大証2部上場のグレースが破産-子会社への借入金返済に窮す- | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2008.02.14
 オックススタンダードメールマガジン  『 S T A N D A R D 』
             
 大証2部上場のグレースが破産-子会社への借入金返済に窮す-
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 『SPA!』
 普段は手に取らない雑誌である。
 しかし、電車の中刷り広告で気になり、購入した。



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 07年の倒産件数は前年比17%増!
 アナタの会社は大丈夫?
 危ない会社のシグナル
 実録「倒産する会社」の予兆
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 比較的若いサラリーマンをターゲットとした雑誌で、
 『東洋経済』や『日経ビジネス』、『エコノミスト』が特集を組みそうな
 やや固いテーマを前面に押し出していることに、衝撃を受けた。

 内容も、読者層を意識した軟らかな文章だが、非常に興味深い。


 

 どちらかといえば、柔らかめの雑誌において、倒産という
 固いテーマで特集が組まれたことは、何を意味するのか?
 (特に何も意味はないかもしれないが・・・)


 

 倒産が、身近な現象になりつつあることを表しているのかもしれない。

 確かに倒産件数は増加している。
 それゆえ、倒産という事件を目の当たりにする人が

 多くなる可能性が高い。



 今年は、さまざまな雑誌で"倒産"という文字が踊ることに

 なるかもしれない。
 企業審査マンにとっては、非常に厳しい年になりそうだ。



 それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。


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 大証2部上場のグレースが破産-子会社への借入金返済に窮す-
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 オックススタンダード(株)   http://www.ox-standard.co.jp/
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 【報道概要】
 グレースは、首都圏で「サングレイス」のブランド名で

 分譲マンションを供給。
 2004年12月期には売上高約136億4,600万円を計上していた。


 

 しかし、耐震偽装や改正建築基準法施行のほか、販売価格上昇の

 影響などで業績が悪化。買収資金や子会社への転貸貸付金などを

 金融機関からの借り入れで賄ったために、財務内容は短期間に

 大幅に悪化。

 


 金融機関のスタンスが変化するなか、グループ企業間での

 資金操作も活発に行うなど、グループの動向に注目が集まっていた。

 同日、子会社の日東工営も民事再生を申請した。
 



 【会社概要】
 社名         株式会社グレース (大証2部上場 )
 証券コード      4790
 業種         持ち株会社(一般建築などの企業が傘下)
 従業員数      27名(連結251名)
 所在地        東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目50番11号 明星ビル
 監査法人      トーマツ



 【破綻情報】
 破綻日        2008年2月12日 自己破産
 負債総額      約203億円



 【OX理論で分析】
 OX格付       BB 【33】(2006年12月連結決算)




 【破産申立て理由:HPより抜粋】
 <グレース>
 金融機関及び子会社である日東工営株式会社から
 借り入れを行い、一部グループ会社への融資を行ってきましたが、
 業績の悪化により、当該グループ会社から貸付金の返済を受ける
 ことができず、資金繰りが悪化したため、平成20年2月12日に
 予定されている金2億円の返済資金を手当することができません。



 同日第1回目の手形不渡りを出す予定ですが、
 弊社は持株会社であり単独で収益は上げられないところ、
 資金調達ができず、支払不能に陥りました。




 <日東工営(子会社)>
 日東工営株式会社は、弊社に対して貸付を行っているところ、
 弊社の破産手続開始申立により、日東工営株式会社も、債務超過及び
 支払不能のおそれがあります。



 【倒産までの流れ】
 ①グレースは、子会社である日東工営から借りたお金を
  藤栄建設などの子会社へ貸し出した。

 ②しかし、子会社が業績悪化(改正建築基準法の影響等)し、

  返済が滞った。

 ③その結果、グレースも資金繰りに窮し、子会社の日東工営に

  返済ができなくなり、破綻した。

 ④日東工営も親会社への焦付きが発生し、民事再生を申請した。



 ※
 日東工営とグレースの親子関係が逆転しているように見える。




 【時系列でみる倒産までの流れ】
 ≪資金の流れ≫→ http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/grace.gif
 
 2004年8月 グレースが純粋持ち株会社に移行

 

 2006年2月 グレースが三井農林から日東工営を約13億6000万円で買収

 

 2006年?月  グレースが子会社である日東工営から借入れ?
         ※ 日東工営のBSには2006年になって
            14億円の短期貸付金が登場。
            グレースへの貸付か?

