滑っとした舌触りからのチョコレートの味わい。舌触りに似合ったのろい甘味が口当たりにみられます。キレは見られません。中盤からどっしりしたチョコレートの苦みとコクが広がり、その個性は内包する乳成分自体の油脂の重さすら想像させるもの。高揚感に走らず、軽快にも働きません。苦みに太さを感じさせ、一体的な重く強靭な風味が個性的であります。
オリジナルのチョコレートフレーバーのようなミルクの滑らかなタッチや細かなカカオの風味が整然とその粒子を織りなしていくような個性はみられませんね。
粘性が高いゆえに溶けるような質感を覚えさせない点もその味の個性を加速させています。
ガナッシュケーキは、チョコレートスポンジ的なまったりした味わいから、噛む瞬間にカステラの底面のようなザラッとした砂糖のザラツキと甘味を感じさせ、後味に穀物的な風合いにがっちりチョコレートを滲みこませたようなドライな苦みが広がります。ここにいくらかの温かみや、太いながらも軽やかに動けるコクのはつらつ舌風合いが見られるのは良いところ。口当たりの風合いがアイスクリームの味わいに近く、個性を埋もれさせてしまっているので多少心配になりますが、後味ではきっちり仕事をこなします。
トフィーはグニッとした食感が面白く、その味は淡泊ながらも砂糖の甘味を感じさせる飴菓子のようにシンプルな個性を見せてくれます。煮詰めていないキャラメルのような感じですね。
総じてネバッとした質感のアイスクリームですが、驚くのは食べるたびにだんだん美味しくなること。
この感じは今月の新フレーバーに多い傾向で、これがバレンタインパターン？
スタッフの方が腱鞘炎になりそうながっちりべっとりしたフレーバーが多い気がします（笑）。
実はこの作品、溶け始めたころが素晴らしく、苦味がどっしりしていながら高揚感を伴うようになり、グングンと惹きつける牽引力ある魅力を覚えさせるのがミソ。
表情が豊かではないものの、少し強引にリードしてくれるその貫禄と、ぶれない味わいが素晴らしく、内包する副素材の彩りを、食べながら追いかけてしまうために、その味わいの深みに向かって食べるものをひきつけているのです。
チョコレートの風味が太いままに高揚していくあの後味・・・。これは虜になります。
そして副素材の個性が、ベースの飾り以上の存在感を示さないのが実に素晴らしく、これは長く愛するに値する逸品でありましょう！