オープンカフェを覆う木の影が、春の風で揺れている。


 穏やかな時間はそのままだ。


 グラスに入った水に、綺麗な青空が映し出している。


 そこに食塩が振り掛けられた。


「で、あなた達の好きな音楽って何なの」


 芦田さんは卑屈そうな目を私達に向けた。


 目を泳がせながらも、美紀は素直に答えた。


「私は、ショパンが好きですけど」


「ショパン?、食パンみたいな顔して何言ってるの」



1111111おバカ小説集



「食パン?」


 美紀は栗色の巻き毛が似合う上品な美人だ。


 どう見ても食パンには見えない。


 コップに手をつけないで水を飲むと、芦田さんは上目遣いで美紀を見つめた。


「あんたにぴったりの曲は民謡よ」


「民謡?」




111おバカ小説集




「津軽じょんがら節を聞きなさい」







画像提供主『EyePic』様

        『イラストAC』様

画像提供主様は随時募集しています