィアから、ある要人を暗殺する依頼を受けたポールは、彼に近づく為K-13号を社交界に潜入させることにした。
そこでK-13号を違和感のないレディにする為、マフィアに殺されかけていた一人の男を彼女の教育係につけた。その男『フランツ』は没落した貴族だったが、ギャンブルに溺れて多額の借金でマフィアから逃げ回っていた所をポールに助けられ、借金の肩代わりを条件に1ヶ月で、K-13号を社交界でも違和感のないように育て上げる事を誓わされた。
フランツはK-13号をマリアと名づけ、レディとしてのマナーを1から教えていくが、当初、何の感情も持たず笑わないマリアに戸惑っていた。
しかしこれに失敗すると、自分の命も危うい状況だったので、フランツは必死にマリアに近づこうとしていた。やがて、彼女もフランツに心を許し始め、時折見せるようになったあどけない笑顔に、フランツは惹かれていくのだった。
そして、とうとう彼女も彼の思いに答えるように、一夜を共にしてしまう。
だが、そんな幸せな日々が長く続くわけもなく、ポールより要人暗殺の指令が下り、2人の関係は終焉へと向かっていくのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は、アメリカに渡り、何とかこの映画のキーパーソンであるフランツ役を獲ることができた。
たとえ後ろ盾はなくとも、この10年間の積み重ねが合ったからこそオーディションに受かったんだと思う。
後、この役にかける執念か・・・昔はすぐに諦めていたからな・・・
これは彼女の影響かな・・・
明日、彼女に会える・・・
君はどんな風に変わってしまったんだろう?
社長もキョーコが心を閉ざしているという事だけで、詳しくは教えてくれなかった。
ただ彼女に会う前に彼女の主治医であるDr.高橋の話を聞くようにと社長に言われた。
なぜ彼女に会う前に、Drに会わないといけないのだろうか?
彼女の身に、一体何が起きているというのか?
俺がそこまで彼女を追い詰めてしまったのかと思うと、胸が苦しくてどうしようもなく辛い。
ただ不安だけが募る中、Dr高橋.に会うため約束の場所へと向かったのだった。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
その晩 俺は久しぶりに酒を口にした。
渡米して以来、お酒は止めていたが、今日は呑まずにはいられなかった。
アメリカに戻るとすぐに、俺は両親の家に行き、心配をかけ続けたことを謝って
ずっと見守り続けてくれた事に、心より感謝の気持ちを伝え、過去の自分にけじめをつけた。
そして、こちらでまた一からやり直すと告げると、実家を出て、このオーディションを受けるため、スタジオの近くにアパートを借りて一人で住み始めた。
日本での暮らしとはがらりと変わった2DKの狭い部屋で、質素な暮らしをして、毎日寝る間も惜しみ、ひたすらレッスンに励んで、オーディションに挑んだ。
その間、お酒は一滴も口にせず、食事も3食しっかり栄養のあるものを食べて、ひたすら摂生に努めていた。
この姿を見れば、きっとキョーコは驚くだろうな?
熱でもあるんですか?と逆に心配されるかな?
俺を見直して、帰ってはくれないだろうか?
そんな事で出て行った訳ではないので、ありえないんだが、そうとでも思ってないとやりきれないほど、俺自身もギリギリの状態だった。
だが、今日、ドクターに会って一縷の望みすら綺麗に打ち砕かれた。
今のキョーコはもう心が壊れてるだと・・・
最上キョーコはもういないだなんて・・・一体どうしてこんな事になったんだ。
覚悟はしていたが、あまりにの衝撃に思わず涙を流してDrに詰め寄り、問いただしたが、ただ現実を突きつけられるだけでしかなかった。
本城レイナ・・・これが今のキョーコが名乗っている名前か・・・
『最上キョーコを捨てて、別人格になるのも人の防衛本能だ』 と彼は言った。
そうしないと生きていけないほど、彼女は追いつめられていたというのか?
俺はずっと彼女の側にいたというのに・・・どうしてこんな大事な事に気付いてやれなかったんだ・・・
今更後悔してもどうにもならないとわかっていても、自分を責めずにはいられなかった。
高橋から言われた注意点は、二つだった。
彼女には最上キョーコとしてではなく、本城レイナとして接する事
あと一つは自分が決して『敦賀蓮』だとばらさない事
どちらも俺たち二人の今までを否定するようでとても辛かったが、
彼女の心を闇から救い出すために
一からやり直して、もう一度二人の関係をやり直さないと!
今度こそ嘘偽りのない姿で、彼女と向き合うために・・・
俺は、再び気合を入れると、持っていたグラスの酒を一気に煽った。
しかしあの高橋という医者は、別れ際に何故あんな事を聞いたのだろうか?
「君は、彼女の恋人だったんだよね?
今でもキョーコさんを愛してるのか?
彼女を諦める事はできないのか?
君ほどのいい男だったら、別に彼女に固執しなくてもすぐにいい人を見つけられるだろうに・・・」
まるで俺に諦めろと言わんばかりの口調だった。
それは、まるでさっきまでのドクターとしての口調とは全く違うものだった。
『高橋 誠一』
あいつもまさかキョーコに惹かれてる!?
嫌な予感がじわじわと心の闇を蝕んでいく。
彼は、医者であるのが勿体無いくらいの整った顔立ちで、背も高く物腰が柔らかい紳士だった。
年は、俺より10歳ほど年上か?
『敦賀蓮』も彼くらいの年になったら、あんな風になるのでは?と自分で思ってしまう位、雰囲気がもう一人の自分とよく似ていた。
診療内科医の職業柄か、彼の傍は温かく心が落ち着いていられたが、最後の彼だけは違っていた。
ただの男の顔だった。
なぜ、あの時、あの一瞬だけ、本当の姿を俺に曝け出したのだろうか・・・
彼女は俺の元には2度と帰ってこないというメッセージだったのか・・・
いくら考えても答えは出てこなかったが、わかったことはただ一つ、生半可な気持ちじゃあ、彼女の傍には近寄れないという事だった。
そしてその翌日、久しぶりに再会した彼女の豹変ぶりに、覚悟はしていたつもりだったが、動揺を隠せなかった。
まるで人の心を持たない人形のようだったから・・・
4へつづく
次回でやっと蓮さんはキョーコちゃんと再会!
ここからは、書下ろしです。
正直衝撃でデンジャラスです(((( ;°Д°))))
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ただお礼文はまだ書けていません・・・
お楽しみにしている方には、申し訳ございませんが、落ち着いたら何か書くつもり
今回は連載を進めることをメインに頑張ってますww