今日通販で届いた本は、「エロイカ 36」、「スキビ 24」、「花竜姫 4」、「言葉 2」の4冊。
スキビ以外は、昭和の頃から活躍する作家さんの作品ばかりだ。
少女マンガのカテゴリ作品ではあるが、「スキビ」以外は今時の小中高生には受けているのでしょうか疑問ですが。
そういえば、実家に帰ったとき中高の姪の読んでる雑誌を見て、ついていけませんでした。
レイアウトとか、とにかく細かくて、見るのに疲れました。
80年代に中高生だった私が読んでた雑誌「オリーブ」(多分イラスト用だな)が押入れに残ってたので比較してみて面白かったです。
「夢だっていいじゃない」
「7時ですよ。マヤさん。そろそろ起きませんか」
朝目覚めると、目の前に真澄殿下がいた。
「おはようございます。お兄様」
巨大猫をかぶって、お上品に、そして殿下の頬に触れるか触れない程度のキスをした。
「おはよう。マヤ」
真澄殿下は、額に、鼻に、頬に、最後に唇についばむようなキスを落とした。
朝の挨拶にキスだと、いくら当家の風習とはいえ、おかしすぎるだろう。
大体なんで、うら若き乙女の寝室に、毎朝、毎晩入ってくるんだよ。おかしすぎる。
今日こそは、盛大に文句を言ってやる。
「お兄様、こういった挨拶は、とても恥ずかしいので、やめていただけませんか?
うら若き乙女の寝室に、殿方が無断でお入りになるのは、如何なことでしょう。
問題とは、思われませんの」
「マヤ、僕と君は、兄妹がいることも知らず離れて暮らしてきた。
突然、兄妹ですといわれても、感情がついていけないだろう。
君は、僕にとって、とても大切な妹であり、家族なんだ」
殿下がいきなり私を抱きしめた。
「こうやって、離れた時間を埋めるためにも、スキンシップは必要だろう」だからどうした。たしかに、抱きしめられていると、気持ちいい。
お母さんも、夜、帰宅すると必ず私を抱きしめてくれた。
母子家庭で、私が小さい頃、保育園に向かえにきたときも、小学生になっても、家に帰宅するとギュツと抱きしめてくれた。さすがに中高はあまりなかったけど。私が、辛いと思うとき、時々お母さんは、私を抱きしめてくれた。
正直寂しい思いもした。でも、母に抱きしめられ、額や頬にそういえば、チュって小さいキスを落とされたっけ、優しくて、甘い、思い出、あのときも、とても暖かくて安心して気持ちよかった。
「・・・お母さん」
「・・マヤ」
「そういえば、お母さんも、私のことずっと抱きしめて、キスしてた。兄ちゃんもされてたの?」
「ああ」
兄にさらに強く抱きしめられ、痛みを感じ、我に返った。
「あのー。もういいです」
ちっ、今のは舌打。まさか、このお上品な殿下ではないよね。
初めて、会ったとき、まさかこのルネサンスのダビデような彫像の面差しをした人が兄なんて信じられなかった。
私とあまりにも、似てない。似てなさすぎる。
薄い栗毛に、彫りの深い顔立ち、とび色の瞳。
何かの間違いかと思った。
このお城のような家に来て、先ず唖然とした。そうだろう、6畳二間の2DKのアパートなんて、この家の玄関くらいだ。
ご飯のときも、高そうな器だし、飾られてる絵や置物も高そうだ。
こんなところでくつろげるはずがない。
根っからの庶民のお母さんが、合うわけがない。
私も、生まれてこれまでずっと庶民な暮らしで、いきなりお嬢様になれなんて無理。
そりゃ確かに、中高演劇部でお芝居はしていたし、お嬢様を演じることはできても、日常全てなんて無理です。
何とか、兄を説得し、下宿するから転校したくないとごねた。
兄は、許さなかった。
あの氷のような表情をし、全てを凍らせたあとに、寂しげな顔と、悩ましげな瞳で説得された。
最初は、あまり打ち解けられなかった。
兄に、極力係わり合いにならないようにしていたのに、いつの間にかそばにいるし、当家の習慣だといって、過度なスキンシップもされるし、いくら兄とはいえいい加減にして欲しい。
舞ちゃんのとこのお兄ちゃんみたいな感じでいいのに。
いいな、舞ちゃんのところのお兄さん、ほんわかで普通ぽくて、優しいし。
いくらカッコ良くても、あの容姿で、密着されるといくら兄でもどぎまぎしてしまう。
ふーと大きいため息をついて、お嬢様に変身しないと。
制服に着替え、特大の猫をかぶる。
私は、旧華族の流れを汲むお嬢様。
凛として、清く正しく美しく、今では化石となったヤマトナデシコ、ご令嬢の仮面をかぶる。
完璧。
若干、容姿はイマイチだが、元がこの程度だ。
いかなるときも微笑みを忘れず、アジの開きを思い出さず、紅茶には、薔薇のジャムを入れてのむお嬢様なの。
つづく その4 へ