━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010.4.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
日本インターで見る現金“創出力” <編集:HNW>
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『審査モラトリアム』
お取引先から示唆に富んだお話をいただいた。
概要は下記の通りである。
「今年一年は、審査部にとってモラトリアムだと思っている。
信用保証協会の保証付融資、政府支援、中小企業金融円滑化法
などで、一時的に倒産件数は減る。
しかし、借りたものは返さなければならない。
さすがに、来年は民主党もお金がないでしょう(政府支援も終息)。
そう考えると今年の6月から8月にかけて入手する
2010年3月期の決算書の分析が重要になる。
分析結果に基づいて、早めに手を打たなければ
来年は痛い目に合うことになりそうだ。」
景気の行方や政府方針を踏まえて企業を審査する姿勢に
感銘を受けた。
一方、5年前にはこんな話をよく耳にした。
「中国は北京五輪、上海万博が終わるまでは
経済成長を続けるでしょう。
だから、今は中国へ積極投資しても問題はない。」
明日から上海万博が始まるが、2010年10月31日に閉幕する。
万博終了後、中国がどんな姿に変貌するのか、要注目である。
それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。
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日本インターで見る現金“創出力”
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オックススタンダード(株)
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【報道概要】
東証1部上場のダイオードなど半導体製品製造の日本インターは、
4月26日付で事業再生ADR手続を申請、同日付で受理された。
今後は取引金融機関に対し債務の株式化を
柱とした金融支援を要請する方針である。
---- 分析情報 ----
【会社概要】
社名 日本インター株式会社(東証1部上場 )
証券コード 6974
業種 整流素子主体の半導体メーカー。
従業員数 774名(連結)
所在地 神奈川県秦野市曽屋1204
監査法人 海南監査法人
ADR申請日 2010年4月26日
【OX理論で分析】
OX格付 BB 【21】(2009年3月連結決算)
【分析表1・7】
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100430_nihoninter.pdf
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【現金“創出力”】
企業の資金繰りは、現金“創出力”によって左右される。
現金“創出力”とは、要はキャッシュフローである。
企業審査においては、対象企業が何によって
(営業活動、投資活動、財務活動)現金を創出しているのか
知る必要がある。
【キャッシュフローの分類】
大まかにキャッシュフローの3カテゴリについて解説する。
①営業活動
通常の営業活動によって生み出される現金である。
この営業活動によって現金収支がマイナスの場合は、
“本業で現金を創れない会社”である。
マイナスとなる原因は、単純だ。
1.売上の減少
2.コストの増加
②投資活動
有形固定資産・有価証券・貸付金の売買によって
生み出された現金である。
通常は、名前の通り、投資であるため
現金は流出する。
そのため、現金収支はマイナスである。
プラスとなっていた場合には、
どんな資産が売却もしくは回収されてプラスと
なったのか確認が必要だろう。
③財務活動
借入金、増資によって調達された現金の収支である。
通常、①と②の活動を合計したもの(フリーキャッシュフロー)が
プラスで、且つ大規模な設備投資の予定がないならば、
財務活動によって現金を調達する必要はない。
しかし、多くの業績悪化企業は、財務活動によるキャッシュフロー
(銀行借入、増資)によって、資金繰りを維持している。
【日本インターの場合】
2006年までは本業で約30億円近いキャッシュを生む力があった。
しかし、2007年以降は、フリーキャッシュフローがマイナスとなり、
財務活動によるキャッシュフローによって、会社を維持している。
<キャッシュフローの推移>
〔フリーキャッシュフロー〕 〔財務活動〕
2007年 -43億円 36億円
2008年 -3億円 34億円
2009年 -16億円 16億円
<キャッシュフロー推移図>
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100430_nihonintercashflow.pdf
日本インターは、ADR申請において取引金融機関に対し
債務の株式化を要請する予定である。
2010年2月16日リリースの第59期第3四半期報告書によると
借入金は115億円となる。
これが全て株式化されれば、一気に財務活動による収支は好転する。
ただ、資本金40億円の会社が、その倍以上の金額で
債務の株式化を実施した場合、株式は希薄化し一株当たりの
価値が減少する。
法的には問題ないのかもしれながいが、
釈然としない印象を感じるのは私だけではないだろう。
【総括】
信用保証協会の保証債務残高は、2010年2月の段階で
35兆円である。(2007年までは30兆円以下だった)
<信用保証実績の推移>
http://www.zenshinhoren.or.jp/information/shinyohosyojiseki.pdf
信用保証協会付きの融資によって資金調達した企業は、
事業を再建し本業によって現金を創出することができるように
なったのだろうか。
それとも、融資や資産売却、
個人としての借入(6月には改正貸金業法の完全施行で
年収の3分の1しか借りることができない)を行わないと
資金繰りを維持できないのだろうか。
2008年以降、信用保証協会の代位弁済の金額は
急激に膨らみ1兆円を超えた。
本業よりも財務活動による現金“創出力”に依存する企業は
減りそうもない。
※
<代位弁済とは>
金融機関から信用保証協会の保証つきで
借りた債務を返済できない場合、
金融機関に代わって信用保証協会が債務者等に対し、
弁済を求める制度。
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【編集後記】
仕事において、”効率”を考えて、事にあたっている。
その結果として、事務能力は向上した・・・と思う。
だが、「これではイカン!」と思い始めた。
業務の効率を高めるだけでは、自己満足の域を出ない。
効率を高めて、空き時間を確保し
何かをクリエイト(製作)しなければ全く意味がない。
最近の私は、”効率化すること自体”が
目的になっていた気がする。
明確な目標のもとに、何かを製作する活動に
時間を費やさなければならない。
“効率化地獄”から脱却し、生産的な活動への投資を
加速しなければと思う日々です。
ちなみに、このメルマガ作成は
生産的な活動だと思っています。(HNW)
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<決算書の視覚化>
なかなか面白いサイトがあったので紹介します。
http://ris-mana.com/tousan-lab/
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発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/