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2017年07月20日

【本】新国立競技場、何が問題か

テーマ:本・マンガのハナシ

 

 今年の24冊目。「新国立競技場、何が問題か: オリンピックの17日間と神宮の杜の100年」

(以前書いたエントリーを間違えてすぐに消去してしまったための再エントリーです。というわけで今年の◯冊目の順番が入れ替わっています)

 

 今ではほとんど話題に上らなくなってしまいましたが、2012年に行われた新国立競技場の一回目のコンペ(正式名称は「新国立競技場国際デザインコンクール」)でザハ・ハディドが1等となった後、付近にある東京体育館を設計した槇文彦氏がその計画自体の巨大さに対して疑義を唱えたこと(「新国立競技場を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」)を発端とし、2013年10月に行われたシンポジウムをまとめた一冊。

 

 槇氏が問題としているのは、ザハ案を始めコンペに提出された案のデザインの優劣ではなく、東京の稀有な緑地である神宮の森の環境と景観を守らなければならないということです。つまり計画の前提である事業要綱を見直さなければならない。具体的には「最大高さを抑えること」と「延床面積を抑えること」です。

 

 高さに関しては、元々この一体は風致地区であるため、都条例により15mの高さ制限がかかっています。(ただし今回は条例制定前に建設された競技場の建替えであるため高さ30mまでは可能)。しかし都側は今回のために地区計画を改定し、高さ制限を15mから75mへ大幅緩和しました。75mとなると高層ビルの建つ高さになってくるわけで、そうするとそもそも何のためにこの場所を風致地区としたのかが疑問です。

 

 延床面積に関しては、建物のボリュームが大きくなれば見かけ上の威圧感が増し、また建設コストにも大きく関わることです。当時テレビでは客席数80,000人規模の競技場として、ロンドンや北京の五輪競技場と新国立のコストを比較していました。但し単に客席数が同じだからといって同じ大きさの建物が立つわけではありません。本書でも比較表が乗っているのでそこから一部引用します。

 

       客席数(人)  敷地面積(ha)   延床面積(㎡)

新国立競技場  80,000      11.0       290,000

ロンドン    80,000      16.2       108,500

北京      91,000      25.8       258,000

 

 上記のように、新国立の敷地面積は最も小さく北京の半分以下しかありません。そこに北京以上、ロンドンの3倍近くの床面積を持つ建物を建てようというのですから、環境上も工事進行上も負荷が大きくなるのは目に見えます。席数が同じなのになぜ延床面積がこんなに大きくなるのかというと、VIPルームであったりレストランであったりといった屋内施設が非常に充実していることにあるようです。勿論あったらいいなという設備は色々とあるでしょうが、その意見を全て取り込んだ結果小さな敷地に非常に大きな施設をつくれということになったわけです。ちなみにザハ案がゼロベースで見直され再コンペで選ばれた隈研吾+梓設計+大成建設案(2017年2月案)では延床面積が縮小され、194,000㎡となっています。

 

 今回のコンペはコンペの運営に関する様々な問題点が浮き彫りにされました。そのことについても何が問題であったのかについて本書で解説されています。今となっては2度目のコンペで選ばれた案が、建設過程と今後の使用についても透明性を持って説明されることを願います。

 

 

 

黒川哲志建築設計事務所HP:https://www.kurokawadesign.com

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2017年07月19日

メアリと魔女の花

テーマ:映画・演劇・音楽の感想

 

 娘を連れて新宿のバルト9へ。「メアリと魔女の花」を観ました。スタジオジブリ時代に「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」を担当した米林宏昌監督が、新たにスタジオポノックを立ち上げ手がけた第一作です。

 ネタバレになるといけないので内容には触れませんが、「マーニー」を思わせる風景描写とスピード感は楽しめました。主題歌(SEKAI NO OWARI「RAIN」)も映画の世界観と合っていて良かったです。しかし最近のアニメは声優に役者さんばかりですね。プロモーション的に有利だからなんだろうけど、ところどころ違和感を感じる所があったのがちょっと残念。

 

 

 

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2017年07月18日

【本】動的平衡2 ~生命は自由になれるのか~

テーマ:本・マンガのハナシ

 

今年の27冊目。

「動的平衡2~生命は自由になれるのか~」著:福岡伸一

 

 福岡ハカセの本はこれまで何冊か読んできましたが、生物科学の話を美術や音楽と絡めて説明する感性が好きです。この本は前著「動的平衡」と同じテーマで書かれたものですが、「生命は自由になれるのか」というサブタイトルの通り、ある種の自由さ、ルーズさ、遊びがあるからこそ生命は生き延びて行くことが出来る、恒常性が保たれるという仮説を説明されています。

