母の手術は成功したようです。ご心配おかけしました。


今日は… 夫婦関係(家族)について、少し掘り下げて考えてみたいなと思います。 ヘーゲルの弁証法を使って… 何でこんなことを考えるのか…私にも分かりませんが… 前から書きたかったことです。

ヘーゲルによると…
奴隷は主人に命令されて、主人のために労働します。主人は、奴隷の労働成果の大半を所有にすることで、裕福な暮らしを保証されます。 しかし、主人は自分で労働していないわけですから、全面的に奴隷の労働に依存した生活をしています。 なので、主人が奴隷の労働無しで存在できないと自覚した瞬間、主人は主人でなくなり、奴隷は奴隷でなくなってしまうのです。

主人は奴隷によって主人だと認識されているから主人でいれるのであって、奴隷に「あなたは私の主人では無い!」と思われてしまったら、奴隷の主人で無くなってしまうという考え方をヘーゲルがしました。 哲学っていうより経済学みたいに思うのは私だけでしょうか…

夫婦っていうのもそんなものかもしれません 普通の家族っていうのはこんな感じでしょう… 妻は夫や子供たちのために料理を作って待っています。 夫はそんな妻や子供たちのために外で稼いできます。 妻と子供はは自分で稼いでいないわけですから、全面的に夫の経済力に依存した生活をしているのです。 なんとなくみんな分かって生きていますよね。 でも自覚して生きているかというと、ちょっと違うような気がします。 自覚して、ああ、彼がいないと生きていけないなんて思うと、そんなことは無いぞ!という思いがこみ上げてきます。

うちの場合…M君に稼ぎがなく、私にも稼ぎがありません。 今はイギリス政府の求職者支援金に頼って生きています。 (足りない部分はお義父さんが出してくれています。) ずっと前から、このような状態には疑問を持っていましたし…お義父さんが主人というわけではありませんが… 私はずいぶん前からお義父さんの仕送り無しでは生きていけないことを自覚していました。 それでも自覚していないふりをずっとしていて… お義父さんとお義母さんが望むことをずっとしてきました。  M君にとっては実父です。 なので、こんなふうには感じないのでしょう…  

それが出来なくなったのが昨年9月でした。 私の研究が認め始められ、フィンランドの学会に招聘された時…  お義母さんがそのことを知って言いました。

お義母さん: 「ペンギン、Mも連れて行ってくれるんでしょー? ヘルシンキは素晴らしいところよ!」

ペンギン; 「残念ながら、私ひとりで行くんです。 北欧の学会に招かれているので… 一人分しか出ないんですよ。」

お義母さん: 「あなたのほうが出来るのは分かるけど…Mと足並みをそろえて頂戴ね!」

これを聞いて、プツンって切れました。 切れたと言っても怒るとかしませんよ。 ただ呆れたんです。 自分の息子にエールを送れないのか? ってね。 ペンギンに追いつけるように頑張れとか言えないのか…って思って、凄くがっかりしたのを覚えています。

ビクトリア朝の夫婦関係じゃないんです。 私はフェミニストですよ! 何を言ってるんですか! って叫んでやろうと思いましたが…大人げないので…そこは押さえましたが…

お義母さんはずっと専業主婦です。 お義父さんがお医者さんだったので、そんなことが出来たんですよね。 M君はそんなお家で育ったので、たまにへぇ…っていうようなことを言いますが…それでも変わりました。 彼の妻はフェミニストです。 

学会でフィンランドに行ったのですが、オーストラリア時代の親友Sちゃんに会い、彼女に言われてはっとしました。 

Sちゃん : 「ペンギン、どうしちゃったの… 私が知っているあなたはもっときらきら輝いてたよ。 結婚生活で何かあるんじゃないの…?  今のあなたは好きじゃないなぁ…」

はっとしました。 驚きました。5年ぶりに会ったんですよ。何も会話をしていないのに… 分かっちゃうんだなって・・・

ペンギン: 「悪いように悪いように考えちゃうんだよね。 M君じゃないのよ・・・・M君は良いの… でもほら、うちらはM君のお義父さんに頼っている寄生虫だからね… 私は嫌なんだけどさ…  イギリスでは仕事もないし…」

Sちゃん: 「オーストラリアの時はあなたの家族が裕福だったし、それにあなたも非常勤講師として生き生きしてたじゃない。 環境が変わったから、仕方ないのかもしれないけどね… 曇っているイギリスと晴れているオーストラリアじゃあ違うわね… 」

Sちゃんが気候のことを言っているわけじゃないことは良く分かってました。 

Sちゃん: 「あなたはなんでも晴れにしてきた人でしょ… しっかりしなさい… M君も博士論文終わったんでしょー。 何かできることを探して、晴れの世界にM君も連れて行ってあげれば… 私がオーストラリアで困ってた時も助けてくれてじゃない… あなたはM君の両親の奴隷じゃないよ。 しっかりしなさい! 自由なのよ!」

涙が出ました。  親友には分かるんですねぇ… 自由・・・ 自由である以上責任を取らなきゃ…

Sちゃんは続けました: 「ペンギン、ヨーロッパはね・・・人種差別が多いの… あなたがどんなに優れていても、彼らはあなたのことを同じ人間と思ってないよ。 その分あなたが強くならなきゃ…流されちゃう。 親戚だからって例外ではない。 分かってくれているだろうと思うのはいけないことなの… じゃないと、あんなナチスの悲劇は起こらなかったよね。 」

ペンギン: 「悪い人じゃないと思うんだよね。 うちの母だって、きっと私のことをひいきするだろうし… 親だしね・・ 親が味方しないと・・・ でもその味方の仕方が疑問なんだよ。 嫁がこのような一人旅をすると、足並みをそろえろとかいうから… 私はM君の見方なのにね・・・ 分かってないな…」  

Sちゃん: 「ペンギン、ねえ… あなたの気持ちの持ち方じゃないの… ヘーゲルが言ってたでしょ… 思い出して…!! 奴隷であることを自覚しない時は奴隷なんだけど、自覚するっていうことは自問するっていうことだから… あなたはそんな単純な人間じゃないし… 彼らもそれを恐れてたと思うよ。 あなたが大きくなればM君も大きくなるよ。 あなたの背中を見て彼も頑張ろうって思うよ。 私はオーストラリアであなたを見てて、頑張ろうって思ったもん… そんな簡単に人生を諦めないでね! あなたにはキラキラ輝いて欲しいの!」

っていう会話をしたんです。  Sちゃんの言うとおりでした。 昨年の私は本当に良い人間ではありませんでした。愚痴ばっかり言ってたし… ヘルシンキでSちゃんに再会して、色々なことが分かりました。  

私なりに『主人と奴隷の弁証法』を解釈すると・・・ 一部の権力を持った人々が「○○はこうでなければならない」と考えていても、私が「そうではない」と信じていれば、自分の人生を自由に選ぶことができるんだって・・・  M君と私は違う人間ですし、M君と彼の両親も違う人間です。 彼も両親の奴隷にならずに、自分の人生を生きて欲しいと私は願います。


penguinのひとりごと - イギリス生活日記

昨年9月、ヘルシンキにて…親友と共に・・・