ひたすら映像の美しい映画を探しまくる 70~66位 | エンタメ&アート系 神映画ランキング

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■ アート系映画 世界の国別100選
 世界の国別アート系映画。「ひたすら映像美専科ランキング」は耽美至上主義。

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TOP 70 「はっきりと映像美を売りにした映画だと思う」級
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ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
ラブリーボーン (2009) アメリカ 監督: ピーター・ジャクソン

エンタメ映画系にもたまに映像美にこだわる監督がいる。
ピーター・ジャクソンはその数少ないなかの一人。
エンタメ映画として扱われる『ロード・オブ・ザ・リング』も、今から思えば実は、ワクワクドキするファンタジーアドベンチャーとしてはいまいちテンションが上がりきらず、むしろ映像が美しいアート作品としてのインパクトの方が強かったと思う。
本作品ではそういう美にこだわる彼の嗜好性がよりはっきりと出ている。

不条理に殺された少女がこの世に未練を持って天国へと成仏できず、現世と天国の境界(仏教でいう「彼岸」)をさまよう。「犯人に恨みを晴らしたい」という憎悪と怨嗟の呪縛は、父を狂わせ、母をつぶし、姉に危険を犯かせ、家族を崩壊させていく。その様子を見ていたたまれなくなった少女はある決断をする。

「これは私が天国に行ってからの話」という宣伝のキャッチフレーズがあまりに致命的な間違いだった。少女が天国に行こうとしない所にこの映画の肝があるのに。
この信じられないような広報の失敗のせいで、観客は「少女が天国から家族を見守る生暖かい感動物語」を期待してしまい、本編がなんだかわからない変な映画という評価になってしまった。
本作品は、「童話的ファンタジー」と「女児連続殺人事件」という相容れない両極を並存させた極めて稀有な作品だったのに。
実に残念だ。

時に甘美な花と夢のメルヘンチックな楽園、
時におどろおどろしく恐ろしい地獄の様相、
現世の出来事に反応する少女の心情とリンクして変幻自在に姿を変える死後の世界。
映像フェチの俺は「あぁぁ・・」と思わず声を漏らしてしまいそうな魅惑の映像に逝ってしまいそうになる。


夢幻チックな画が素晴らしい。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
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ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選


花と夢のメルヘンな天国映像。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
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現実世界とあの世の物がリンクする映像がすごかった。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
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おどろおどろしい地獄的映像。
美しい天国的映像とのコントラストが強烈。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
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呆画のバカスタッフが洋画の宣伝方法の間違った最近の例では、バリバリのアート系映像美作品であるテレンスマリック『ツリー・オブ・ライフ』を、「ションペンとブラピが共演する感動的な親子」のように広報し大量の犠牲者観客を出していた。映画というものを「底の浅い紋切型の感動物語」でしか発想できない呆画界。邦画制作だけでやってる分には観なければ済むだけの話で別に無視するからかまわないのだが、海外からの映画のマーケティングにも呆画関係者が携わることで世界中の映画が低レベルな呆画の精神構造によって穢されるのにはさすがにむかつく。


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ざくろの色 (1969) ソ連 監督:ダセルゲイ・ パラジャーノフ

ババーン!
きました。映像美界における謎の歴史的怪作、『ざくろの色』です!
Wikipediaによると「既存の映画文法から逸脱した自由奔放な表現が反ソ連的な危険思想に基づくものと見なされて」国家から弾圧されたという意味不明な説明がされている悲劇のソ連人映画監督セルゲイ・ パラジャーノフです。
映画の内容を観たらわかりますが、一体これのどこが反革命で危険思想なのかさっぱりわかりません。
っていうか、映画の内容自体さっぱりわかりません。

しかし、パラジャーノフが投獄されたときに彼を救うための抗議運動を行ったのが、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ロベルト・ロッセリーニだというから驚き。冗談みたいな面子だ。ヨーロッパの歴史的巨匠全員集合じゃないか。

