2014-01-30 08:00:00

シャーロック・ホームズ特集 Vol.7 グレート・ケース~Great Case~

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

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Happy Birthday Sherlock!
パンカーダ2014年1月の特別企画

Sherlock Holmes & Victorian Furniture
シャーロック・ホームズとヴィクトリア家具

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1854年1月6日が誕生日である*かの名探偵へ敬意を表し、
小説の中に登場する家具を推理・紹介していくシリーズ。


いよいよ最終回です!


Vol.7 グレート・ケース ~a great case ~


1925年 高名な依頼人(the Illustrious Client)より




ホームズの命を受けたワトソン博士がグルーナー男爵の邸宅に乗り込み、
男爵の趣味である中国の陶器を見せるシーン。
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He was standing at the open front of a great case which stood

between the windows and which contained part of his Chinese collection.
He turned as I entered with a small brown vase in his hand.

男爵は窓の間にすえた、中国関係のコレクションの一部を

飾ってある大きな戸棚の戸を開けてその前に立っていたが、

私が入ってゆくと茶色の小さな壺を手にしたまま振り返った。

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続けて、同短編の中で男爵に恨みを持つ女性が、

ホームズに男爵の家の様子を語るシーン。
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「The outer study is the one with the Chinese crockery in it
-- big glass cupboard between the windows.」

「表の書斎というのは、中国の陶器を飾った部屋で、
窓と窓の間に大きなガラスの戸棚がありますが・・・」

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この二つの文章が指す家具は明らかに同じもの。

さて、「big glass cupboard」であり、「a great case」とは

どんなものだったのでしょうか?


悪の権化であるグルーナー男爵は、芸術を愛し、

特に中国陶器に造詣が深く、それについての著書まで出版していました。




その彼が自宅に置き、ご自慢の中国陶器コレクションを飾る「グレート・ケース」。
大きなガラスのカップボード、とも表現されるその家具は、おそらく

ガラス扉をもつチッペンデール・スタイルであったに違いありません。


トーマス・チッペンデール(Thomas Chippendale:1718-1779)は
18世紀を代表する、英国の家具職人であり、デザイナー。



彼のスタイルはゴシックリバイバルやロココなど、

様々な要素が盛り込まれていますが、
一番の特徴はシノワズリ(中国趣味)の大胆な取り入れ方でした。



17世紀半ばからヨーロッパに紹介され、ブームとなっていったシノワズリ。



18世紀にそのエッセンスをうまく取り入れて、

上流階級の家具へと展開させていったチッペンデール・スタイルは、
19世紀・ヴィクトリアの時代になっても人気を保ち、

多くのキャビネットメーカーがそのスタイルを踏襲していました。





パンカーダには、まさにそのシノワズリのチッペンデール・スタイルを体現した

キャビネット がございます。




最高級のマホガニーを使用し、凝ったカーヴィングと

美しいべベル・グラスをもつ至高のキャビネット。




受ける印象はまさに「Great」。



中国陶器を愛した趣味人で富豪のグルーナー男爵が、

表の書斎を飾るにふさわしい家具としておくのにふさわしいのです。


このキャビネットの推定製造年代は1900年代。

メーカーは「Hampton&Son」。
ロンドン・Pall Mall Eastにあったとされるキャビネットメーカー。



シャーロックの兄・マイクロフトの自宅とクラブが、

道の延長線上のPall Mallだというのもちょっと不思議な因縁のような気がします。


素晴らしいキャビネットに、魂を売ってもよいような最高のコレクションを納めて。



ゆっくりその空間を愛でながら、ふと振り返れば、
ガス灯の光に照らされたワトソン博士が見えてくるかもしれません。





現実と架空、時間と空間を超える体験を、ぜひこの家具と共に見つけてください。



by N



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シャーロキアンの皆様へ

*誕生年月日には違う説もございます。
*家具に関して、もし小説の他の部分において、
異なる描写がございましたら、大変申し訳ございません。
その際はお手数ではございますが、ご指摘いただきますと助かります。







