クランベリーフロマージュ
クランベリーリボンには甘さには色気ある酸味がつまっています。
このスプレッドはラズベリースプレッドなどに比べると酸味のキレは抑え気味であり、果実のもつ甘みをふくよかに味あわせるために、より
クランベリーのリボンはこれまで定番に使われたストロベリーやクレープで使われるフランボワーズなどの果実系のものに比べ、口当たりに軽い苦味を感じさせつつも、それが自然な果実の風合いであり、比較的控えめな酸味によって甘酸っぱさを引き出すもの。その流れにおいてほんのりとした苦味を終始感じさせることで社交的になりすぎずに、
独特の猥褻なる色香でその風合いを彩ります。
しかもそのような性格を有しながらも、内包する甘みの質感が穏やかさやふくよかさを感じさせるものであるために、安定感ある落ち着いた味わいを主体として構えることができるのです。高揚感に走らず、ジワリと舌に旨みをにじませる性格は、このフレーバーのベースとなるレアチーズアイスクリームの性格に変化を与えつつも展開させすぎないという、ベースの安定感を損なわない謙虚さが憎いところであります。
ベースとなるレアチーズアイスクリームはその滑らかなる風合いから、
食べる者に大いなる誤解を引き起こします。
滑らかな舌触りから浮かび上がるぽっこりした甘み、そしてコクを太く出さないままに流麗にチーズの酸味を表現し、それを滑らせるようにして後味へと食べ手を導きます。
それ故に密度に反する淡麗な流れを持っているようにも思えてしまうのです。
濃密さを持ちながらも常に流れを逆らわず、むしろ流れに沿う形でさわやかな風を送り込むかのようなチーズの内包する清涼感が前に出やすく設計されているからなのでありましょう。
しかし二口、三口と食べ進めると徐々に印象が変わってきます。
レアチーズアイスクリームは柔らかい味でありながら、実はその濃厚さが圧倒的ともいえる個性であったと気付くのです。
何よりも食べ終えてから十二分に時間が経過してからもなお、鼻に抜けるチーズの濃厚なアロマが存在し、それこそ食べ終えて初めて気づくフレーバーの強靭な個性といったところ。
ハーゲンダッツを思わす丸くヌメリとした舌触りから予想するべきであった味の濃密さは間違いなくこのフレーバーの最大の個性であったのです。
それでも軽く食べている内には、重さを感じさせない味わいを持続しようとする性格を持っていることはお見事の一言!
強いチーズの風合いを、ミルクの風合いによって穏やかなコクとしてつくりあげるところがこの作品のテクニカルさなのであります。
そしてそれをあざとく感じさせないところがサーティワンの実力ってところでしょうか?
リボンというコントラスの存在息も、ベースの味わいも、常に明快な美意識を持ち合わせているように思えます。
濃厚にして綺麗に味あわせるフレーバーであります。
それにしても透明感がありそうで透明感がないというのは、凄い個性。
透明感がないもののその色彩の印象が白っぽいことが秘密なんでしょうかね?
そして何をやっても、何と組み合わせても失われないその個性は、絶賛に値します。