ご訪問ありがとうございます。

ツールの使い方を詳しく説明しているサイトを参考にして、電話番の片手間に

塗り塗りしていたら、途中で嫌になった。私の辞書に根気という文字は塗り

つぶされている。

オートシェープで絵を描くときの、あの根気は、どこにいったのだろうか?


Kierkegaard

まんまるお月様が宙に浮かんでいる。


昔、菊花の頃になると菊花の宴が江戸にある各大名家の中屋敷で

催されておりました。


大名家の子息および息女の結婚については、家の格式などで決まる

わけですが、当時はお見合い写真なんてありません。


結婚する相手の女性の美醜というものは、傍仕えしている者の噂に

頼るものですが、庶民に流布しております、浮世絵のようなものないので、

どのお姫さまが器量がよくて、才たけてるなんてわかりません、が、

どうやら相撲のような番付表なるものがあったようです。


その番付の下の方にひっそりとのっかっているのが、三位の下の位を

もらっている大名 北島家のマヤ姫さまです。


このお姫さまは、決して器量が劣るわけでなく、それはもう愛らしく、可愛らしい、

素直なご気性のお姫さまですが、書画、華道、茶道、琴などの才が、ひとより

はるかに劣るわけで、正直者の腰元が正直に申告したものだから、

番付の下の方になったのでした。


のんきな性格なので、両親がその番付表をみて深いため息を吐いたのも

気にしてませんでした。


年頃のお姫さまです、不憫に想った両親は、お姫さまの気晴らしになればと思い、

中屋敷で菊花の宴を催しました。


その宴には、速水家と桜小路家の子息も招かれておりました。


「真澄殿、菊が見事ですね」


「そうですね。優殿は別の菊の花が目当ては?」


「どうして、それを」


「いや、噂で。優殿がそれほど執心なさっている姫とは、どんな方か

興味ありますがね」


「可愛らしい方なのですよ、優しくて、言葉を文を交わしていると暖かくなる」


「ほう、それは是非拝見したいものですね」


のんき者の姫さまは、菊花の宴で屋敷が華やいでいるのが嬉しくてたまりません、

菊の香りに誘われ、庭に飾られている丹精された菊花に目を奪われておりました。


奥の中庭にひっそりと置かれた菊の一鉢に魅せられました。


それは新種の菊で、花弁の形、色、艶とくに珍しいもので、手違いで、

奥の方へ飾られたのでした。


「まあ、これは何て見事な」


そこへ偶々ですが、二人が現れました。


「マヤ姫」


「まあ、優さまもいらしてたのですか」


「はじめまして、マヤ姫。速水真澄と申します」


「まあ、速水様の」


「マヤと申します。今日は、我が家の菊を堪能してください」


にっこり愛らしく笑う姫さまに、真澄くんは心奪われました。


旧知であるマヤ姫さまと優くんは、にこやかに会話しています。


真澄くんは、気に入りません。


「姫さまは、宴では管弦をひかれるのですか」


「ごめんなさい、私は管弦が苦手なの、でもお姉さま方の

演奏はとても見事ですの、是非楽しんでください」


会話が終わってしまいました。


「姫さま、お殿様がお呼びでございます」


姫さま付きの中老が、迎えに来ました。


心の中でがっくしなる真澄くんでした。


このお姫さまには、年の近い、雪、月、花という腹違いの三人のお姉さまが

おりました。


もちろん年頃のお姫さまなので、今宵の菊花の宴は、姫様方のお見合いの

ような意味合いもあり、そういうわけで各大名家の子息が多くよばれておりました。


真澄くんは、父親のいい含められ宴に顔を少しだけ顔をだすと、先ほどの

マヤ姫が気になってしかたありません。


そっと宴を抜け出し、姫さまと出遭った菊花の鉢が置かれている奥庭へ

行くと、月光を浴び菊に魅入るマヤ姫がおりました。


「マヤ姫」


「真澄殿ですか、どうしてここへ」


「月光にいや、菊花に誘われ」


「ええ、見事でしよう、昼間見たときも心奪われ、月光の中でどのように

咲き誇っているのかどうしても見たくなったのです」


「ええ美しいですね(あなたが)」


のんき者のお姫さまは、真澄くんがよこしまな考えに心奪われてるなんて、

わかりません。


今宵は、ここまでにしとうございます。


***