オープンカフェを覆う木の影が、春の風で揺れている。
穏やかな時間はそのままだ。
グラスに入った水に、綺麗な青空が映し出している。
そこに食塩が振り掛けられた。
「で、あなた達の好きな音楽って何なの」
芦田さんは卑屈そうな目を私達に向けた。
目を泳がせながらも、美紀は素直に答えた。
「私は、ショパンが好きですけど」
「ショパン?、食パンみたいな顔して何言ってるの」
「食パン?」
美紀は栗色の巻き毛が似合う上品な美人だ。
どう見ても食パンには見えない。
コップに手をつけないで水を飲むと、芦田さんは上目遣いで美紀を見つめた。
「あんたにぴったりの曲は民謡よ」
「民謡?」
「津軽じょんがら節を聞きなさい」
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