連休明けは忙しい、絵に逃避する時間があまりない。

電話がすごい勢いでなる、クレームも、はいはいと聞いていると、なんだか

落ち込んでしまった。電話番もつらい。

今日は、雑だな、まあいいか。妄想を垂れ流す。キリッ。


Kierkegaard

真澄くん17歳、聖くん15歳の秋。


「真澄さま、どうなされたのですか?なんだか、ぼーとして」


「聖、お前来てたのか?」


「ええ、父と一緒に呼ばれましたから、何か心配事でも?」


「まあ、あるといえばある。聖、お前、今度の日曜は暇か?」


「え、まあ、何も用事はありませんが。真澄さまは、確か今度の日曜は、

大都芸能の重役会議ですよね?」


「そうだ俺は、親父について会議に出なきゃいけない。だが日曜は、

学校の文化祭がある。いつもだったらサボるんだが、今回はアイツと賭けで、

負けたツケを払わないといけない。でだ、聖、お前俺の代わりに、文化祭で

舞台に立ってくれ」


「はあ、私が真澄さまの代わりなぞ、学校が違いますし、問題になるのでは、

ないですか?」


「学校には話を通すし、お前以外に俺の代わりができる人間はいない」


「あの、舞台とおっしゃいましたが、せりふの暗記や稽古に参加できませんし、

無理ですよ」


「お前去年、メイドカフェでメイドをやってたよな」


「それが何か」


「舞台で演じるのは、メイドだ。セリフは、メイドとしてしゃべるだけだから、

問題ない。相手役はアイツだから、安心しろ」


「真澄さまの親友の、あの方ですか」


「ということでだ、これが台本だ、朝倉に言って衣装の方は寸法も大丈夫

だろう」


「あの私は、お受けするとは言ってませんが」


「お前は、俺の頼みを聞いてくれないのか?」

真澄くんは潤んだ瞳で、斜め15度に頭を傾斜させ、それはビクターの犬の

ように愛らしくて


「わ、わかりました」


「お前って本当にいいやつだな」


私はこめかみに指をあて、以前に誓ったことを少し後悔した。


たしかにメイドですが、何ですかこれは、渡された台本には、

「エマ」と書かれていた。


***


「真澄、例の件はどうなった。ちゃんと彼は、受けてくれたか」


「大丈夫だ、予定通り聖が主役で問題ない」


「お前も悪いヤツだな。だまくらかしたんだろう」


「しょうがないだろう、親父も映像が欲しいというし、去年のメイド姿は、

写真しかなかったから」


「聖くんて、不憫だな」


「お前だって、相手役楽しみにしてたくせに」


「ああ、まあな」


***


一週間後、絶好のお天気にめぐまれよい文化祭日和です。


真澄くんのクラスのお芝居は、大好評のうちに幕をおろしました。


聖くんの写真は飛ぶように売れ、盛大な打ち上げの資金となりました。


ちゃんちゃん。