★トランプ大統領誕生で、アメリカは【信用できる国】になった
のか???
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
日本におけるトランプ新大統領の評価は、真っ二つにわかれて
いるようです。
公約どおり、「TPP脱退」「壁建設推進」「イスラム諸国から
の入国制限」などを次々と行っている。
それで、既存のマスコミは、概して「反トランプ」のようです。
(公約を実行して、反対されるのも、悲しいですが。
普通は、公約を実行しないで、批判されるものです。)
これは、欧米メディアも同じです。
(「制裁解除」を期待するロシアメディアは、トランプ支持で
す。)
その一方で、「グローバリズム=悪」と考える保守派の皆さん
は、「トランプ支持」が多い。
マティス国防長官も、ティラーソン国務長官も、早速
「尖閣は、日米安保の適用範囲」と断言した。
それで、「トランプは、中国から日本を守ってくれる!」と
期待する人も増えている。
そんな中、読者さんから、こんな質問をいただきました。
「トランプは、信用できる男なのでしょうか?」
「トランプを信頼していいのでしょうか?」
皆さんだったら、どう答えますか?
私は今回三つの観点からお話ししたいと思います。
1、トランプの「アメリカ・ファースト」(アメリカ第1主義)
は、「ジャパン・ファースト」ではない!
2、アメリカは、同盟国をコロコロかえてきた。
3、アメリカは、法的にみて「正義の味方」ではない。
▼「アメリカ・ファースト」は「ジャパン・ファースト」では
ない
まず、
1、トランプの「アメリカ・ファースト」(アメリカ第1主義)
は、「ジャパン・ファースト」ではない!
トランプさん、就任演説でもいっていました。
「アメリカ・ファースト!」
日本では、「アメリカ第1主義」と訳されています。
彼によると、アメリカはこれまで、「他国を助けすぎていた」。
それで、「アメリカは、弱く、貧しくなってしまった」。
これからは、「アメリカの国益最優先でいく!」。
こう宣言している。
これ、わかりやすく、会社に置き換えてみましょう。
O社長は、会社の利益より、社会への貢献を優先させてきた。
そしたら、経営が傾いてしまった。
それで後任のT社長は、「儲け第1主義でいくぞ!」と宣言した。
「アメリカ第1主義」とはそういう意味です。
となると、トランプさんが日本にやさしいのは、当然「アメリ
カの利益になるという見通しがあるから」でしょう。
何かというと、対中国で、仲間を増やす必要がある。
日本はGDP世界3位の大国。
防衛費はGDPの1%なので、まだまだ増やせる余地がある。
経済でいえば、日本はアメリカ国債保有で、常に世界1~2位で
ある。
アメリカは、対日貿易で年間7兆7000億円の赤字。
「これを是正しろ!」といえば、(中国と違い)なんらかの
アクションを起こしてくれる可能性が高い。
というわけで、アメリカは現時点で日本を必要としている。
だから優しいのですね。
しかし、アメリカの事情が変わったら、日本への態度も当然変
わってくるでしょう。
私たちは、以下の公式をいつも覚えておく必要があります。
国益 >>> リーダーの個人的な感情
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
たとえばA社の社長さんと同業B社の社長さんは仲がいい。
よく一緒にゴルフもするのです。
ある時、超大型案件の入札情報が入ってきた。
A社はB社に勝つために、同業他社に勝つために全力をつくす
でしょう。
また、B社は、A社と同業他社に勝つために全力をつくすでし
ょう。
A社社長とB社社長がゴルフ友達でも遠慮はしない。
よい社長ならそうするべきです。
同じように、よい大統領、よい首相は、「国益のために」戦う。
つまり、トランプが「よい大統領」であれば、「アメリカのた
めに戦う」。
もしアメリカの国益と日本の国益が一致しなければ、遠慮なく
アメリカを選ぶに違いない。
その時、アメリカは得をし、日本は損をすることになる。
だから、「トランプさんは信用できるのでしょうか?」という
質問の答えは、
「意味がわかりません」です。
トランプさんは、アメリカのために働いているので、日本のた
めに働く義務はないのです。
つまり、アメリカの国益が変われば、日本への態度もすっかり
変わるかもしれない。
私たちは、いつもこの可能性を覚えておく必要があります。
▼同盟国をコロコロかえるアメリカ
次、2、アメリカは、同盟国をコロコロかえてきた。
第2次大戦時アメリカは、「資本主義打倒」を国是に建国された
「最大の敵」ソ連と組みました。
そして、ナチスドイツ、日本と戦った。
第2次大戦が終わると、今度は敵だった日本、そしてドイツ(西
ドイツ)と組んだ。
そして、大戦時の味方だったソ連と対峙した。
それでも、アメリカは、ソ連に対して劣勢でした。
で、どうしたか?
