会いたい・・・そう願う心が奇蹟を起こす。

自分でないものになる・・・マヤにとっては、ごく自然なことだ。

紅天女になるということは、稽古で火照った体に夜風が気持ちいい。

稽古場のあるビルから、最寄の地下鉄へ向かう途中に、正面に車のスポットライトが映す影・・・

Kierkegaard

「幻でもいい」

駈ける、あの大きな腕が、当然のように広がった。

ステップ、ジャンプだ、妖精パックのように、マヤの体がふわりと飛んだ。

「速水さん、速水さん、速水さん」

「マヤ」

あの時以来の、広い、暖かい胸、温もり。

Kierkegaard

「マヤ、手を出して」

マヤは、素直に手を出すと、真澄は、背広のポケットからビロードの袋を取り出した。

マヤの掌に、中から取り出した、ハートのネックレスを置いた。

「俺からのプレゼント、貰ってくれ」

「こんな高そうなもの、頂けない」

(HEART OF CARTIER NECKLACE 価格 ¥577,500(税込) 真澄くんにとっては、はした金だと思う)

「これを見て、俺を思い出してくれ」

真澄は、マヤの手を、自分の手で覆い閉じた。


Kierkegaard

「速水さん」

「君との約束を果たすまで、もう少しだ」

ほんのひと時の逢瀬、それでもぬくもりが、心まで融かす。

真澄は去り際に耳元で囁いた。

「(イルカは、彼に返したほうがいい)」

マヤの頭は、?マークで、いっぱいだ。

「車で送って行きたいが、まだ、仕事がある」

「あ、大丈夫です。お仕事頑張って下さい」

「ああ」

月は見えないけれど、星が瞬いたそんな夜だった。



***

私は、イルカのペンダントが嫌いなのである。

駄文だな、ごみ箱かな。(しくしく、リハビリ中なのである