 これを自分の専門である建築インテリアデザインに寄せて考えてみると、どんなに美しい空間でも変化に対応することの出来ない空間は生き延びることが出来ません。住宅であればライフスタイルやステージの変化に伴い必要な家具や道具も使い方も変わってくるし、オフィスであれば従業員数や仕事の形態に柔軟に対応することが求められます。店舗であれば客に飽きられないよう小さな変化を常に続けることが大切な要件でもあります。そのような包容力のある空間をどう作ることが出来るか、これから「動的平衡」という言葉を使って考えてみよう。笑

 

 

 

 

 

 

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2017年07月17日

AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展

テーマ:展示会や展覧会、講評会の感想

 

 

 パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲」展を観ました。深澤直人は言わずと知れた現代の日本を代表するプロダクトデザイナーの一人で、国内外のメーカーから沢山の作品を出されています。なんと今回が国内初の個展だそう。

 

本展覧会タイトルである「Ambient」とは直訳すると「環境」ですが、深澤はこの言葉を「周囲」や「雰囲気」と捉えています。深澤は、環境からものの輪郭を導き出していますが、それはつまり、その環境が要請したもの、そこにあるべきものを生み出すことなのです。そのようにして生み出されたものがその場所に投じられることによって、ものと空間が相互に作用し、はじめて「いい雰囲気」が醸し出されるのです。本展覧会では、その「いい雰囲気」を醸し出すことを実践しています。深澤がデザインした「もの」は、生活の中で使用されることにより、さらにその周囲の空気をもデザインすることになるのです。

公式HP展覧会概要より)

 

 

 会場の最初においてあるのが、マルニ木工から販売されている椅子「HIROSHIMA」。Yチェアに比肩するようなスタンダードを目指す、と販売当初語っておられたが、「生活のスタンダードを目指す」ということが深澤さんのものづくりに対するスタンスなのだと思います。

 

 

 パナソニックから発売されている「モディファイ スフィア」。球形の照明器具を考えた人は、きっとまん丸の物体が発行している状態を創造したに違いない。でもこれまでの製品は口金の部分だけは発光するのが難しかった。その思いを継承しつつ「modify=修正する、(少し)変更する」ことにより定番を作っていく。これもまた深澤直人のデザインの在り方を示しているようです。

 

 

 B&B Italiaより出されているshelf。人造大理石による薄い板による造形。中央の縦板が僅かに斜めに振れているのが普通さの中にゆらぎを生み出しています。

 

 

 パナソニックのシステムキッチン「リビングステーション」。人が囲める幸せなキッチン。

 

 

 無印良品のトースター。商品説明ではなく深澤さんの思いが書かれているのが良かった。

 

 

 携帯電話などなど。auのinfobarは昔流行ったな〜。

 

 

 最後にLAMYのボールペン「NOTO」。会場を出てから銀座伊東屋まで歩き、買って帰りました。先日サーキュレーターを購入したときも、いくつかある中から深澤さんがデザインしているプラスマイナスゼロのものを選びました。プロダクトを選ぶ時に家の中に置きたいと思えるもの、置くことで空間と調和するデザインをしなくてはと日々の仕事でモヤモヤした頭の中がすっきりとした気がしました。

 

 

 

 

 

 

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2017年07月05日

日本建築学会賞(作品)受賞者記念講演会

テーマ:講演会の感想

 

 夜、三田の建築会館にて日本建築学会賞(作品)受賞者記念講演会「作品を語る」を聴講。建築学会作品賞は、日本の建築の賞としては最も権威があるものの一つです。今年の受賞者は、小堀哲夫氏の「ROKI Global Innovation Center -ROGIC-」と三分一博志氏の「直島ホール(直島町民会館)」。三分一氏は2011年の犬島アートプロジェクト「精錬所」以来2度目の受賞。

 

 最初に各氏が30分ずつ自作について説明。オフィスビルと公民館的な公共施設という違いはあれど、どちらも大きなワンルームの気積の大きな空間で、どちらも計画地周辺の環境を丁寧に読取り、空気の流れをコントロールして快適な内部環境を生み出す操作を行っており、自然エネルギーを最大限利用することで機械設備の使用を極力小さくすることを目指しています。

 という説明がされつつも、だからこの空間が生まれたのかと言われると違うのではないか、という様な魅力的な内部空間を両者は備えています。写真からの想像でしかありませんが、両者ともワンルームならではの均質性がなく、ROKIは気持ちのよい場所がそこここにあるような散文的な構成に大きな屋根を架けているような空間であり、直島ホールは大きな屋根が守ってくれているような、審査員である千葉学氏の言葉によると「カテドラルのような」空間が感じられました。

「環境」という言葉を設備的な意味のみでなくより広い意味で考える必要が有ることを再認識させてもらった講演会でした。

 

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