倒産3ヶ月前の20億円配当金 - 武富士 - | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010.09.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
http://www.ox-standard.co.jp/
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◆ 目 次 ◆

【1】今号の一言 『日本振興銀行破綻の影響金額は133億円』

【2】本文      『倒産3ヶ月前の20億円配当金 - 武富士 - 』

【3】編集後記   『メルマガリニューアル』

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【1】今号の一言『日本振興銀行破綻の影響金額は133億円』
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2010年9月10日に破綻した日本振興銀行。
これを受けて、日本振興銀行の株や債権を保有する企業は、
“特別損失・債権取立不能のリリース”を行った。


【リリース概要】
<社名>    <証券コード> <市場><損失金額(億円)>
NISグループ     8571       東1    85.79
中小企業信用機構 8489       JQ     18.536
インデックスHD   4835       JQ    8.6
ニッシン債権回収   8426       MO    3.94
中小企業投資機構  2318       HC    3.49
シノケングループ  8909       JQ    3.35
ラ・パルレ       4357       HC    3.35
マルマン       7834       HC    3.35
レカムHD       3323       HC    2.32
ジアース       8922       JQ    1
C&IHD        9609       東1   0.14
                   合計 133億円


<市場>東1=東証1部、ヘラクレス=HC、
ジャスダック=JQ、マザーズ=MO

【リリース詳細】
$OX理論が測る企業価値
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100930/nihonshinkou.pdf



損失金額を単純合算すると約133億円である。

日本振興銀行の破綻によって、企業への直接的な“実害”として133億円が発生した。
株式の下落等を考慮すれば、その額は200億円を下らないだろう。


企業存続の観点で考えると、この実害に対する耐久力があれば、何も問題はない。
しかし、耐久力がない企業は、外部からの支援が必要だ。
もし支援を得ることができない場合、それは“破綻”を意味する。


それでは、本文をお楽しみください。


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【2】『倒産3ヶ月前の20億円配当金 - 武富士 -』
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【報道概要】
2010年9月28日、株式会社武富士【東証1部:8564】は会社更生法(DIP型)を申請した。

消費者金融業界のトップ企業だったが、ジャーナリストへの盗聴事件や格付けの引下げ、
改正貸金業法の影響によって、業績悪化。過払い金返還請求の高止まりもあり、自主再建を断念。



---- 分析情報 ----

【会社概要】
社  名      株式会社武富士
市  場      東証1部
証券コード     8564
業  種      消費者金融
従業員数     2,030人(連結)
所在地       東京都新宿区西新宿8-15-1
監査法人      新日本有限責任監査法人
破綻日       2010年9月28日

【OX理論】
OX格付       B 【20】(2010年3月連結決算)

【分析表1・7】
$OX理論が測る企業価値
$OX理論が測る企業価値
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100930/takefuji_analysis.pdf

【解説】
2008年(決算書2007年度)から、OX理論では20点と評価。
OX理論の危険水準を示す40点以下であることから
3年前から「資金繰り破綻リスクが高かった」と言える。

評価が低い理由は、経常活動における収支の悪化だ。
現金の“イン”よりも“アウト”が多過ぎた。
その結果、OX理論のコメントにおいて、
「資金収支が悪く1年以内の破綻の恐れあり」
と出力されている。

---- 終了 ----



【倒産3ヶ月前の配当金決議】
各種ニュースにて、武富士の倒産報道がなされた9月26日、
武富士の開示情報を閲覧していると2010年6月29日の株主総会において
興味深い決議がなされていた。


第43期期末配当金は、1株につき15円。
その効力発生日は2010年6月30日




【考察】
倒産3ヶ月前に期末配当金の決議」に違和感を感じるのは、私だけではないだろう。


武富士のHPによれば、倒産理由は下記の通りである。
①営業貸付金の減収に伴う利息収入の減少
②貸金業界を取り巻く事業環境の悪化による新たな資金調達手段の制約
③過払い金返還による資金流出の高止まり

①②③により、「資金繰りが破綻することが必至な状況だったため、
会社更生法を申請した」とある。



株主総会の時点(3ヶ月前)では、
「資金繰りが逼迫しておらず、配当金を支払うことに問題はない」
という“高度な経営判断”があったのだろうか?



