誕生日

　記事の締め切りを確認するためにカレンダーを眺めていたら、今日が8月18日だということに気がついた。

　カレンダーを見なければ、ほかの日と大して変わらない365分の1の日でしかなかったはずだ。

　でも俺は、カレンダーを見てしまった。なので、自動的に思い出した。

｢あ……。今日は親父の誕生日だ｣

　いままで一度たりとも親父に向かって｢おめでと｣だの｢はっぴーばーすでい｣だのと言ったことはなかった。ていうか、ぶっちゃけ8月18日は前述の365分の1の日でしかなかったので、気づくこともなかったのである。

　でも、ナゼか今年は気づいてしまった。こうなった以上、黙ってスルーするわけにもいかない。

　そこで俺はスマホを取り出し、親父につぎのようなメールを送ってみた。

｢今日って誕生日だっけ？　いくつになったん？　おめでとうございます｣

　いくつになったかどうかなんて数えりゃわかることで、確か今年で68歳になったはず。彼が還暦を迎えたとき、我が親族でささやかな食事会を開いて、俺はそのときに革で作った長財布をプレゼントした。あれからもう、8年もの月日が流れたのかぁ……。

　ひとり編集部で感慨にふけっていると、俺がメールをしてから3時間後に親父から返信メールが届いた。

｢メールありがとう（＾0＾）６８歳だよ｣

　顔文字のところと６８歳の部分は、なぜかド派手な絵文字（笑）。ちょっと笑ってしまった。

　そういえば俺の血族（両親と兄と俺の4人ね）は、親父だけが8月生まれで、残る3人は9月生まれなんだよね。なのでこの時期になるといつも、子ども心に、

｢おとうだけ、なかまはずれなんだな。ひとりだけ、おとめざ（乙女座）じゃないし｣

　と感じていたことを思い出した。

　嗚呼……。もうすぐ俺も40かぁ……。