疑心暗鬼を生ず | Pacific231のブログ -under construction-

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O, Mensch! Gib Acht! Was spricht die tiefe Mitternacht?


あるところに斧を失くした男がいた。男は隣家の息子が盗んだのではないかと疑いをもった。そう思って、隣家の息子の様子をよく見てみると、その歩き方からしていかにも斧を盗んだ者のように見える。顔つきも斧を盗んだ者のように見え、話し方も斧を盗んだ者のように見える。やること、態度すべてが、斧を盗んだ者のように見えた。
ところが、しばらくして、男が山の窪地を掘っていると、失くした斧が見つかった。そのあとに、また隣家の息子を見たところ、その動作、態度のどれひとつとして斧を盗んだ者のようではなかった。【列子・説符】

 

この章はことわざで言うところの「疑心暗鬼を生ず」というものである。疑う心があれば、たとえその人が斧など盗んでいなくとも、自分が疑う心を持って見ることで、その一々すべてがみな疑わしくなる。【沖虚至徳真経鬳斎口義】(※「列子」注釈書)
―― 以上、©中国故事街


棋界に起こった今度の事件の本質はここにある。
人間である以上、疑いの心を持つことは避け得ない。しかしそれは、できるだけ心の内に秘めておくものであって、軽々しく口外すべきことではない。ましてやゴシップ誌の記者にべらべら喋るなど言語道断である。彼等は真実などはどうでもよく、ただ売れさえすればいいのだから。

 

話にはあっという間に尾ヒレがついて、三浦九段の若い奥さんまで中傷する記事が出回ってしまている。連盟のほうはといえば、三浦九段が自ら進んでPC全台を提出したにも拘らず、全く調査の手を付けていないらしい。何も出てこないのが分かっているからとしか思えない。業を煮やした三浦九段側が専門家に解析を依頼したスマホからも、何も出なかったという。それやこれやで、告発者もいつの間にか壁の陰に隠れてしまった。しかし出場停止処分は継続したままである。

 

「信じることから始めよう」なんていう出来損ないのJ-POPみたいな安っぽいことを言うつもりはないが、なぜ三浦九段の当初の釈明に耳を傾けようとしなかったのか。なぜ屁理屈をこねて処分を下したのか。彼らには既に居もしない鬼の幻影が見えていたのか。

 

前にも書いたが、この件だけは絶対に灰色決着にしてはならない。疑われた側に「悪魔の証明」を求めるのではなく、何の証拠もない以上は潔白なのだという大原則に立ち還ること。そして公式な謝罪をもって三浦九段の完全な名誉回復を図ること。これしかないのだ。

 

 

挑戦者決定三番勝負で敗れながら、三浦九段の「出場停止」により繰り上がりで挑戦者となった丸山九段の言葉。
「(三浦九段との対局で)不審に思うことはありませんでした」

「発端から経緯に至るまで(連盟の対応は)疑問だらけです」

「僕はコンピューターに支配される世界なんてまっぴらごめんです」

「(連盟の決定には)個人的に賛成しかねますが、竜王戦は将棋の最高棋戦ですので全力を尽くします」
今度の事件で、この男気のある言葉だけが唯一の救いだ。