━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2008.02.14
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
大証2部上場のグレースが破産-子会社への借入金返済に窮す-
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『SPA!』
普段は手に取らない雑誌である。
しかし、電車の中刷り広告で気になり、購入した。
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07年の倒産件数は前年比17%増!
アナタの会社は大丈夫?
危ない会社のシグナル
実録「倒産する会社」の予兆
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比較的若いサラリーマンをターゲットとした雑誌で、
『東洋経済』や『日経ビジネス』、『エコノミスト』が特集を組みそうな
やや固いテーマを前面に押し出していることに、衝撃を受けた。
内容も、読者層を意識した軟らかな文章だが、非常に興味深い。
どちらかといえば、柔らかめの雑誌において、倒産という
固いテーマで特集が組まれたことは、何を意味するのか?
(特に何も意味はないかもしれないが・・・)
倒産が、身近な現象になりつつあることを表しているのかもしれない。
確かに倒産件数は増加している。
それゆえ、倒産という事件を目の当たりにする人が
多くなる可能性が高い。
今年は、さまざまな雑誌で"倒産"という文字が踊ることに
なるかもしれない。
企業審査マンにとっては、非常に厳しい年になりそうだ。
それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。
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大証2部上場のグレースが破産-子会社への借入金返済に窮す-
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オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/
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【報道概要】
グレースは、首都圏で「サングレイス」のブランド名で
分譲マンションを供給。
2004年12月期には売上高約136億4,600万円を計上していた。
しかし、耐震偽装や改正建築基準法施行のほか、販売価格上昇の
影響などで業績が悪化。買収資金や子会社への転貸貸付金などを
金融機関からの借り入れで賄ったために、財務内容は短期間に
大幅に悪化。
金融機関のスタンスが変化するなか、グループ企業間での
資金操作も活発に行うなど、グループの動向に注目が集まっていた。
同日、子会社の日東工営も民事再生を申請した。
【会社概要】
社名 株式会社グレース (大証2部上場 )
証券コード 4790
業種 持ち株会社(一般建築などの企業が傘下)
従業員数 27名(連結251名)
所在地 東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目50番11号 明星ビル
監査法人 トーマツ
【破綻情報】
破綻日 2008年2月12日 自己破産
負債総額 約203億円
【OX理論で分析】
OX格付 BB 【33】(2006年12月連結決算)
【破産申立て理由:HPより抜粋】
<グレース>
金融機関及び子会社である日東工営株式会社から
借り入れを行い、一部グループ会社への融資を行ってきましたが、
業績の悪化により、当該グループ会社から貸付金の返済を受ける
ことができず、資金繰りが悪化したため、平成20年2月12日に
予定されている金2億円の返済資金を手当することができません。
同日第1回目の手形不渡りを出す予定ですが、
弊社は持株会社であり単独で収益は上げられないところ、
資金調達ができず、支払不能に陥りました。
<日東工営(子会社)>
日東工営株式会社は、弊社に対して貸付を行っているところ、
弊社の破産手続開始申立により、日東工営株式会社も、債務超過及び
支払不能のおそれがあります。
【倒産までの流れ】
①グレースは、子会社である日東工営から借りたお金を
藤栄建設などの子会社へ貸し出した。
②しかし、子会社が業績悪化(改正建築基準法の影響等)し、
返済が滞った。
③その結果、グレースも資金繰りに窮し、子会社の日東工営に
返済ができなくなり、破綻した。
④日東工営も親会社への焦付きが発生し、民事再生を申請した。
※
日東工営とグレースの親子関係が逆転しているように見える。
【時系列でみる倒産までの流れ】
≪資金の流れ≫→ http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/grace.gif
2004年8月 グレースが純粋持ち株会社に移行
2006年2月 グレースが三井農林から日東工営を約13億6000万円で買収
2006年?月 グレースが子会社である日東工営から借入れ?
※ 日東工営のBSには2006年になって
14億円の短期貸付金が登場。
グレースへの貸付か?
2007年8月 グレースが大川トランスティルの鉄骨・金属事業
(現:大川スティール)を10億円で買収
2007年11月 グレースの社長が稲川氏から高山氏に
稲川氏は会長就任
2008年2月 グレースが自己破産
2008年2月 日東工営が民事再生申請
【考察】
〔1〕13億円で買収した企業から、14億円の借入?
グレースは日東工営を13億6000万円で買収した。
貸借対照表を見る限り、その日東工営から14億円の借入を
している可能性が高い。
・キャッシュフロー上、グレースは4000万円のプラス。
すでに投資リターンを得たのか?
・買収というよりも、グレースが日東工営の優良資産を強奪?
〔2〕子会社の社長を親会社が兼務
グレース <会長> 稲川氏 <社長> 高山氏
日東工営 <社長> 高山氏
大川スティール <社長> 稲川氏
藤栄建設 <会長> 稲川氏
稲川氏は、2007年11月に会長に就任し、グレース副社長兼
日東工営社長の高山氏がグレースの社長に就任。
・稲川氏と高山氏がグループを統括しており、
グループ間における資金の流れも管理。
・優良子会社(日東工営)で資金を調達し、再建途中の子会社に資金を
流すスキームが存在していたものと思われる。
【今後の影響】
①グレースの子会社の破綻、その破綻に伴う連鎖倒産
改正建築基準法の影響を受けている業界なので、
体力が弱まっている企業が多い。
それゆえ、倒産が連鎖する懸念がある。
②大株主企業の業績悪化
大株主として、ベスト10入りしている企業は下記のとおり。
・株式会社リプラス
・株式会社アービング
・株式会社大垣共立銀行
・EVISUJAPAN株式会社
・株式会社金山工務店
(平成19年6月30日現在)
リプラスは4.9%(1,300,000)の株を保有しており、株が紙切れになると
すると1億6000万円(1株130円で計算)近い損失となる。
ただ、破綻する前に大株主であるリプラスや大垣共立銀行に相談が
あってもおかしくない。もしくは、相談できない事情があったのか・・。
【誰が得するのか?】
穿った見方で不謹慎かもしれないが、上場企業が破綻した場合、
「この倒産によって誰が得するのか?」
と考える必要がある。
もちろん、倒産なので、得する人はそれほどいないが、
何らかの思惑や意向が影響してるのは間違いない。
審査する立場の人間は、登場するプレイヤーの立場になって
それぞれのメリットを検証し、何が最も倒産の引き金となっているのか、
どんなパワーが働いているのか、それに思いを巡らす必要がある。
今回の破綻におけるプレイヤーは、グレース経営陣、大株主、
金融機関、被買収企業である。
さて、誰が得したのか(リスクを低減化したのか)?
誰がキープレイヤーなのか?
おそらく、今回は金融機関がキープレイヤーだったのではないだろうか!?
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このメルマガ以外に、もう一つメルマガを立ち上げようと思っている。
まだ、素案だが、企業分析に関わるさまざまな手法を実用し、
日々起こる事件(不祥事、M&A、倒産)を題材にして、
デイリー(できれば)で分析情報を配信したい。
ただそうはいっても、私は営業職でもあるため、あまりメルマガに時間を
割くと、社内から厳しい視線を浴びる可能性があるのだが・・・。(HNW)
発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/