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2014-01-25 08:00:00

シャーロック・ホームズ特集 Vol.6 蓄音機~gramophone~

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

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1854年1月6日が誕生日であるかの名探偵へ敬意を表し、
小説の中に登場する家具を推理・紹介していくシリーズ。



Vol.6 蓄音機~gramophone~


1921年 マザリンの宝石(the Mazarin Stone)より



宝石を盗んだ伯爵とプロボクサーを自室へ引き入れ、
窓辺に置いた蝋人形と蓄音機を駆使して、彼ら自身の口から
宝石の場所を言わせてしまうシーン。

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“Tut, tut!” Holmes answered.
“You are perfectly right. Let it play!
These modern gramophones are a remarkable invention.”

いや、たしかに変ですな。だがまあやらせておくんですな。
ちかごろ蓄音機というすばらしいものが発明されましたよ。」

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この作品が刊行されたのは1921年。

1888年から始まったホームズの活躍も、いつのまにか世紀を超えて
世の中はヴィクトリア女王の治世からエドワード7世を経て
ジョージ5世の治世となっておりました。


初めは人とのやりとりは、手紙もしくは電報。
(電報も配達員が届けていましたが)


それが徐々に電話も登場するようになっていきました。



世の中が急激に変わっていく時代。
ホームズも、当然その波に乗らざるを得ない状況です。


そして、蓄音機の登場。



蓄音機の始まりは1877年。


それまでに音を記録する、という装置は様々な形態が試みられていましたが、
始めて録音及び再生機械を作ったのは、アメリカのエジソン。


再生方法は針でしたが、記憶媒体の形状は今とは異なり、銅製の円筒形でした。

その後、ベルによって銅からワックスをかぶせた厚紙にかわったものの、
形状はやはり円筒形のままでした。


1887年にエミール・ベルリナー(ドイツ出身のアメリカの発明家)が
円盤状の録音媒体を回転させ、
その表面に螺旋(らせん)状に溝を刻む方式を提案しました。
これを用いる蓄音機をグラモフォンGramophoneとしました。




その後、様々なメーカーが蓄音機を生産し、
1920年代頃には、まだ珍しいながらも、一般の市民も
手に入れることが出来るようになっていました。



パンカーダには、ちょうどその少しあと、
1930年代の蓄音機 がございます。




らっぱを後でつける携帯型ではなく、
家にどっしりと置くキャビネットタイプ。


キャビネットの素材はオークで、しっかりと作られています。





ハンドルを回せば、ゆっくりとSPレコードが回転し、
電気を介さない音が流れ始めます。

音量をドアの開け具合で調整したら、肘掛け椅子に座って目を閉じてみましょう。


レコード、蓄音機、回転数、そして針。




全てがうまく噛み合った時には、まるですぐそこで
人が歌っているかのような錯覚に陥ることができる、という蓄音機。


ストラディバリを愛用する、ホームズのヴァイオリンの音色は
どんなものだったのでしょうか?



「マザリンの宝石」の蓄音機で使われた音楽は

「Hoffman ‘Barcarole’(ホフマンのバルカローレ)でした。




しのび泣くようなその音色を、蓄音機で流してみたら。


カーテンの後ろに、名探偵の気配を感じることができるかもしれません。


by N







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シャーロキアンの皆様へ

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*家具に関して、もし小説の他の部分において、
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2014-01-21 11:00:00

シャーロック・ホームズ特集 Vol.5 サイドテーブル~side table~

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

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Vol.4 サイド・テーブル~side table~



1893年 海軍条約文書事件(The Naval Treaty)より



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Holmes was seated at his side-table clad in his
dressing-gown, and working hard over a chemical
investigation.

ホームズは部屋着を着て、サイド・テーブルにむかって
何かの化学実験を熱心にやっていた。

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さて、この「side-table」とはどんな家具だったのでしょうか?


