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  『ヴァン・ヘルシング』を見た。期待していた伝統的ホラー作ではなく、ジキル博士とハイド氏、狼男にフランケンシュタインまで登場してしまうという荒唐無稽なモンスター・ムーヴィーの超娯楽作となっていて、驚いた。クリストファー・リーによるドラキュラ伯爵とピーター・カッシングによるヘルシング教授(吸血鬼ドラキュラなど)は望まぬにしても、主演のヒュー・ジャックマンは余りにマッチョ過ぎだし知恵者でもない。弱々しい風貌でありながら、知恵と教養のみであぶなっかしくドラキュラを退治するヘルシング像に美徳を抱いている者にとって、このキャスティングは「う~ん。」と唸るだけ。して、この知恵者の側面は発明僧侶役のデヴィッド・ウェンハムを同伴させることでクリアしたつもりなのだろうけれど、パートナー役のケイト・ベッキンセールを含めてこうまで味方が多いとはらはらドキドキ恐怖を感じる暇がないほど安心して見てしまえる。ただ醜い怪物をおびただしく登場させるだけというのも、生粋のホラー・ファンとしては戴けない。
 ムルナウ=マックス・シュレックコンビの『吸血鬼ノスフェラトゥ』、ランダース+ニューマン=ベラ・ルゴシ作『吸血鬼蘇る』そして、ヘルツォーク=クラウス・キンスキー作『ノスフェラトゥ』はどれも薄気味悪く、耽美的エロスも漂う。(特にヘルツォーク作は、醜悪で寂しくも美しい。Popol Vuhの音楽も儚い夢に浸っているように、素晴らしい。“Nosferatu”)この雰囲気位は作ってくれなくちゃぁ。
 しかしながら、じゃあお前は面白くなかったのか。キャスティングに不満か。と問われると、実はそうでもない。ただ屈折した楽しみ方をした訳ではあるが…。
 その訳はドラキュラ伯爵役のリチャード・ロクスバーグにある。彼はあまたの“善玉”達を向こうに回して存在感を見せつけてくれていた。そして、この退廃的で邪悪な美しさには覚えがある。ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーである。自分はロクスバーグのドラキュラ伯爵にブライアン・フェリーの面影を見てしまったのだ。ブライアン・フェリーって、きっとドラキュラ伯爵はハマリ役だったにちがいない。と思ってしまったのだ。(ただし『Bete Noire』位までのブライアンですが。)
   一昨年ジェーン・バーキンのアルバム『ランデ・ヴー 』に、ロキシー初期の名曲『In Every Dream Home A Heartache』を提供、デュエットで参加。往年の如くにデカダンな雰囲気を醸し出していたので、これはいよいよ復活か?!と喜んだのだけれど、まだちょっと元気がないようだ。また本格的に復活してわれわれを毒気に当ててほしいものだ。デヴィッド・ボウイーもがんばってることだし。