 

 2007年8月 グレースが大川トランスティルの鉄骨・金属事業
         (現:大川スティール)を10億円で買収

 

 2007年11月 グレースの社長が稲川氏から高山氏に
         稲川氏は会長就任

 

 2008年2月 グレースが自己破産

 

 2008年2月 日東工営が民事再生申請




 【考察】
 〔1〕13億円で買収した企業から、14億円の借入?
  グレースは日東工営を13億6000万円で買収した。
  貸借対照表を見る限り、その日東工営から14億円の借入を
  している可能性が高い。

  ・キャッシュフロー上、グレースは4000万円のプラス。

   すでに投資リターンを得たのか?
  ・買収というよりも、グレースが日東工営の優良資産を強奪?



 〔2〕子会社の社長を親会社が兼務
  グレース     <会長> 稲川氏   <社長> 高山氏
  日東工営     <社長> 高山氏
  大川スティール <社長> 稲川氏
  藤栄建設     <会長> 稲川氏



  稲川氏は、2007年11月に会長に就任し、グレース副社長兼
  日東工営社長の高山氏がグレースの社長に就任。


  ・稲川氏と高山氏がグループを統括しており、
  グループ間における資金の流れも管理。


  ・優良子会社(日東工営)で資金を調達し、再建途中の子会社に資金を
  流すスキームが存在していたものと思われる。
 


 【今後の影響】
 ①グレースの子会社の破綻、その破綻に伴う連鎖倒産
 改正建築基準法の影響を受けている業界なので、

 体力が弱まっている企業が多い。
 それゆえ、倒産が連鎖する懸念がある。 



 ②大株主企業の業績悪化
 大株主として、ベスト10入りしている企業は下記のとおり。

 ・株式会社リプラス
 ・株式会社アービング
 ・株式会社大垣共立銀行
 ・EVISUJAPAN株式会社
 ・株式会社金山工務店
 (平成19年6月30日現在)


 リプラスは4.9%(1,300,000)の株を保有しており、株が紙切れになると
 すると1億6000万円(1株130円で計算)近い損失となる。
 

 ただ、破綻する前に大株主であるリプラスや大垣共立銀行に相談が
 あってもおかしくない。もしくは、相談できない事情があったのか・・。




 【誰が得するのか?】
 穿った見方で不謹慎かもしれないが、上場企業が破綻した場合、
 「この倒産によって誰が得するのか?」
 と考える必要がある。



 もちろん、倒産なので、得する人はそれほどいないが、
 何らかの思惑や意向が影響してるのは間違いない。



 審査する立場の人間は、登場するプレイヤーの立場になって
 それぞれのメリットを検証し、何が最も倒産の引き金となっているのか、
 どんなパワーが働いているのか、それに思いを巡らす必要がある。



 今回の破綻におけるプレイヤーは、グレース経営陣、大株主、
 金融機関、被買収企業である。



 さて、誰が得したのか(リスクを低減化したのか)?
 誰がキープレイヤーなのか?
 おそらく、今回は金融機関がキープレイヤーだったのではないだろうか!?



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 このメルマガ以外に、もう一つメルマガを立ち上げようと思っている。

 まだ、素案だが、企業分析に関わるさまざまな手法を実用し、
 日々起こる事件(不祥事、M&A、倒産)を題材にして、
 デイリー(できれば)で分析情報を配信したい。


 ただそうはいっても、私は営業職でもあるため、あまりメルマガに時間を
 割くと、社内から厳しい視線を浴びる可能性があるのだが・・・。(HNW)
  


発行元 オックススタンダード() http://www.ox-standard.co.jp/