ここがすごい!コーオウンド会社の事例①~W. L. ゴア&アソシエーツ(2) | 中小企業経営者の知恵袋

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1社目のコーオウンドの事例、W. L. ゴア&アソシエーツ(W. L. Gore & Associates「以下、ゴア」)のどこがすごいかというと、それは、ラティス組織とよばれる、いわゆるフラット組織にその特徴を見出すことができます。

 

それは、次の6つの特徴に要約できます。

 

①    あいだに人が入らず-人から人へと-じかに意志の疎通をはかる手段がある

②    職権が固定したり任命されたりしない

③    上司ではなく、スポンサー(後援者)が従業員を指導する。

④    リーダーシップは、フォロアシップ(指示されなくても必要なことを自発的に実行すること)なくしては成り立たない

⑤    目標は仕事を「作り出す」必要のある人が設定する

⑥    職務と役割は、かかわっていくうちに形成される

 

①、②の特徴は、先ほど述べたように、ゴアは、フラット組織であるため、管理職の層はなく、組織図もありません。このため、コミュニケーションのラインは直線的で、人と人、チームとチームを直につないでいます。階層型の組織では、職務権限・分掌が明確で、上や下に対して責任を負いますが、格子型組織では、人は上司のためではなく、同僚のために仕事をし、定められた手順を踏まなくとも同僚と協働することができます。

 

そして、これだけの大企業でありながら、社員が直接交流する機会をできる限り多くするため、研究開発のスペシャリスト、営業職の社員、エンジニア、化学者、機械工などが、通常は同じ建物で働き、基本的に200人以上に拡大しないようにしています。また、社員は電子メールに頼るのではなく、同僚と直接顔を合わせて話をするよう奨励されています。

 

③にスポンサーという言葉が登場しますが、スポンサーは、上司ではなく、いわば、ガイド、コーチ、教育係として、アソシエイトが組織内で成功するように手助けします。よって、ゴアでは、採用が決まったら、まずは、スポンサーを探さなければなりません。ゴアの従業員のうち、スポンサーを務めるスタッフは、約20パーセントで、どのアソシエイトにも最低1人のスポンサーがいます。ちなみに、スポンサー手当などなく、完全にボランティアだそうです。

 

‘④にあるように、ゴアには、ランクも肩書もなく、ヒエラルキーがないからといってリーダーがいないのではありません。ちゃんと、リーダーは存在し、プロジェクトは、リーダーを中心に進められます。しかし、経営陣から正式にリーダーが任命されるのではなく、社員は、同僚からリーダーと認められたとき、リーダーになります。

あるプロジェクトをスタートさせることになると、まず、会議を招集して、人々が集まってきたら、その人がリーダーとなります。つまり、自分の足で稼いでリーダーのポジションにつきます。

また、新製品や新企画を進める場合でも、人に受け入れられないと前に進まないため、協力者を得るために、他の人々を説得、仲間の目にとまるよう噂を広めたりしながら自分を売り込むことによってフォロアーシップを開拓していく形で進められます。

 

‘⑤、⑥にあるように、ゴアでは、仕事は、割当されるのではなく、自主的に進められます。このため、任務や責任範囲についても、仲間と交渉することになります。

また、すべての社員が週に半日、自由に使える「遊びの時間」を与えられており、その時間は-基本的は責務を履行している限りは-自分の好きなプロジェクトに充てることができます。この自由な時間が、イノベーションの源泉になっており、ゴア製品のブレークスルーに繋がっているようです。

 

次に、人事評価と成果主義ですが、すべての社員が年に一度、通常は少なくとも、20名の同僚から人事評価を受けます。そして、総合的な貢献度に応じて、ランキングされ、報酬が決定されます。もちろん、社員によっては、より多くの仕事に取り組むべきだというプレッシャーになるようですが、上司からプレッシャーではなく、チームメイトからのプレッシャーであることが、他の会社との大きな違いとなっているようです。

このように、ゴアの社員の給与に関しては、報酬に関しては、成果主義といえますが、ボーナスについては、プロフィットシェアされているようです。また、すべての社員が株主になっており、社員は入社1年後からは、給与の12%を株式の形で与えられます。それからの株式は時の経過とともに、権利行使可能となり、社員が退職するときに、現金変えることもできるしくみになっております。

 

人事リーダーのMary Tilleyさんに実際にお話を伺ったところ、ゴアの社員はみな、「私は自分のやりたいことをやっている」と心から言えるとのことでした。

このように、「利益をあげることと楽しむこと」を両立、実践できるのは、全従業員にリーダーシップと責任を持てるコーオウンドの形態だからこそと言えます。

 

(株)オーナーズブレイン 小泉大輔