しかし、株主総会以前より、社債の償還等に備えて
“過払金返還の先送りや減額”を依頼していたことは間違いない。

また、新日本有限責任監査法人による監査報告書においても
「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」が
指摘されており、資金繰りが厳しいことは衆目の一致するところだ。

それゆえ、一般的な感覚からは、「配当金決議」という
高度な経営判断”を理解できない。



【同業他社の配当金】
では、同業他社の配当金は、下記の通りである。

<社名> <証券コード> <市場><配当>
アコム    8572     東1    1株につき5円
プロミス   8574     東1    1株につき10円
アイフル   8515     東1    なし
(事業再生ADR)

アイフルは事業再生ADRが成立し、再建中である。
その他の2社は、銀行系であり、経営基盤に厚みある。
武富士は、独立系で資金繰りに窮しているが、
同業他社以上の配当金(1株当たり15円)を支払った。




【配当金の行方】
なぜ、資金繰りが厳しいにも関わらず、総額20億円近い配当金を支払ったのだろう。

それは、配当金を支払うことによって、莫大な利益を得る人がいるからと考えるのが
自然な思考ではないだろうか。


<株主別の配当金>
<持株数(単位:千株)><配当金(単位:千円)>※2
株式会社大央 ※ 7,746       116,190
丸武産業有限会社 ※ 7,459       111,885
武井健晃 ※     6,941       104,115
ノーザントラストカンパニー  6,627       99,405
武井博子 ※         4,927       73,905
武井俊樹 ※         4,866       72,990
ザバンクオブニューヨーク   4,650       69,750
有限会社ブルジャンプ ※   1,827       27,405

武井氏グループ合計     35,626       534,390

※  故武井保雄氏の親族及びその関連者。
持株合計は35, 626千株(持株比率26.41%)。

※2 1株当たり15円の配当金で計算。
(中間配当を合わせると年間配当は30円)

参照元:2010年6月9日リリース『第43回定時株主総会招集ご通知』


<株主別の配当金(詳細)>
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100930/haitou.pdf
$OX理論が測る企業価値

武井氏グループへの配当金は約5億円である。
“正当な手続き”によって得た5億円だが、その3ヶ月後に会社は倒産した。
そして、創業家の代表取締役副社長の武井健晃氏は退任した。
創業家は、“正当な手続き”によって得た5億円を保有し続けるのだろうか?



【総括】
武富士は会社更生法手続きによって、債権者の金融機関や
過払い金返還請求者に対して、債務減額や免除を要請する。

しかし、「借りたお金を返すのは当たり前」の業界において、
武富士が「借りたお金を免除してください」とお願いする姿は
皮肉に満ち満ちている


せめて、創業家は配当金の受取りは辞退するか返却し、
少しでも債権者の負担を和らげることが必要ではないか?
(そうでもしなければ、債権者は法的手段に訴えるだろう。)


一方、武富士や日本振興銀行といった金融機関の破綻は、
企業の資金調達先の減少を意味する。

よく、お金は人間で言う“血液”に例えられるが、
経済における血液循環ポンプである金融機関の破綻は、
“貧血企業”を大量発生させる。

9月末から10月下旬は、有数の倒産集中時期である。
そのことを十分に踏まえて、融資先、投資先、仕入先、
取引先の動向に注意が必要だ。


《参考:月別(上・中・下旬)上場企業の倒産分布》
・上場倒産企業の倒産月(上・中・下旬)ごとの調査結果
(2002年から2008年5月末日までの倒産企業にて集計)
$OX理論が測る企業価値
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/default-monthly2.pdf


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【3】編集後記 『メルマガリニューアル』
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今号からメールマガジンのフォームをリニューアルした。
自分で言うのも何だが、「外見はキレイになった」と思う。
地味にメルマガ配信をしていた2004年のフォームと比べたら
格段に進化した。

一方、「肝心の中身も変えよう!」と思っている。
今号のような“分析編”とともに、
会計や法規制等を記載した“解説編”を始めたい。

それゆえ、次回以降のメルマガは、
メールの“件名”から内容の区別が付くように下記の通り変更します。


≪現在≫
【OXメルマガ】

≪今後≫
【OX(分析)】
→ 企業の分析や解析、所管を掲載

【OX(解説)】
→ 会計基準の解説を掲載

【OXメルマガ】
→ 上記に2つに当てはまらないもの掲載


“解説編”を始めることによって、「配信回数も増やすぞ!」
という意気込みは有しています。

しかし、私の経験上、あまりメルマガの配信数が増えるのも、
受信する側も迷惑・・・でしょう。
また、配信数と反比例して、メルマガの質も低下する恐れもあります。

それゆえ、程々に配信数を増加させる所存です。
今後も変わらずお付き合いください。


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