さらに驚くのは、映画の内容。
まさに「映画文法から逸脱した自由奔放な表現」。
っていうか、自由奔放すぎ。
普通、難解映画というと、「何を言わんとしているのかがわからない」「あの場面の意味がわからない」というものだが、本作品の場合は、そもそもストーリーが存在しているのかどうかさえわからない。
どういうシチュエーションで、何が起こっているのかもわからない。
っていうか、それ以前に映画なのかどうかもわからない。
彼の映画と比べたら、意味不明難解映画として高名なゴダールの作品でさえも親しみやすくく思えるくらいだ。
今、意味不明映画として非難ごうごうの『ツリー・オブ・ライフ』もなんてわかりやすい親切な映画なんだと思えてくる。

でも『ざくろの色』なんだかドキドキする。楽しい。
だってあまりにも異文化なんだもん、あまりにも斬新なんだもん。
映画の冒頭いきなりこれでっせ。


ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← 本? 手記?
  「私の生と魂は苦悩の中にある」 








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選 ← 果物?ざくろ?から赤い汁がじわじわ。








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← 「私の生と魂は苦悩の中にある」








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← ナイフから赤い汁がじわじわ。








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← 「私の生と魂は苦悩の中にある」








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← ぶどうが踏み潰されて汁がじわじわ。








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← 「私の生と魂は苦悩の中にある」








ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選  ← 魚?なんで魚?ピチピチはねているし。上下にあるのは何?









こんな感じで、もう最初の30秒からこの映画は只者ではないことがわかる。
いつかはストーリーが始めると期待していてはならない。
最後まで物語らしきものはない。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選

ところが映像がなんか変ちくりんな魅力があるんだよねえ。
なんだかわからないけど、これまで観たことのない種類の映像美。
俳優たちは演技してるというよりも、監督が人形劇の操り人形の代わりに使っているって感じ。
特に本作品ではその「リアル人形劇」っぷりが激しい。

絵の雰囲気がソ連というより中東っぽい。
・・・と不思議に思ってたらアルメニアって元々から中東の国なんだってさ。
ソ連がむりやりに連邦に組み込んで属国にしちゃったのかな。
それでアルメニアの伝統的中東文化を写すことで民族独立を煽るものとされて危険思想とされたんじゃないか?
Wikipediaの「既存の映画文法から逸脱した自由奔放な表現が反ソ連的な危険思想に基づくものと見なされて」という説明がおかしいんだけのような気がしてきた。
なんでソ連が既存の映画文法を守ろうとするんだよ!(笑)
「おまえはちゃんとストーリーがわかる映画をつくらない罪で逮捕する」って、ソ連当局が粛清するのかよ。ギャッハッハ。
いくら共産主義にとって自由主義が敵だからってそりゃないだろ。けけけ。

youtubeでは画像埋め込みは無効になっているけど、映画自体は見れるので、この謎の世界、覗いてみてください。
ここをクリック

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英国王給仕人に乾杯!
  チェコ (2006) 監督:イジー・メンツェル

『シチズン・ドッグ』が「タイ版のアメリ」だとすれば、
本作は「チェコ版のアメリ」とも言えるような気がする。
前者はちょっと暴走しすぎてとんでも映画の部類になってしまっているが、
本作は『アメリ』並み、いや、それ以上の深い味わいと格調の高さがある。
本国チェコでは映画賞を総なめにし、
ベルリン映画祭でも絶賛され、国際批評家連盟賞という賞ももとったらしい。

映像美のみならず、エンタメ映画としてもアメリよりも面白かった。
ユーモアもエスプリが効いていて心地よいし、
エロとロマンが男心をくすぐる。

どうも東欧の中でもチェコとハンガリーは妙に惹かれる映画が多い。


ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選


内容はチェコの男ヤンの人生を自叙伝的に振り返る話。
これが派手なホラ吹きという感じではないのだが、
かなーり変なエピソードばかりで、
微妙にファンタジーっぽい。

ヤンが空に向かってコインを投げると
切手や絵葉書になって降ってくるところから
ヤンの自伝が始まる。
このシーンで「おおーっ」って感じにある。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選


