「英語耳」って何? | ADELANTEの英語とスペイン語が好き

「英語耳」って何?

現在「英語耳」という本が売れていますね。当時英米文学科の四回生だった私は、この「英語耳」をまったく持っていなかったのです。

#「英語耳」というのは、話し相手が英語で喋っているのに、それをまるで母国語の日本語で聞いているかのような感覚になった状態を言います。

著者の松澤さんは<発音>の重要性について強く主張されています。私も松澤さんの意見に賛成です。中学一年生のとき私は、発音記号をおぼえ英語の発音の勉強をしました。そして、発音の勉強以上に、英語のスペルと英語の発音の複雑な関係の勉強を徹底的にしました。このため、英語のスペルをみればほぼどんな発音をするのかわかるようになりました。そうすると、洋書を読むのが非常に楽になり、初級者用に限られた数の単語で書かれた英語の本を買ってきて読書をするのが本当に楽しみになりました。このころから私のリーディング能力は日に日に上達していったのです。

ところが、肝心の英語の発音の勉強が不徹底だったのです。多少一生懸命発音の勉強をしたのは初めのうちだけで、途中で面倒になり適当なところでごまかすようになりました。英語と日本語は発音面でまったく違う言語だったのに、です。

大学の四回生までのあいだ、英語といえば洋書の読書を中心に読むことと書くことであり、聞く喋るはおざなりになっていました。ま、英語を喋る機会もあまりなかったのですが・・・。発音の勉強が不徹底だったことにくわえて英語を聞くという経験がほとんどなかった私は、当然、英語耳をもっていませんでした。

新卒時の就職活動で大きなショックを受けた私が、さて、どうしたか? それは、下記の私の書いたエッセイを読んでください。

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 英米文学科の出身だったのに、読み書きはできてもまだ英語をきいたりしゃべったりすることがまったくできなかった大学卒業直後のこと、私にとって、アメリカ人やイギリス人がしゃべる英語はほとんどイルカの泣き声とおなじで、意味のないサウンドの羅列でした。ただ、私のしゃべっている英語は、彼らには理解できるらしく、さかんに質問してきます。でも、彼らの言っていることはちっとも分からない。

 そこで、はたと気がつきました。日本語と英語は、まったくリズムの違う音楽なのだと。雅楽になれた耳を、ジャズやロックのリズムが分かる耳にしないと、英語は一生ものにならないと強くおもいました。つきつめれば、私の耳の運動神経が悪いわけですが…。哀しい。

 では、どうするのか。英語のサウンドの海に身を投げ、水底に沈み、たゆとうその水の流れにじっと身をゆだねればいいのではないかとおもいました。荒療治ですが、それしかないとおもいました。泳げない人間がひとり、船で沖にでて誰もいない大海に飛び込めば、どんなに波が静かでも溺れて死ぬほかはないけれど、英語のサウンドの海なら飛び込んでも死ぬことだけはない、と分かっていましたから、私でも飛び込む決心がついたのでしょう。

 で、自分の部屋にいるときには、一年間FENをかけっぱなしにしました。特に、FENのニュースは耳をダンボにしてききました。二ヶ月たち、何の変化もありません。半年がたっても、何の変化もありませんでした。ところが、やっぱり私には才能がないのだとあきらめかけていた約九ヶ月後のある日、ラジオをつけFENのニュースをきいたら、ごく一部だけだけれど何故か英語が聞き取れたのです。それからしばらくしてどれが主語と述語で、どれが目的語や補語か分かるようになりました。そしてその一週間後には前置詞や接続詞が聞き分けられるようになり、そのあとは日進月歩で急にヒアリングが上達してゆきました。

 ヒアリングができれば、スピーキングは自然とできるようになります。

 まずは英語のサウンドの海に沈み、水のなかの魚のようにえらで呼吸できるようになることだとおもいます。
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以前のBLOGで、
極論すればヒアリングとスピーキングは、あとでもいいのです。まず、読むことと書くことを身につけてください。それがすべての基礎です。
と書きましたが、ベストの方法は、やはり、それぞれ同時進行でやることです。(それでも、私の読むこと重視にはかわりはありませんが)