戦法に絶対はない。だが、絶対を信じないものは敗北する | 井上正幸のブログ

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8/7に著書3作目となる「ラグ戦入門編」が発売となりました。 「戦術初心者にでもわかりやすく」という今までにない難問を突きつけられ、何度も突き返されて生まれた書籍です。1人でも多くの皆様の手にとっていただけますと幸いです。 https://www.amazon.co.jp/dp/4862556930/

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「戦術における違い」というものであれば、おっしゃるようにチームにあった戦術は存在しますが、ラグビーの構造は変わりません。
つまり、ラグビーの構造から導き出される戦術は、チームカラーやコーチによって違いが生まれます。
選手によって好きなスタイルがあるので、戦術に納得できないことはありますが理解はできます。
ここにきてようやく、「戦法に絶対はない。だが、絶対を信じないものは敗北する」となります。

問題は、「古い」という概念ですが、「最新」であるから正しいとは限りませんが、古い概念は、使われなくなった理由があるはずで、そこに目を向ける必要があるのではないでしょうか。
僕は、むしろその部分の「なぜ」を怠ってきたので、新しい概念を理解できず、海外のチームに遅れを取ったと思っています。

フルバックのポジショニングについて、1ポジションのポジショニングを単体で語るのではなく、ウイングや他のポジションの選手とどう連携するのかによって変わってきます。
自分で考えることで理解が深まることについて異論はありませんが、「方法を熱心に授ける」のではなく、あくまで論理的に理解できるよう説明すべきです。

もし、それをコーチがわかっていなければ、選手はいくら考えてもそれが勝つために適切とは考えられず、適切でないと知りながらもそれを自分に納得させることになります。
そのために時間を使い、理解できないことを納得して練習することが果たして「うまくなる」のでしょうか。

重ねて言いますが、大西先生の言葉は、理解できることを納得するための言葉であって、理解できないものを納得させる言葉ではありません。それこそ思考停止ですよね。

具体的な例として、「南アフリカとイングランドのような骨格の豊かなチームはウィークショルダーに目掛けてカットインするより、外側の肩をめがけてぶちかました方が遠くのディフェンスも引き寄せられて効果的かもしれない」とあります。
引き寄せられる根拠として、

体格が有利→ストロングショルダーに対して当たっても当たり勝てる→抜かれるから外側の防御も寄ってくる

というものです。
体格はパワー発揮において有利ですが、タックルは必ずしも同じようにヒットする必要はありません。タックルはてこの原理を用いて、思い切り当たりに来たら、低くタックルに入って倒します。
相手がどこをめがけて、どのように当たりにくるかわかれば、てこの原理を使いやすくなるので、今はどのチームもタックルは駆け引きをします。
エディーさんが、レスリングを取り入れたのも、高い姿勢(厳密には違いますが)から急に低くなってタックルに入るスキルを身に付けさせるものです。
また、1対1とは限りません。相手がそうしてくることがわかれば内側からのスライドを速くしてダブルタックルを狙ったり、意図的に遠くのディフェンスが飛び出して(アンブレラディフェンス)、内側の対面とダブルタックルしてリサイクルを送らせたりターンオーバーを狙うことだってできます。
南アフリカ対イングランドの場合は、どう考えるのでしょうか?同じようにお互い当たり続けるのでしょうか?

一例として挙げられているのはわかっているつもりです。ただ、一局面のスキルにおいて理論を展開されるのは、高度に組織化された現代ラグビーにおいては無理があります。戦術や戦略において語るべきです。

体格が有利なチームは思い切り外側の肩をめがけて当たること自体は効果的とは言えませんがその有利な体格を生かして、どのような戦術を組み立て、どのようなスキルを生かすのかをラグビーの構造から考えなければいけないのではないでしょうか。

影響力のある方だけに、記事を鵜呑みにせず、深く考えられることをお勧めします。