ご訪問ありがとうございます。


ばかばかしい話が書きたくなった。


ばからしいパロです。


***


いずれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるの頃です。


本来、帝にはなれないくらい、傍流の親王である真澄という男が、とある事情で、


東宮に、そして、あっとゆうまに今上になりました。


右大臣だ、大納言だと、有力な貴族がこぞって姫君をまあ、


入内させましたが、気のあう姫君がいないのでしょう、なかなか子供に


恵まれませんでした。


というか、右大臣家の姫君で梅壷の紫織姫が、大層な悋気もちで、


後宮の中が騒乱状態で、足が遠のいているのが本当のことなのですが。


周囲がうんざりするくらいせっつきます、真澄くんは鬱気味になりました、


で、先の先の院の月影という大后がおりまして、


「真澄さん、たまには気分転換にどこか遠出でもなさい、新しい出会いが


あるかもしれなくてよ。私が取り計らってもよくてよ、おほほほ」


真澄くんは、月影大后の計らいでこっそり御所を抜け出しました。


都より牛車で半日くらいの、大后の別荘で命の洗濯です。


「ふう、空気がうまい」


真澄くんは、お散歩にいきました。


夏の日差しはきびしいですが、時折ふく風が気持ちいいです。


従者の聖くんも、一緒にのどかに散歩です。


「空気がうまいな」


「そうですね」

のんびり、てくてく、歩いては、立ち止まり、歌なんかを短冊にしたためます。


「主上、そろそろお戻りに」


「もう少し、風景を楽しみたい」


そこに、ぱしゃ、ぱしゃと水音が聞こえます。


真澄くんは、気になって、その音のする方向へ足をむけました。


湖で、少女が水遊びをしていました。


白い単衣だけをまとい、外国(とつくに)に伝わる人魚とは、さもあらんと、


真澄くんは、思いました。


黒い艶やかな髪、黒曜石の瞳、長いまつげ、衣からすける白い肌、


小さな唇、生き生きとして、可愛らしい姫君で、真澄くんは、目を離せません。


少女が、急ぎ、岸辺へ泳いでもどってきます。


真澄くんは、少女をもっと真近でみたくなりました。


かさっ、真澄くんの踏む枯葉の音に、少女は、びっくとします。


少女と真澄くんの瞳が交わります。


「や」


少女の体が震えています。真澄くんは、少女がどうしてここにいるか、


冷静に分析しました、とりあえず、見た目からやんごとない身分のお姫


さまのようです、おそらく親によるむりな結婚を厭うて、自殺かと勘違いします。


「若い、身空で命をたつのは、不幸ですよ」


「はあ」


「哀れに思う」


***


姫君の名はマヤといい、左大臣を祖父に、父は大納言という、かなり


やんごとない姫君です。


深窓の姫君といっていいでしょう。


そんな姫君が何故こんなところにいるかというと、大納言には、二人の


正妻がおり、それぞれに姫君と男君が生まれましたが、なぜか、この男君の


名前は優というのですが、とても虚弱でした、占いで姫君として育てよという


ことになり、姫君として育ちました、姫君がふたりになるのは、おかしいので、


本当の姫君の方は、男君のように育てられたのです。占いのせいか、


男君も生きながらえ、そろそろ本来の姿に戻って、裳儀や成人の儀式をと


大納言は思っておりました。


ですが、男君として自由闊達に成長した姫君は、裳儀なんて真っ平です。


「父上、私は、元服して出仕したい」


「だめ、裳儀をしなさい、優がかわいそうだろう」


「優君に、出仕は無理です」


「だめったら、だめ」


「父上のいけず」


大納言と喧嘩して、別荘に家出しました、あんまりにも暑いので、湖で


泳いでいたわけですが、何か嫌な予感、視線がして、急ぎ岸辺にもどって


きたところを、真澄くんに見つかったというわけです。


***


どこの貴族のぼんぼんかしら?早くここを立ち去って欲しいのに、


何か勘違いしているのよね?


「無理な婚姻を父に薦められ、でも、残される母や弟の哀しみを思うと。。。」


黒い大きな瞳から大粒の涙を浮かべ、嘘なきです、体を震わせました。


早くここから立ち去って欲しい一心で、必死に哀れな姫君を演じます。


「かわいそうに」


姫君の体はふわりと宙に浮かびました。


「あの」


「私が、あなたの父君にお願いしてあげよう、私は帝だから」


「え、えー」


姫君は、叫びました。なんで今上がここにいるのかさっぱりわかりませんが、


姫君の体はがっちり拘束されました。


「おいで、私の別荘が近くにある。体が震えてるね、あっためてあげよう」


「あの、家のものが心配しておりますので、離してはいただけませんか?」


「聖、姫の屋敷に連絡を」


「主上、おやめ下さいといっても、ダメなんですね」


姫君は、真澄くんに捕獲されました。


マヤ姫さまは、盛大な裳儀のあと、入内し、あっというまに、中宮に


なりました。


***


姫の父である大納言が御簾越しで話をしております。


「すべて、月影大后さまのおかげです」


「良かったこと、おほほ」


そうです全ては、月影の大后の計画だったのです。


宮中が暗くてうっとおしいのが嫌な大后さまは、大納言家の秘密を


知り、画策したというわけです。


まあ、みんな幸せで何よりです。


ちゃんちゃん


***


高校生の頃、原文を読んだ、某小説と異なり、濃いお話だった。


あーなって、こーなってというか、うん、すごい話だ。


たまには古典に楽しんでみようと思った。