「受胎告知」展についての裏話 | Espressoのブログ

「受胎告知」展についての裏話

2007年に東京・上野の博物館で開催された「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の実像」展の裏話

Anunciación (Annunciation) - Leonardo da Vinci

「モナ・リザ」展が東京・上野の博物館で一般公開された時は、当時の田中首相とフランスのポンピドゥー大統領との国家レベルの話でしたが、「受胎告知」が同博物館で公開できたのは当時日立製作所で試作開発センタ長を勤められていた神内俊郎さん(現在は国際DIS研究所代表取締役)のご尽力により実現したものです。

神内さんは、日本のデジタルイメージシステム技術の第一人者。ヨーロッパの美術館からデジタル技術について大変評価の高い方で、イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館が収蔵する、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品「受胎告知」や「東方三博士の礼拝」そしてヴェロッキオの「キリストの洗礼(左端の天使はレオナルドの筆による)」をデジタル画像で制作されました。このデジタル化された作品は、2006年に長期にわたりウフィツィ美術館で公開され、フィレンツェ市民やウフィツィ美術館への来館者が多く訪れ、デジタル技術のレベルの高さが評判となりました。

このことがきっかけでフィレンツェから門外不出とされていた「受胎告知」を日本で公開するという偉業をなしとげられました。

フィレンツェ「受胎告知」はメディチ家の所有ではないのですが、フィレンツェには、1743年に死去したアンナ・マリーア・ルイーザ・デ・メディチ(Anna Maria Luisa de'Medici)が遺した「メディチ家のコレクションがフィレンツェにとどまり、一般に公開されること」を条件に、すべての美術品をトスカーナ政府に寄贈した際の「フィレンツェから一歩たりとも外には出してはいけない」という遺言があり、ウフィツィ美術館が収蔵する他の作品もこの遺言に準じているので生半可なことでは貸出をしません。ましてや、レオナルドの作品となるともはや不可能なことで、誰もが日本で公開されるとは信じていませんでした。

後日、神内さんにお会いした時に、どの様にして不可能なことを実現されたのかをお聞きしたのですが、出会いとお互いの信頼関係、そして強い熱意があればこそとのお答えでした。

これって、イタリアの方とよほどの信頼関係を築いていなければ出来ないことですよね。

現在の日本経済は不景気の影響で日本人のチャレンジ精神のともし火が小さくなっているように感じますが、こんなときこそ情熱をもって物事に取り組まないと夢が本当に夢で終わってしまうように感じます。

ウフィッツィ美術館にあるレオナルド像
ウフィッツィ美術館にあるレオナルド像