ヤンの人生はこのお金持ちに出会って変わった。
金持ち男は部屋一杯に紙幣を敷き詰めて
ヤンに金持ちになるための指南をする。
「小銭を人に与えると札束になって帰ってくる」と。
ヤンはこの時以降、コインをばらまいて人が拾うところをじっと見る
という奇妙な癖がつく。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選


天使のような可憐な娼婦に恋をする。
なぜか花で女体盛りをする。
本作は出てくる女子が可愛すぎる。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選


大金持ちに酒池肉林サービスを提供するホテル。

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光がゆらめくロビーで娼婦たちが待機するシーンが異常に美しい。

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ええなあ、大金持ち。

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そして本作品最高潮の映像美シーン。
金持ち老人たちが豪華なディナーを囲む回転テーブルのうえに
下着姿の美女がのってクルクル回る。
意味不明にエロく美しい。

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ヤンはまたもやフルーツで女体盛り。

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チェコの美麗な風景もいい。

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やっぱこれは明確に映像美作品だ。

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大金持ち向け酒池肉林ホテルは、ナチスの優生学研究所になる。
金髪美女だらけ。

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終盤の映像美クライマックス。
切手が風にのって舞い上がる。

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ユリシーズの瞳  ギリシア (1996) 監督:テオ・アンゲロプロス


アンゲロプロスの「国境三部作」は、『シテール島への船出』『こうのとり、たちずさんで』に続いて、大トリを飾るのがこの『ユリシーズの瞳』。
本作品は主人公がギリシア国境を越えてバルカン半島の国々を次々と旅していくという、3時間に渡る壮大なスケールの作品。
個人的には本作品がアンゲロプロスのベスト。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-1

↑映画冒頭、いきなりでた、アンゲロプロスの必殺技、ワンショットのうちに変なことが起こる無理やり技。今回は、ワンショットのうちに人が死に何事もなかったかのようにスルーされる。


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↑主人公は映画監督で、彼の映画に対してギリシャ正教会が上映を反対して衝突するシーン。
上映されている映画は『こうのとり、たちずさんで』で、実はアンゲロプロス自身が実際に撮影をギリシャ正教会に妨害されたという事件があったそうだ。
現実と劇中話を自在に交差させるのが芸風のアンゲロプロスらしい公私混同っぷりが素敵だ。


ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-albania

まず、主人公がギリシア国境を越えて訪れるのが雪と沈黙の国アルバニア。
ここでは監督の必殺技、エキストラの動きを止める「マネキン撮り」が炸裂。


ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選-makedonia

次が旧ユーゴスラビアの南端の国マケドニア。


そもそもバルカン半島ってどんな国があるのかよくわからんので、
主人公の軌跡を地図にしてみた。

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↓ルーマニアの黒海に面した港から、ドナウ川を遡ってレーニン像をドイツに運ぶ船に乗る。
 本作品で一番有名なシーン。
 レーニンの頭でかい。

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美しいドナウ川をゆったりと巨大レーニン像が進み、沿岸ではわさわさと人が集まり像に向かって十字を切る。

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↓第一次世界大戦で夫を失ったブルガリアの農婦といっしょに過ごす幻想シーン。
個人的に本作で一番好きなシーン。

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いよいよ旅の終点、ボスニア紛争下のサラエボ。
怖い。

ザ・ベスト・オブ・エンタメムービー 100選
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霧が出た時だけ、町は平和になる。
視界がなくなり戦闘不可能になるから。
人々は霧に包まれている間だけ、音楽会をしたり演劇をしたり踊ったり人生を楽しむ。

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でも最後は酷いことになる。
合唱。