1974年 カナダ映画
【原題】 Black Christmas
【監督】 ボブ・クラーク
【脚本】 ロイ・ムーア
【音楽】 カール・ジットラー
【出演】 オリヴィア・ハッセー、ケア・デュレア、マーゴット・キッダー、ジョン・サクソン
ジングルベ~ルジングルベ~ル首が飛ぶ~
ロマンティックな聖夜をトラウマに変えるクリスマス・ムーヴィー
正体不明の殺人鬼が、クリスマスの女子学生寮を血で染める
クリスマスの夜に愛する人と観たい感動の名作だお
クリスマスのにぎわいを見せるカナダの小さな町
ジェス(オリビア・ハッセー)は音楽学校の女生徒として、学生寮から学校に通っていた
ジェスが暮らす寮には以前から、不気味なイタズラ電話がかかってきていた
クリスマス休暇で多くの学生は実家に帰り、寮に残るのはジェスたち数人の女子学生のみ
女子学生たちはしばしの別れを惜しみながら、クリスマス・パーティをたのしんでいたが
楽しいパーティーを台無しにするように、いつもの不気味な電話がかかって来た
ジェスの友人で気の強いバーバラ(マーゴット・キッダー)は、電話の相手を侮辱し、挑発してしまう
電話の相手は思わぬ反撃にプライドを傷つけられたのか、「コ・ロ・シ・テ・ヤ・ル・・・」と吐き捨てて電話を切った
クレア(リン・グリフィン)はバーバラの不用意な挑発を責めると、一足早くパーティーを切り上げて部屋に戻った
クリスマスは実家に帰省する予定のクレアは、部屋で荷物をまとめて寮を出る準備をしていた
その時、何者かがクローゼットから出て来て、クレアにビニールをかぶせた
悲鳴を上げてもビニールで顔を覆われ声にならず、パーティーでにぎわう階下の女子学生たちは気づかない
じゃーん、トラウマ必至のビニール殺人
殺人鬼は窒息死させたクレアを屋根裏に運び、揺り椅子に座らせて窓際に置いた
誰もがクレアは帰省したものと思っていたが、クレアの遺体は顔にビニールがかけられたまま、屋根裏で揺り椅子に揺られていた
翌日、待ち合わせにこないクレアを父親が訪ねて来たことで、クレアの失踪が判明
クレアの父親とバーバラ、フィリスは警察に行くが、巡査はきっと恋人と一緒だろうと言って取り合わない
巡査がまともに取り合ってくれないため、ジェスは警察署へ行きフラー警部(ジョン・サクソン)に状況を訴える
ジョン・サクソン登場
ちょうど別の少女の行方不明を調査していたフラー警部は、ジェスにクレアの捜索を約束する
だがその頃寮では、ペットの猫を探して屋根裏に入った寄宿舎の管理人のマクヘンリー夫人(マリアン・ウォルドマン)が
頭をビニールでおおわれたクレアの死体を見つけていた
呆然とするマクヘンリー夫人に殺人鬼が襲いかかる
マクヘンリー夫人は天井から首を吊り上げられて殺されてしまった
家政婦は見た
ジェスが寄宿舎に戻ると、また電話がかかってくる
恐怖を感じたジェスが警察に電話しようとした時、ジェスの後ろには恋人のピーター(ケア・デュレア)がいた
ジェスはピーターの子供を妊娠していたが、産むつもりがないジェスと産ませたいピーターは喧嘩になっていた
どうしても子供を産むことを了承しないジェスに、ピーターはいらだちを隠せなかった
フラー警部は、寮の電話に逆探知機を仕掛け、寄宿舎の外にはパトカーと警官を配置した
ジェスに対しフラー警部は、逆探知には時間がかかると説明し
妙な電話がかかって来たら、できるだけ時間を引き延ばすように依頼した
しかし、その間に酔いつぶれて部屋で寝ていたバーバラが殺人鬼に襲われる
逃げ場のない密室の中で、バーバラの体に執拗に振り下ろされるナイフ
バーバラの様子を見に行ったフィリスも殺されてしまう
護衛のパトカーの中では、警察官が惨殺されていた
寮にふたたび鳴り響く電話の呼び鈴
逆探知の時間を稼ぐため、ジェスは恐怖を押し殺して不気味な電話に必死に耐えた
電話の相手は、「ベイビーを殺してはいけないよ」と口走った
それはジェスに対してピーターが告げた言葉・・・
愕然とするジェスのもとに、逆探知に成功した警察が電話をかけてくる
「この電話を切ったら今すぐ、何気ない振りをして外に出なさい。不審な電話はその家の内線からかかってきてる」
見終えた後にまでまとわりつくような恐怖が後を引く、1970年代ホラーならではのダークな後味がタマリマセン
カルト的ゾンビ映画の傑作『死体と遊ぶな子供たち』(1971年)や『溶ける顔』(1973年)で知られる
ボブ・クラーク監督によるボディ・カウント・ホラーの傑作であります
スペイン製サイコ・ホラーの名作『象牙色のアイドル』(1969年)の影響は明白ながら
単なる二番煎じに終わらない独特の恐怖感覚をもった逸品です
神出鬼没、正体不明の謎の殺人鬼の凶行を追う濃厚な恐怖演出が味わい深く
アルジェントばりのバラエティに富んだ殺害手段のオンパレードも迫力満点
スプラッター・ブームを経た今なお、本作のまがまがしい殺人描写は異様な狂気に圧倒されます
冒頭のビニール殺人シーンの迫力など、ほとんどトラウマになりそう
犠牲者の死体を屋根裏に展示するアイディアは、まんま『象牙色のアイドル』なんですが
緊張感の張りつめた殺人シーンや展示された死体の不気味な見せ方には強い個性を感じます
死体の見せ方の残酷な美しさは、凡百のスプラッター描写をはるかに凌ぐインパクトです
ビニール袋で頭をおおった死体を、揺り椅子に乗せて揺らしながら子守唄を歌う殺人鬼
殺人鬼の異様なサイコ描写が見た後も夢に出そうなくらい強烈なインパクトを与えてくれるのだ
讃美歌のコーラスと交互に映し出される惨殺シーンもインパクト大
1970年代らしい、後味の悪い幕切れも最高にイカシている
もっとも理想的なジュリエットだったオリヴィア・ハッセーの清楚な魅力も、恐怖をより濃密にしているのだ
疑惑の恋人役に、『バニー・レイクは行方不明』(1965年)のケア・デュレアをもってくる配役も絶妙であります
脇役陣も警部役をジョン・サクソン、女友達役をマーゴット・キッダーという豪華キャストがそれぞれ好演
クリスマスの夜を血と悲鳴で彩り、素敵なトラウマを残してくれるオシャレ・ムーヴィーです
今年のクリスマスは、是非この映画を見て阿鼻叫喚の聖夜を過ごしましょう