1970年代初め、アメリカは、なんと共産中国と組む決断をします。
主導したのはニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官。
ニクソンは1971年7月、「中国を訪問する!」と発表。
同盟国日本は、15分前までそのことを知らされていなかった。
日本政府は、大きな衝撃を受けます。
1972年7月、田中角栄、首相に就任。
1972年9月、彼は電光石火の早業で、「日中国交正常化」を
成し遂げてしまった。
(@アメリカと中国の国交正常化は、1979年。)
アメリカを出し抜こうとする田中総理に、キッシンジャーは大激怒。
「ジャップは最悪の裏切り者!」
と絶叫したことが、明らかになっています。
共同通信2006年5月26日から。
<「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)
72年にキッシンジャー氏
【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など
1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領
補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中し
て日中国交正常化を図る計画を知り
「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」
との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していた
ことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。>
ちなみに、キッシンジャーは、この時の恨みをその後も忘れ
ていなかったようです。
アメリカ在住政治アナリスト伊藤貫氏の名著「中国の「核」
が世界を制す」に、キッシンジャーと直接会った時の感想が
出ています。
<キッシンジャーは、日本人に対して鋭い敵意と嫌悪感を
抱いている。>(116~117p)
<キッシンジャーからは不快なものを感じた。
彼が、日本人をほとんど生理的に嫌悪・軽蔑していることが
感じられたからである。>(同前117p)
さて、トランプさんは2016年11月17日、そんなキッシンジャ
ーさんと会談しています。
曰く「私はキッシンジャー氏を非常に尊敬している。意見交
換できてうれしい!」。
なにを話したのでしょうか?
というわけで、アメリカが自国の事情で「同盟国をコロコロ
かえる」のは、「歴史的事実」です。
「日米同盟は不変!」
「日米同盟は永遠!」
口でいうのはいいですが、心からそう信じていたら、かなり
ヤバいです。
正確にいうと、「日米同盟は、アメリカと日本の国益が一致
している間だけつづく」となります。
▼アメリカは、法的にみて「正義の味方」ではない。
三つ目、「アメリカは、法的にみて『正義の味方』ではない」。
これはなんでしょうか?
日本人は、「アメリカは善、中国は悪」と考えているでしょう?
私は、「アメリカは善」とはいいませんが、「中国は悪」と
100万回くらい書いています。
というのも、中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有
権もない!」と詐欺師のような主張をしているからです。
「南シナ海埋め立て」も、大問題ですね。
だからといって、アメリカが「真っ白」というのは事実ではあ
りません。
いろいろしていますが、代表的な「悪」は、なんといっても
「イラク戦争」でしょう。
この戦争、まず「開戦根拠が全部ウソだった」ことが明らかに
なっています。
↓
<米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定
[ワシントン=貞広貴志]米上院情報特別委員会は八日、イラク
戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器
計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を
検証した報告書を発表した。>
(読売新聞2006年9月9日)
<報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・
ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量
破壊兵器計画についても、少なくとも一九九六年以降、存在しな
かったと結論付けた>(同前)(太線筆者)
そして、当時のアナン国連事務総長は、「イラク戦争は国際法
違反である」と断言しています。
<イラク戦争「国連憲章上違法」 国連事務総長がBBCに
15日の英BBC放送(電子版)によると、アナン国連事務総長
はBBCとのインタビューで、イラク戦争を
「我々の見地からも、国連憲章上からも違法」
と断じた上で、「各国が共同歩調をとり、国連を通して行動す
るのが最善という結論に誰もが達している」と述べた。
国連では21日からブッシュ米大統領ら各国の元首、首相、外相
らを迎えて総会の一般演説が行われる。
アナン氏の発言はこれを前に、イラク戦争を国際法違反とする
国連の姿勢と、唯一武力行使を容認できる機関としての安全保
障理事会の重要性を再確認したといえる。>
(asahi.com 2004年9月16日)
この戦争で、どのくらいの民間人がなくなったのか、はっきり
わかっていません。
8万人から120万人まで、いろいろな数字がでています。
いずれにしても、ウソの理由ではじめたイラク戦争で、「民間
人が大量に亡くなった」ことは、動かせない事実です。
このことは、「アメリカさんは、『正義の味方』だから、つい
ていけば間違いない!」
という「アメリカ盲従主義」ではいけないことを示しています。
▼アメリカは、どう日本を利用するのか?
