日本の家 1945年以降の建築と暮らし
大分前のことですが、東京国立近代美術館で開催されていた「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展へ行ってきました。会場デザインはアトリエ・ワン。展覧会の趣旨は下記。
日本の建築家56組による75件の日本の住宅建築を400点を超す模型や手書きの図面、写真、映像などで紹介。時系列ではなく13のテーマに分類して展示することで、誰にとっても身近である家を時代性や社会性、立地環境や人と人とのつながりなど様々な視点から検証します。
丹下健三の「自邸」(1953)や清家清の「斉藤助教授の家」(1952)といった半世紀以上前の住宅をこういう展覧会でたまに再見すると、その現代でも通用する力強さに驚嘆します。
安藤忠雄の「住吉の長屋」(1976)のコンクリート模型。これも40年も前のシンプルな構成の住宅が未だに参照されていることが驚き。
岡啓輔さんの未だ建築中の「蟻鱒鳶ル(ありますとんびる)」(2005-)。まだ一人で黙々と作っていらっしゃるのだろうか。
妹島和世の「梅林の家」(2003)。一時期はやった鉄板で薄い壁の住宅。住環境としてはどうなのだろうか。ある意味で安藤忠雄の住宅に近い気もする。
薄い壁といえば藤本壮介の「T house」(2005)。壁の片側だけ仕上げるというのが画期的でした。
同じく藤本壮介のHouse NA(2011)。建物自体が隙間のような、隙間に住まう住み方自体が新しい。
勿論知識としては知っている住宅ばかりではありましたが、アトリエ・ワンのキュレーションによる視点の提示により、それぞれの住宅の持つ意味が改めて見えてきた展覧会でした。
黒川哲志建築設計事務所HP:https://www.kurokawadesign.com
【本】ニーマイヤー 104歳の最終講義: 空想・建築・格差社会
今年の33冊目。
「ニーマイヤー 104歳の最終講義:空想・建築・格差社会」
2012年に104歳でこの世を去ったブラジルの建築家・オスカー・ニーマイヤーの言葉を記した一冊。ルシオ・コスタやコルビュジェのもとで働き、共産党員であることでブラジルを追われパリでフランス共産党本部の設計を行い、ブラジルの新首都・ブラジリアの計画を行い、96才で再婚し、死ぬ直前まで「自由な曲線」を使った美しい建物をデザインした、20世紀を代表する建築家の言葉は重い。
「建築は、単にきっかけを作るに過ぎない。重要なのは、人の日常の暮らしであり、人である。人は、心と感情を持ち、正義と美に飢え、快適と刺激を渇望する、不思議な生き物である。これを、決して忘れてはならない」
本中にいくつか挟まれている写真に、ニーマイヤーのスタジオの光景がありました。白い壁に、落書きのような柔らかな線画。ニーマイヤーが描いたものだそうです。自宅の壁に娘が書いた落書きを、素敵なものだと思って眺めることが出来そうな気がします。
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ニーマイヤー 104歳の最終講義: 空想・建築・格差社会
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ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ
渋谷の文化村シネマで「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」を観ました。20世紀建築の巨匠であるル・コルビュジエと、インテリアや家具のデザイナーとして有名なアイリーン・グレイ。2人の関係はこれまで様々な誤解を生んできましたが、この映画を観ることで(これが真実だとするなら)大分クリアなものになりました。
誤解1)コルビュジェとアイリーンは師弟関係であったか
師弟関係ではありませんでした。アイリーン(1878-1976)はコルビュジェ(1887-1965)よりも9才年上であり、若くして注目を浴び30代前半でパリにショールーム(1920)や自身のインテリアデザイン事務所(1923)を構えていました。コルビュジェの事務所で働き彼の家具デザインを担当したシャルロット・ペリアン(1903-1999)のことが頭にあると、混同してしまうのでしょう。ちなみにペリアンも映画にはちょっとだけ出ていました。
誤解2)コルビュジェとアイリーンは恋人同士であったか
二人は恋人同士だったと私も誤解していましたが、これも違いました。映画では、アイリーンの恋人の建築家であり建築ジャーナリストのジャン・バドヴィッチがコルビュジェと友人で、その関係でコルビュジェとアイリーンの友人付合いがあったという描かれ方をしていました。
誤解3)「E.1027」という住宅の設計者は誰だったか
アイリーン・グレイの設計です。南フランスのカップ・マルタンに建てられた「E.1027」という住宅は、コルビュジェが提唱した近代建築の五原則に則った設計であったことから、またコルビュジェが晩年婦人と二人で過ごすために作った「カップマルタンの休暇小屋」がそのすぐ近くに建てられていたことから、そしてコルビュジェがこの住宅に壁画を描いていたことから、長らくコルビュジェの設計だと考えられてきました。
映画自体は二人の確執を描いていることもあり、物語としては幾分暗い趣なので苦手な方にはお勧めしませんが、ロケを実際のE.1027で行ったそうで実物の映像を見れる貴重な機会という意味で、建築やインテリア好きな方は必見です!
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「窓学展―窓から見える世界―」
雨の中でしたが夜間部の授業前に、表参道のスパイラルで開催中の「窓学展―窓から見える世界―」へ。「窓学」とは、「窓は文明であり、文化である」という考えのもと、YKK APが研究者や建築家と組んで2007年より「窓」をテーマに多角的に探究する研究活動です。ひたすら透明性を求めた近代を通り抜け、現代では窓はより環境制御装置としての側面が求められています。文化としての窓としての側面と、文明としての窓に求める物が何か、どちらかに偏るのではなく両面からの視点を持っていることが大切です。
イタリアのデザイナー、ミケーレ・デ・ルッキのドローイング。
レアンドロ・エルリッヒのインスタレーション「Window and Ladder - Leaning into History」
どうやって立っているのか不思議というだけでなく、存在感がありずっと見ていられる作品。
スロープには原広司の「本の中の窓」の研究展示。とても詩的で、素敵。原広司とレアンドロ・エルリッヒの対談映像も良かった。原広司はずっとタバコ吸ってましたが。笑
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坂茂設計の集合住宅
10月より後期の授業が始まりました。今年も1年生の設計製図1を担当させて頂いているため、敷地を確認に行ってきました。敷地は昨年と同じ場所としていますが(プログラムは変えています)、周辺環境に変化が。昨年は工事中だった坂茂さん設計の集合住宅が完成していました。RC造に軽やかな木造の屋根がかかっています。2階部分はどうなっているのか、中に入ってみたい。。。笑
黒川哲志建築設計事務所HP:https://www.kurokawadesign.com