大英自然史博物館展の内覧会に行ってきました。 | 化石の日々

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オフィス ジオパレオント代表のサイエンスライター 土屋健の公式ブログです。
化石に関する話題,ときどき地球科学,その他雑多な話題を書いていきます。

 

上野の国立科学博物館で開催されている「大英自然史博物館展」の内覧会に行ってきました。

公式サイトはこちら→ http://treasures2017.jp/

 

大英自然史博物館は、「ロンドン自然史博物館」などとも呼ばれるイギリスの博物館です。そのコレクション数は世界トップクラスと言われ、今回、日本をスタートとして、世界巡回が行なわれることになりました。

そのあたりの経緯、2016年10月の記者発表時にも記事に書きましたので、よろしければ、参考にされてください→ 2016年10月19日の記事

 

今回の企画展は、いつもにも増して「知っている人ほど楽しめる」企画展

予習推奨です。

このブログ記事でも最後に書籍を紹介しますし、また、いくつの標本については最近連載をはじめた「ビジネスジャーナル 」さんにも拙記事をアップする予定なので、ぜひ、参考にされてください。

 

さて、内覧会です。

今日の報道陣の数からして、さまざまな媒体で紹介されるでしょうから、古生物に特化していくつかピックアップしていきますね。

 

……の前に、まずは古生物じゃないけどこちら。

え? タコ? と思われたかもしれません。

こちらのタコは、なんとガラス製。そのリアルさたるや、ため息が出ます。

そんな素晴らしい標本が、入口のちんまりとしたエリアにあるので、見逃さないようにしてください。

 

そんな「見逃しちゃう系」が多いのが、今回の企画展の特徴です。

コアな方ほど楽しめます。たとえば、同じ入口エリアにあるこちらの標本。

展示プレートには「頭足類」という文字と学名、産地、時代(ジュラ紀)のみ。

多くの記者さんがスルー。「へえ、頭足類か」というくらい。

実にもったいない。

これ、ベレムナイト類という、中生代のジュラ紀と白亜紀に繁栄したコです。

頭足類ということは、イカやタコ、そしてアンモナイトの仲間になります。

ポイントは、触手!

多くの化石産地では残らない触手が化石として残っていています。しかも、そのあしに並ぶ“かぎ爪”も確認できるという逸品。

もう、「ふぉー!」ですよ。「ふぉ!」

こんな知る人ぞ知る興奮度上昇標本がたくさんあります。

 

こちらも多くの記者にスルーされていた標本。

植物食恐竜「イグアノドンの歯」です。

大英自然史博物館のイグアノドンの歯といえば!

医師ギデオン・マンテルによって発見された最初期の恐竜標本。

「恐竜」という分類名がつくられるのに一役買ったともいえる逸品。

 

ほかにも、化石婦人ことメアリー・アニングのコーナーがあり、

メアリー発見の魚竜化石がやってきていたり、

 

 

近代地質学の父ことチャールズ・ライエルのコーナーがあり、

ライエル収集の化石や、『地質学原理』の初版!がやってきていたりします。

 

そして、もちろん、ダーウィンの直筆原稿などもあります。

オーウェンのコーナーも。

イギリスの自然史学の偉人のみなさんがやってきている感じです。

ダーウィンの直筆原稿は、まあ、もちろん、有名なので「おさえておきたいポイント」ですが、メアリーやライエルをスルーというのは、実にもったいない。

……というか、来場者を試してる?という感じの展示です。

 

そして、やはり一番の目玉は、始祖鳥のロンドン標本!

ネガ・ポジのセット!

その質感たるや、サイコーです。

とくに骨のクオリティがスゴイ。

このあたり、「ビジネスジャーナル 」さんに執筆予定の記事でも詳しく書くつもりです。

 

標本でいえば、更新世のオオナマケモノ(Mylodon darrwinii)の毛皮なんぞもありました。

1.3万年前のものとのこと。オオナマケモノの毛皮というのは、なかなか珍しい展示と思います。

 

他にも、いろいろと「知っているからこそ楽しめる」標本がズラリ。

正直、内覧会の限られた時間では(担当さん、時間短いですって!)、すべてを楽しむことができませんでした。

個人的にも近々に再訪決定です。

 

そして、図録がスゴイ!

ハードカバーです。

写真も一級品。これは絶対オススメ!

 

もろもろの情報は公式サイトで→ http://treasures2017.jp/

 

この機会に、世界級の逸品をご堪能ください。

ちなみに、内覧会の時間は1時間ちょっとでしたが、撮影しながらとはいえ、まったく時間が足りませんでした。

お時間に余裕をもって行かれることを強く推奨します。

 

 

 

事前勉強にはこちらがオススメ。

絶対「知っている」方が楽しめます。そんな企画展です。

この機会にいろいろ、という方は、私の知る限りでの和書おススメ本↓

新版・図説 種の起源 ※解説も挿入されていて読みやすい。

メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋 (朝日選書) ※メアリー・アニングならこの1冊

世界を変えた地図 ウィリアム・スミスと地質学の誕生 ※地質図!

ジュラ紀の生物 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ)) ※拙著で恐縮ですが。始祖鳥やメアリー・アニングについての情報あり。

ピルトダウン―化石人類偽造事件 ※記事中では紹介しませんでしたが、標本が来ています。