交配に挑戦してみましょう!
2月は逃げ月と言いますが、3月もどんどん過ぎていきます(笑)。
パンジー・ビオラの交配をして、種が熟すのは約30日。
ですので、逆算して交配が出来る日を割り出さなければなりません。宮崎の春は短く、これから一気に初夏へ向かうので株の老化も早い。種が確実に採種できるのは4月いっぱいです。
ですので、宮崎での交配は今月中に終えなければなりません。
と、言うわけで今回は交配の方法をご紹介しましょう!
交配には2通りがあり、それは「自家受粉」と「他家受粉」です。
「自家受粉(セルフ)」は、一つの株の中で受粉が完了するもの。「他家受粉」は2つの株の間で交配を行うものです。
では、どのように使い分けるかと言うと、「自家受粉」はその株を再現したい(固定化)、その株の特徴をさらに引き出したい場合に行います。
「他家受粉」は、新たな花を創り出す場合に使います。
交配自体は、花粉を雌しべ(柱頭)につけるだけの行為ですので難しいものでは全くありません(笑)。
今回は、「自家受粉」を行います。
パンジーの花弁は5枚、その中心にあるのが雌しべでその先端に「穴」があると思います。
ここが柱頭です。ここに花粉を付けるだけ!
ちなみに花はROKA育成のベイン模様の‘古日々’で、セルフはこの品種の維持(固定化)と上弁にまではっきり網目模様の入ったものを選抜するために行います。
では、花粉はどこにあるかと言うと、その雌しべの下、唇弁の奥にあります。
それを掻き出すのに私は目打ちを使っていますが、爪楊枝でもピンセットでも構いません。
目打ちの先をご覧ください。花粉が乗っています。
それを柱頭へ!
ここで激しく突っ込むと柱頭を痛めてしまいますので、内側に軽くくっ付けるイメージで行ってください。
受粉が終了したら、花弁を全て外します。
これは虫などの交配を避けるためと、これから湿度が高くなると花弁がカビてくる場合があるのでそれを避けるためです。
全て花弁を外した状態。
付箋に交配した日と「他家受粉」の場合は花粉親を書いておきます。
この場合は、「自家受粉」ですので「セルフ」と書きました。
それを交配した花茎にホチキスで止めておきます。
付箋の糊だけでは外れてしまう場合がありますので、ホチキスを使用。付箋は30日程度であれば、十分持ちこたえますが、完熟にそれ以上かかるものや激しい雨に当たるような屋外などでの使用には不向きです。その際には、マスキングテープなどの耐用性のあるものを使ってください。
受粉がうまくいくと、1週間もすれば膨らんできます。その膨らみがないようであれば、失敗。新たな花で挑戦してください。花の数だけは交配はできますので(笑)。
さて、「他家受粉」の組み合わせの考え方ですが、およその傾向として、花の大きさ、形は両親の中間になります。ただ、色は絵の具を混ぜ合わせる要にはいきません。これが難しいところ。
左:古日々、右:ネットワーク
どちらもイエローベインですので、この中間の大きさになります。ブロッチは小ブロッチの有る無しに分かれるでしょう。
左:古日々、右:フリズル・ブルーソワール
花大きさはこの中間、花弁の揺れはウェーブ程度に、花色はイエローからブルーを帯びるものまでのシェード。
これらの組み合わせは、簡単にイメージできると思います。ただ、簡単にイメージできるだけに面白みには欠けます(笑)。
でも、先ずはここが基本ですので、その再現を確実に行ってみてください。
左:古日々、右:福田系ブロッチ覆輪ベイン
右は、福田さんのブロッチ覆輪の中にあった個体、うっすらとベインが見えます。
花の大きさはこの中間でややフリル、ベインは残りますがピコティが現れそう、花色はローズが薄くなるかイエローか、それはやってみないと分かりません。
左:古日々、右:Kim系満天
ベインとブロッチは関連があり、ベインを出したいときにはブロッチがあるものを選ぶとベインの再現がしやすいです。
花弁はやや丸に近づき、覆輪のあるベインになりそうです。
左:古日々、右:パシオ・ブルーブロッチ
花はだいぶ大きくなり、ブロッチ崩れのベインになると思います。花色はクリームか、ブルーでしょう。
とにかくいろいろな組み合わせを行ってデーターを取っておくと、このような組み合わせのイメージが出るようになります。
ちなみにインスタグラムで交配の動画をUPしましたので、よろしければご覧になってください!
⇒川越 ROKA(@crinumjaponicum) • Instagram写真と動画
おまけで、インスタで使った‘小春’の交配組み合わせの考え方は
左:小春、右:こうめももか
花の大きさにはさほど変化なし、こうめももかはラベンダーが強いので、花色はラベンダーに傾くと思います。
小春はやや茎が伸びますが、こうめももかはコンパクト。これは花色も含めて株の形状の改善です。
株が暴れるような個体は、市販品種を使うと株の形状を整えることができます。
左:小春、右:プチグレース
やや明るめのパープルでピコティ狙いです。
左:小春、右:恋もも
花の大きさは中間でウェーブ程度の揺れ、淡いピンクになると思います。
万人受けする花色花型狙いですが、狙いすぎてこれも面白みがありません(笑)。
左:小春、右:メヌエットスリジェ
メヌエットスリジェはあーしろうさん育成の濁りのない綺麗なピンク。花は小さくなりますが、いい色合いのピンクの花が出来ると思います。これはなかなかいい組み合わせです(笑)。
さて、育種は今ある市販品種、個人育種の花を使わせていただくしかありません。
個人育種の花は登録されているものはほぼありませんが、その分その花を育成した方、花に対してリスペクトをもって接することが重要です。
また、育種は人と同じものには価値がありません。
ですので、その方とは同じデザインのものは出さないというのが作法です。
使わせていただいた方の花の良さを理解し、それを超える良さを引き出すという姿勢で育種に取り組んでください!(笑)