英国アンティークでは、細長い天板を持ち、壁につけて使う高さ75-85cm程度の

テーブルを「サイド・テーブル」と呼ぶことが多くあります。


同じようなサイズで「ライティング・テーブル」もしくは「ライティング・デスク」も

ありますが、その違いは天板に革が張ってあるかどうか。


ペンを使って書き物をするのであれば、あたりの柔らかい革が

張ってある方が使いやすく、便利なのです。





また天板が細長いフォルムで、木でできているものに

「ホール・テーブル」があります。



                   オークホールテーブル  1885年頃



こちらは文字通り玄関ホールに置くもの。


家の顔として、比較的高いクオリティのものであることが多く、

意匠性を重視するため、引き出しがある場合は、正面ではなく

脇についていることがあります。




さて、そんないろいろなテーブルがあるなかで、

あえてホームズが使っていたのが、サイド・テーブル。



サイド・テーブルは文字通り、部屋の中央のメインではなく、

玄関ホールの脇、壁側において手紙などを置いてみたり、
居間や食堂の壁側に置いてサイドボード代わりに使ってみたり・・・。

そんな役割を担うことが多いようです。


いろんな用途に使えるよう、天板は木製。


一段の薄手の引き出しが付く場合が多く、手紙や小さな文房具、

食卓周りのものなどを入れるのに便利なようになっています。


きっとホームズが使っていたサイド・テーブルは、
多少の傷などお構いなしにしっかりと実用に耐える

オーク材だったのではないでしょうか。


なにせその上で科学実験までやってしまうのです。



例えばこんなサイド・テーブル




がっしりとした天板。
使い勝手の良い引き出し。
座って使っても問題の無い高さ。

ベーカー街のそれほど広くない賃貸の居間でも
邪魔にならないほどほどの大きさ。




このジャコビアン・スタイルのサイドテーブルであれば、

その全てを満たすことが可能。



100年経った現代の日本でも、その使い勝手の良さは変わることがありません。


歳月を経てよりよい質感となったオークの天板。

その古艶(パティーナ)はいったい何を見てきたのでしょうか。


ヴィクトリアンの探偵が化学実験をしてみたり。
医者が手紙を置いてみたり。


味わい深い滑らかなオークに触れるほどに、

この家具を大切にしてきた人々の思いが伝わってくるようです。



その思いを継ぐのは、貴方なのかもしれません。



by N





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2014-01-18 11:00:00

シャーロック・ホームズ特集:Vol.4 肘掛椅子~an arm chair~

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Vol.4 アームチェア~an arm-chair~



1888年 緋色の研究(The Study in Scalret)より



ホームズと知り合い、同じ部屋に住むことになったワトソン博士が、
ホームズの性癖や習慣を描写しているシーン。

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Leaning back in his arm-chair of an evening,
he would close his eyes and scrape carelessly
at the fiddle which was thrown across his knee.

夕方になるとよく肘掛け椅子にもたれこんで、
眼をつぶって膝の上に横倒しにしたヴァイオリンを
そぞろに掻きならすことがあった。
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1890年 四つの署名(The Sign of the Four)より



冒頭、自室のマントルピースの前で寛ぐホームズが
自身にコカインを注射するシーン。
(ホームズは面白い仕事がなくて退屈すると、

コカインやモルヒネを摂取するという、
現代で考えればとんでもない悪癖がありました。)

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・・・Finally, he thrust the sharp point home,
pressed down the tiny piston, and sank back
into the velvet-lined armchair with a long sigh of satisfaction.

