最後のAC投与から10日目、朝起きたとき、少しだけスッキリする感じがあった。6月から約三カ月、やっと、長く苦しいトンネルに光が差した。

 

 

 

 

 とはいえ、痛みや違和感は体のあちこちで続いている。特に気になるのは患部と子宮のズキズキとした痛みと、毛根のむずがゆさ。動くとすぐに疲れるのも、さほど改善はない。それらがこの日を境に、だんだんとラクになってくるようだった。

 

 

 

 

 ある日、夫がお好み焼きを焼いてくれた。ホットプレートではなく、フライパンでお好み焼きを焼いてくれるのがなんだかおもしろくて、調子づいた私は、よし、仕事をしよう、と思った。いったんやりたくなるとすぐに火がつく私は(B型です)、上半期の売上をまとめ、こまごまとしたスケジュールを確認して次の動きを決め、とめていたメールの幾つかに返信をした。新規のお客さんやデザイナーさんとの打ち合わせを、無理のない程度に予定へ組み込む。

 

 

 

 

 このときの日記にこう書いている。「8月27日 人に会いたい、仕事したい、笑いたい」。
 
自分自身に言い聞かせるように、手が勝手に動いてそう書いていたのを、よく覚えている。

 

 

 

 日常は、そのような感じで取り戻されていった。

 

 

 

 

 そして…奇跡

 

 

 

 8月31日。忘れもしない、あの日。エコー結果を見た尾田平先生は言った。

 

 

 

 

 

 

 最初に尾田平先生から知らされたPET結果は、「乳がんステージⅡb、大きさ4.7センチ、ki67(※)=87%」
 4.7センチ、つまり47ミリだった腫瘍。
 AC投与後には19ミリに縮小していた…!

 

 

 

 

 こんなことがあるんだろうか。神様に初めて頑張りを認められた気がして、なんともいえない感情がこみあげてきた。それは複雑すぎて言葉にはできないけれど、「今日からがん患者」と奈落の底に突き落とされたあの日からずっと感じることができなかった肯定感、まだまだ小さくて弱いけれどもまぎれもない「ポジティブな感情」だった。

 

 

 

 

 

 

ストーリーを最初から読みたい方は 目次へ

 

みなさまの応援が励みになります。

にほんブログ村 病気ブログ 乳がんへ にほんブログ村 小説ブログ ノンフィクション(小説)へ

 

via Pink Rebooorn Story
Your own website,
Ameba Ownd