では、アメリカは、日本をどう利用する可能性があるのでしょう
か?
わかりやすいのは、「経済面」ですね。
「米国債をもっと買え!」
「貿易不均衡を解消しろ!アメリカ製品をもっと買え!」
これは、目に見えるので、ある面対処しやすい。
しかし、問題は、「安保面」です。
日本が直面する可能性のある最大の問題は、
「アメリカが対中国で、日本をバックパッシングするかもしれない」
ことでしょう。
「バックパッシング」(責任転嫁)とは、つまり
「アメリカが勝つために、中国と日本を戦わせること」
を意味します。
どうやって?
リアリズムの大家ミアシャイマー教授は、その著書「大国政治
の悲劇」の中で、
「バックパッシングの方法」について触れています。
4つ方法がある中で、もっとも「今の日米関係に当てはまる」
と思われるのは、以下の方法です。
<四つ目は、バックパッサーが、バックキャッチャーの国力
が上がるのを許すだけでなく、
それをサポートまでしてしまう方法である。>(227p)
意味わかりませんね。
これはつまり、「アメリカが、日本の軍備増強をサポートす
る」という意味。
なぜ?
<これによりバック・キャッチャーが侵略的な国家を封じ込
めてくれれば、
バック・パッサーにとって傍観者のままでいられる可能性が
高まるからだ。>(同上)
言い換えると、
「これにより日本が、侵略的な中国を封じ込めてくれれば、
アメリカは傍観者のままでいられる可能性が高まるからだ」
となります。
日本が中国と戦ってくれれば、アメリカは、「楽ですわ」と。
トランプ政権は今、このプロジェクトをはじめているようにも
見えます。
▼対策は?
03年、ジョージアで「バラ革命」が起こり、「アメリカ傀儡
サアカシビリ政権」が誕生しました。
08年8月、ジョージアは、ロシアと戦争。
結果、アプハジアと南オセチアを失いました。
14年2月、ウクライナで革命が起こり、「アメリカ傀儡政権」
が誕生しました。
14年3月、ロシア、クリミアを併合。
14年4月、ウクライナ内戦勃発。
結果、ウクライナは、クリミア、ドネツク州、ルガンスク州
を事実上失いました。
このように、アメリカに「バックパッシング」された国々は
悲惨な目にあっています。
日本はどうすればいいのでしょうか?
「軍備増強」はいいですが、アメリカにそそのかされて中国
を挑発するべきではありません。
それをやると、日本はアメリカの「バックパッシング戦略」
の犠牲になります。
そして、アメリカが何かオファーをするとき、それは必ず、
「アメリカの国益」であることを忘れてはいけません。
だから、「アメリカ盲従主義」はダメなのです。
常に自分の頭で考えることを忘れず、自立を目指していきま
しょう。
結婚も離婚も、まず「心の中から」はじまります。
日本国の自立も、まず私たちの「心の中から」はじまるのです。
●PS
北野が「世界情勢分析する方法」を完全暴露しています。
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北野 幸伯
(詳細は→ http://tinyurl.com/hrq5f3x )
●面白かったら、拡散お願いいたします。>
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