・・・やがて鋭い針をぐっと打ちこみ、小さなピストンを押しさげて、
ほうっと満足そうな溜息をもらしながら、ビロードばりの

肘掛椅子にふかくよりかかった。

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他の作品にも頻繁に登場するホームズの「arm-chair」。
いったいどんなチェアだったのでしょうか。


「四つの署名」においては、「the velvet-lined armchair 」と、
椅子の仕上げ生地についての表現があります。

そしてそこに座っているホームズは、多くの場合ゆったり寛いだり、
もたれこんだり、とぐろを巻いたり・・・。




そのことから、ゆったり座れるような大きさや作りをしている、
ベルベットで張られた椅子であることがわかります。


例えば、こちらのショーウッドチェア



推定製造年代は1885年。

ゆったりと広い座面、長く座っても疲れにくいボタン留めの背もたれ、

絶妙な高さとフォルムのアーム。



まさにホームズが暖炉の前で体を預けるのに最適です。



この椅子の生地はベルベットではありませんが、
ビロード糸とも呼ばれるふわふわとしたモール糸が使われたジャガード織。
手触りや見え方はまるでベルベットのようです。




室内履きを履いて寛ぐのもよし、広い座面の上で胡坐をかいてしまうのもよし。

体を癒しながら、深い思索に浸るのに最適なアームチェア。



貴方のただひとつの身体と、灰色の脳のために。


ホームズご愛用のヴィクトリアンのアームチェアを

用意してみてはいかがでしょうか。




by N







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2014-01-11 10:00:00

シャーロック・ホームズ特集:Vol.3 ディール・テーブル~a deal table~

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

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Vol.3 ディール・テーブル~a deal table~


1891年 赤毛組合(THE RED-HEADED LEAGUE)より



割のいい仕事を与えてくれた「赤毛組合」が突然無くなって途方に暮れた依頼者が
ホームズの部屋を訪ね、組合で行われた面接の説明をするシーン。

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"There was nothing in the office but a couple of wooden chairs
and a deal table, behind which sat a small man with a head
that was even redder than mine.

「事務所のなかには木の椅子が2脚ばかりと、
樅材のテーブルのほかにはなにもなく、そのテーブルにむかってすわっているのが
わたしよりももっと赤い髪をした小柄な男でした。」
*********************************************


この「deal table」とはどんな家具だったのでしょうか?


日本語訳では「deal table」は「樅(モミ)の木のテーブル」と訳されています。
確かに辞書をひくと、「deal」は古い英語で「モミ(マツ)」。
マツ材であれば、パイン材のテーブル、と解釈しても問題はなさそう。


そして、「deal」という言葉。


これは現代では「仕分ける・配る」という意味となっており、
この「モミ(マツ)」材を仕分けることがこの言葉の語源ともなっているようです。


ヴィクトリアンの家具としては、オークやマホガニー、ウォールナットなどの家具は
家の主やゲストむけの表舞台に使われ、メイドや子供たちなど用の家具とは

区別されていました。




家の裏舞台で実用的に使われていた家具は、エルムやパイン(モミ)など

丈夫で、使い込むほどにキズもまた味わいになるような材。




赤毛組合のオフィスに慌てて整えられたであろう家具として、
まさにこの「deal table」はうってつけのものであったに違いありません。


パンカーダにもまさにヴィクトリアンの「deal table(パインテーブル)」 がございます。





推定製造年代は1880年代。


こぶりながらも、ちょうど百科事典を広げ、そのわきで写しをとるのに最適なサイズ。

引き出しもふたつあり、ペンとインク壺も入れられます。




合わせて木の椅子を揃えて。
1890年代のキッチンチェア はいかがでしょう。




ディール・テーブルと2脚の木の椅子で

現代版赤毛組合のオフィスを気取ってみるのも面白いかもしれません。


きっと柔らかな天板の肌触りに、

久しぶりにペンを走らせてみたくなるのではないでしょうか?





by N


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2014-01-09 09:00:00

シャーロック・ホームズ特集:Vol.2 バスケット・チェア~basket-chair~

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

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Vol.2 バスケット・チェア~a basket-chair~


1892年 独身の貴族(the Noble Bachelor)より



消えた花嫁を探しているセント・サイモン卿が途方に暮れて
ベーカー街のホームズの部屋を訪れたシーン。

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"Goodday, Lord St. Simon," said Holmes,rising and bowing.
"Pray take the basket-chair.
This is my friend and colleague, Dr. Watson.
Draw up a little to the fire, and we will talk this matter over."


