新潟市長選は10月14日告示、同28日投開票だ。
今のところ、4名が立候補を予定しているとのことだが、今回の選挙の焦点は保守系2候補吉田と中原(以下、敬称略)の一本化ができるかどうかであった。どちらを自民党が推薦するか注目されたが、どちらも立候補への意思は硬く自民党の推薦は見送られた。これで保守系は分裂選挙となる。
新潟市長選だけでなく、すべての選挙には被選挙権を持つものであれば誰もが等しく立候補する権利がある。それを踏まえた上で、保守系2候補の選挙戦略を中心に考えてみたい。
候補予定者同士の意地の張り合いは漁夫の利を与えてしまうということは誰もがわかっていることなのだが、なぜ、かくも愚かなことになったのだろうか。特に新潟は形勢次第では野党系議員が当選する土地柄だ。新潟市に限って言えば、保守安泰ではない。前回知事選の新潟市の得票数を見てみても決して楽勝ではない。ましてや、現職ではなく新人候補予定者という実績のない者同士のどんぐりの背比べの様相なのである。4候補乱立の中で僅かでも得票が多い者が選挙戦を制する。この二人は前々回の新潟知事選や前回の参院選の結果をわかったうえで臨んでいるのだろうか。
確かに、我こそは次期市長選保守系候補と満を持して準備を進めてきた吉田には同情の余地がある。
参議院1期6年を務めた中原は、一昨年定数見直しで改選2から1に減った参院新潟選挙区で森ゆうこに敗れたばかりか、昨年の衆院選でも落選している。行き場を失った中原は、参議院から衆議院そして新潟市長選と手あたり次第立候補している。ついこないだまで国政の場にいた中原が新潟市長選に立候補する大義はあずかり知らぬところだが、吉田にしてみれば誠に迷惑な話である。
この二人の政治姿勢は今期で引退する篠田現市長に対しては概ね敵対的である。篠田市長にしてみれば、この二人を自らの後継候補にしたくはないだろう。現職在任期間中の市財政の悪化に対しては批判が多く、それを立候補予定者として声高に指弾するのも理解できる。だが、現職が次回市長選に立候補するのならともかく、引退する現職を相手に刀を振りかざしたところで自らが当選するための集票には素振り程度の効果しかないのではないだろうか。もっとも、今さら現職に対して無節操に「よろしく」とも言えないのも事実だが。
現職の市政執行には賛否両論あるにせよ、引退する現職の後継候補として現職支持票をごっそりいただいた方が選挙戦術的には優っている。現に北区長だった飯野が現職の後継との指名を受け、一部地元財界の支持を集めていることは注目すべきだ。件の保守系2候補にしてみれば痛手としか言いようがない。
自民党県連の調整力の無さが今回の保守系分裂選挙をもたらしたのは事実だが、自民党にしてみれば新人4候補乱立の中で突出した知名度を持つ者がいない現状においては、無理をしてでも推薦しようという動機が乏しいというのがホンネなのかも知れない。さらには、推薦されなかった候補の支持者が自民党離れを起こすなど組織的に禍根を残す懸念さえある。
野党統一候補である小柳が当選すれば話は別だが、残りの3候補のうち誰が当選しても後からそっと歩み寄って勝ち馬に乗った方が現実的とも思える。そんな自民党の姿勢が透けて見える選挙になりそうだ。自民党の影響力行使は当選してからでも遅くはないということだろう。今の段階で推薦を決め込んだ候補が仮に落選したとしたら、それこそ自民党にとっては今後の国政選挙にも影響しかねない。
話は変わるが、BRTについて。
各候補、BRTの廃止や見直しに言及しているが、その代替となる案がいまひとつ見えてこない。
新潟市は郊外の宅地化が進み、それに伴いバス路線を延伸してきた。1路線の運行距離が伸びれば、公道を走るバスは定時性が損なわれるのは当然の結果である。多少の雪でも市内バス路線はそれこそマヒ状態になっていた。
BRT運行開始前の古町は乗客もまばらな郊外からのバスがひしめいていた。これを解消するために、西地区では新潟駅と青山の間をピストン輸送することで、少なくともこの区間の定時性の確保は以前よりも改善されたと思う。青山以遠へは乗り換えが必要ということになるが、今は冬場の乗り残しも減ったように思える。
BRTで議論の余地があるとするならば、各停で運行できない連節バスではないだろうか。高いカネを出した割に当初見込んだ効果がどれほど実現できているものなのか。
いずれにせよ、バス路線は随時見直しをしながら、定期的にダイヤ改正で対応していくしかないのではないだろうか。
政策の重点は、少子高齢化に対応した市民レベルの施策の実行と市財政の再建にある。いつまでも、BRTにかかずらって市政の停滞を招く愚は避けたいところだ。