紹興酒に砂糖などを入れる習慣を広めた犯人を発見 | 中国、食うぞ、飲むぞ

紹興酒に砂糖などを入れる習慣を広めた犯人を発見

 杭州と紹興で紹興酒を朝昼晩と飲みまくった旅行の時のことです。

 その間、一度として店の服務員に「砂糖や梅を入れますか?」と聞かれませんでした。

 北京では五割程度の確率で質問されますし、ある時は何も指示していないのにやかんの中に紹興酒を入れて温めて持ってきたのですが、注がれた紹興酒のへんてこりんな味に、あわててやかんの中を見ると、なんと氷砂糖と生姜の千切りがたっぷり入っていて「こんなことしろとは言っていない。別のを持って来い」と連れの中国人が激怒したこともありました。

 なぜ、紹興酒の本場では何も入れないのが普通なのか、疑問に感じて、紹興酒に詳しい中国人に聞きました。


台湾紹興酒01


 すると、彼は笑って「本来、紹興酒は何も入れずに飲むのが普通だよ。砂糖や梅、生姜などを入れて飲むなどという邪道なことを広めたのは台湾なのだよ」と断言してくれました。

 なるほど、台湾ねえ。以前、お話したように、中国では紹興市で造られた黄酒にしかつけてはいけない紹興酒ですが、共産党との戦いに敗れた国民軍が移っていった台湾で、中国人が造る黄酒には彼らが勝手に紹興酒の名前を使っています。


台湾紹興酒03 台湾紹興酒


 正直な会社は「台湾紹興酒」と呼んでいますが、その台湾紹興酒が砂糖や梅、生姜を入れることをユーザーに啓蒙したというのです。

 「その辺の経緯を説明しているウエブサイトがあるから、チェックしてみたら」と友人に言われて、紹興酒の業者が作っているサイトを訪れました。

 そこには以下のように書かれていました。

 「紹興酒に砂糖や梅、生姜などを入れる飲み方は、台湾から香港、マカオ、日本などに伝わって広がり、そこから経由して中国本土に入ってきたのです。なぜ台湾の紹興酒がいろいろなものを入れるかというと、台湾紹興酒は酸度が強すぎたり、あるいは弱すぎたりと味にぶれが大きいので、酸味が足りなければ梅干や生梅を、強すぎれば砂糖を入れて、味を調える必要があるからです。正真正銘の紹興酒はそのような雑物を入れなくても十分においしいのです。おいしいワインには何もいれずに飲むように」。


台湾紹興酒02


 なーーるほど、よーーくわかりました。空太郎たち多くの日本人も台湾紹興酒の陰謀にはまっていたのですね。

 きっと、昔、日本の中華料理屋さんで飲んだ紹興酒はほとんどが台湾製だったのかもしれません。

 それにしても、恐ろしいことです。氷砂糖を入れて、温めて飲むという儀式を強要され、多くの日本人は「これが正統派の飲み方なんだ」と誤解して、我慢して飲んでいたわけですが、その結果、「紹興酒はなんだかべたべた甘くてたまらない」と紹興酒嫌いを大量生産してきたのです。

 もし、戦後、日本人が先に正統派の紹興酒をストレート、常温で飲んでいたら、どうなっていたのでしょう。

 空太郎のように、「これは白酒とともに、中華料理を食べるときには是非に飲むお酒だ」と大好きになる人がたくさん育ったのではないか。

 そんなことを考えながら、ウエブサイトを閉じたのです。