「よくいらっしゃいました、セント・サイモン卿。」と、
ホームズが立ち上がって会釈しながら言った。

「どうかそこのバスケット・チェアにおかけを。
こちらはぼくの友人で、協力者のワトソン博士です。
さあどうぞ、もう少し火のそばへお寄り下さい。
そのうえでゆっくりお話を伺います。」

*********************************************



1892年 青い柘榴石 (the Blue Carbuncle )より



モーカー伯爵夫人の失われた青い柘榴石と、

ガチョウをめぐる物語のなかで、犯人である気の弱いホテル

客室係を自室に連れ込み、話を聞き出し始めるシーン。

*********************************************

"Here we are!" said Holmes cheerily as we filed into the room.
"The fire looks very seasonabe in this weather.
You look cold, Mr. Ryder. Pray take the basket-chair.
I will just put on my slippers
before we settle this little matter of yours. ・・・」


「さあ、着いた!」ホームズが快活な声をあげたのは、
三人そろってどやどやと部屋に入ってからだった。

「火こそこういう晩にはうってつけのものだという気がするね。
ライダーさん、きみもずいぶん寒そうだ。
そこのバスケットチェアに座るといい。
いまちょっと室内履きに履きかえるから、
そうしたら落ち着いてきみのささやかな問題を話し合うとしよう。・・・」

***********************************************



さて、このバスケット・チェア(basket-chair)。

ホームズの居間に置かれ、どうやら暖炉の傍にあるらしいのですが、
いったいどんなものだったのでしょうか?



ヴィクトリア時代にはオークやマホガニー、そしてウォールナット等など、
ヨーロッパはもちろん世界中からクオリティの高い木が大英帝国へ運ばれ、
素晴らしい家具が多く生み出されておりました。


その一方で、インドなどの植民地から入ってきたデザインテイストも
新しい感覚として好んで取り入れられていました。



その代表的なものが、バスケット・チェア。


籐で編んだ家具は、軽く、体に合わせてしなり、

英国伝統のオーク材の重厚さとはまさに対極的。


英国からでたことがない多くのロンドン市民たちも、

南国の新世界の香りを楽しむことができたのではないでしょうか。


気軽に動かすことのできる椅子として

きっと多くの家庭が、居間に1脚は持っていたに違いありません。




そのなかでも、クオリティの高い1脚がパンカーダにございます。



推定製造年代が1870年代のアームチェア
構造材はビーチ、座と背はまさにバスケットのように編み込まれています。




日本では籐椅子は夏専用のような感覚もありますが、

凍えるようなロンドンでは、少しでも南国を思わせるバスケットチェアに座り

火のそばで寛ぐことが、体も心も温める

効果的な方法だったのかもしれません。


ゆったりとした広さ、
柔らかく体に沿う背と座面、
絶妙な位置にある、なめらかなアームの触り心地。




この至高の一脚は、
命令することに慣れた高貴な依頼人を座らせても、
罪の意識に震える小さな男を座らせても、
ホームズの会話術、ワトスン博士の誠実な双眸、
そして暖炉の燃える炎との相乗効果で、
誰もが心の内を話してしまうような座り心地であることは間違いありません。




貴方もぜひお傍に1脚、

ヴィクトリアンのバスケット・チェアをいかがでしょう。


ただその時は、あまりの座り心地の良さに
本音を話しすぎてしまわないようご注意を・・・・。


by N



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2014-01-07 09:00:00

シャーロックホームズ特集:Vol.1 スピリット・ケース~a spirit case~

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Vol.1 スピリット・ケース~a spirit case~


1891年刊行のボヘミアの醜聞( A Scandal in Bohemia )。




冒頭、結婚したワトソン博士がベーカー街を通りかかり、
久しぶりにホームズの部屋を訪れた時の様子を描いたものに
こんな部分があります。


*********************************************

With hardly a word spoken, but with a kindly eye,

he waved me to an armchair, threw across his case of cigars,

and indicated a spirit case and a gasogene in the corner

ほとんど無言のまま、それでも目には親しみ深さをたたえて、
私に肘掛け椅子のひとつを無言ですすめてくれたうえ、

葉巻入れを放ってよこし、さらに、酒瓶を並べたケースと、

片隅の炭酸水サイフォンを指し示した。

*********************************************


さて、この「a spirit case」とはどんなものだったのでしょうか?

残念ながらここの部分以外に、この家具は小説内には登場しないようです。
そして挿絵にも見当たりません。


わざわざ「a spirit case」と描写するからには、キャビネットでもなく、

トローリーでもない、きっといかにも度数の強い酒瓶を並べて

様になるような家具に違い無いのです。


例えば、このバーキャビネット。





上部は酒瓶を並べて絵になるガラス扉。
下には更なる酒瓶を詰め込んでおくための収納スペース。


そして、小さなギミックとしてのガラス引き出し天板。




ペルシャ・スリッパを煙草入れにしているホームズが好みそうな、
機能性と独創性が満載です。



推定製造年代は1890年代。

小説の舞台設定は1888年の3月20日ですが、

ドイルが執筆・発表したのが1891年ですから、
ホームズの居間に置かれていても、ちっともおかしくありません。


度々ホームズへの来客が文中で気を失ったり、

怪我のため具合が悪くなる時に登場する

ブランデーも、きっとこんなケースに入ったいたことでしょう。




スピリットとは、知性を湧き立たせ、深い思索にはいるために必要な、魂の水。



ヴィクトリアンの「スピリット・ケース」。


現代のホームズ氏用には、傍らには炭酸水サイフォンではなく

小型の冷蔵庫を置けば更に機能的に満足いくものに。




リビングの片隅に置いてバーコーナーとして。
書斎に運び込んで、ひとりディオギネス・クラブを気取って。


ヴィクトリアンの名探偵の魂の水、味わってみてはいかがでしょうか。


by N





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シャーロキアンの皆様へ

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2014-01-06 09:00:00

Sherlock Holmes & Victorian Furniture

テーマ:シャーロックホームズとヴィクトリアン家具

小説の世界で名探偵といえば・・・?



エドガー・アラン・ポーのC・オーギュスト・デュパン

アガサ・クリスティのエルキュール・ポワロ

レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ・・・・・・

そして、きっとより多くの人々が挙げるのが

シャーロック・ホームズ。



1月6日はそのシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)の

誕生日であるとされています。


彼は1887年から1927年にかけて、アーサー・コナン・ドイルにより発表された、
4つの長編と56の短編に登場する名探偵。


                      1887年発行 「緋色の研究」


生年月日については、本編中にはっきりした記述はありませんが

1854年1月6日とする説が有力。


この1月6日に誕生日を徹夜で祝ったともとれる

描写がある(恐怖の谷)ことから、多くの読者に支持されています。


           シドニー・パジェットによるホームズの肖像 1904年


・・・とすると、2014年1月6日はホームズ生誕160周年。


ホームズが活躍したヴィクトリアンの終わりから20世紀初頭にかけては
ちょうどパンカーダが扱う家具ができた時と同年代。



シャーロックホームズを読めば、まさにその時代、

英国の様式や習慣が手に取るようにわかります。


パンカーダではシャーロックの誕生日にちなみ、
コナン・ドイルのシャーロックホームズ・シリーズに登場する家具や小物を
それぞれのシーンに合わせてご紹介してゆきます。


原文とともに紹介する家具用語、パンカーダコレクションの推定製造年代、

ホームズの趣味やヴィクトリアンという時代。


そのすべてを統合して検討し、探偵よろしく家具を

推理・考察してゆくシリーズ。


どうぞこちら からご覧ください。







by N

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