[CC]5月2日 朗読劇「私の頭の中の消しゴム」感想 | かーぼんこぴー

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「記憶は時間」。

というのは「時間」をテーマに置いた「仮面ライダー電王」の世界観でのキーワード。
怪人によって過去が改変され現在に影響が生じても、その過去を「記憶」していた人間の存在によって現在は修復される。逆に、周囲の人間との関わりが薄い人間は、その人間を覚えている人間がいなくなる(=誰の記憶にも残っていない状態)と存在が消滅してしまう。


記憶は時間。
そんなことを考えながら観劇していた朗読劇「私の頭の中の消しゴム」。
鈴木拡樹さん×竹達彩奈さんの回2回目を見に行きました。
あんまり作品自体の話しても仕方ないんですが、わたくしこの作品に触れるのは初めてでして。
有名な作品なのでまあぼんやりと、恋愛のお話で、記憶がなくなってしまうお話なのは知っていましたがそれこそ「あらすじ」未満の程度。文字通り初見でございました。
なんというか、幸せの絶頂から絶望の底までものの見事に、というか。

あと、全編を通して「二人が共に」幸せである時間が短いのも少し気になりました。
ネタバレ注意なんですが、「見りゃわかるだろ」のあたりから七夕までと、「昨日のことは、自分でも信じられない。」から山登りのあたりまで。よく見るとどちらも屋台での場面の後。

最悪の出会いがあり、七夕でのすれ違いがあり、浩介の母親のくだりがあり。母親のくだりが落着すると、今度は薫が苦悩する番になり、クライマックスへ。

こうしてみると二人とも笑顔だった場面はとても少なかったようです。
その少ない幸せな場面が輝いているからこそ、終盤により重み・深みが感じられる。ページ数としては少ないけれど、あとで回想するのに十分なくらい幸せなシーンが強い。本で、文字で追うよりも観劇した時の方がその印象が強かったわけですが、それはやはり演じるお二人の表情や身振りがあってのものでしょうか。

こういう時あまり上から目線になってしまうのは好きではないのですが、そういうところからも改めて素晴らしいお芝居だったなあと感じられます。



ストーリー自体初見だったため浩介と薫は鈴木さんと竹達さんの容姿でしっかりと記憶に焼きついたわけなんですが、竹達さん合いすぎじゃあありませんかこれ。とてもストレートに演技が入ってきます。

鈴木さんの方はほぼほぼこの朗読劇で初めてお目にかかったので、まさに浩介そのものとして鈴木さんの姿が記憶されています。
(パンフレットを見て驚いたのですが、仮面ライダーディケイドにて剣立カズマ -ブレイドの世界でブレイドに変身する- 役で出演されていたとのことで、実は6年も前にしっかりと出演作を見ておりました。余談ですが555の悠木さんといい、特撮ファンとして実は知っていた、ということが次々とあって驚く限りです)

すなわち「第一印象である」という点は大いにあるものの、演じるお二方が浩介と薫そのままに見えました。もちろんこれは素晴らしいお芝居の裏付けでもあるでしょう。

特に竹達さんの演技、どれを取り上げるか悩むくらいにどれもはまっていたと思うのですが、……(やっぱり選べなくてここでキーボードを打つ手が止まり数分経つ)……、一つだけ選ぶならやはり「おかえり、和也さん」でしょうか。あの罪のない「空っぽ」の笑顔。前後の、原作ではひらがなだけで書かれている台詞も含めて、病状が進行したあのあたりの”中身のない”演技にはぐっときました。なんだか失礼なことを書いているように見えてしまいそうですが、観劇された方には伝わると思います。

「心を無にする」だとか、「何も考えない」というのはとても難しい。「「何も考えていない」ことを考えて」お芝居をするってきっととても難しいことなのではないでしょうか。


反対に鈴木さんの方は、怒鳴ったり、乱暴な口調になったりするところが印象に残っています。「人生は怖いもの」「人間は独りで生きて、独りで死んでいく」ということを考えながら何年も生きてきたのだろう、と、浩介の過去まで見える、そんなお芝居だったと思います。


ストーリー展開はある程度読めた部分があって、あらすじ未満しか知らない自分でもある程度は伏線に気付いたり、後にこんな台詞が来るんだろう、と初見でも予想がつきながら見ていたのですが、それでも感動は冷めることなく、静かに熱い涙を流していました。

自分が流す涙が「熱い」と感じたのは生まれて初めてでした。



「役者・竹達彩奈を見た」というのはツイッターでも何度もこぼした感想。
竹達さんの名前を知ったのはつい2年前のプチミレディ結成、本格的に声優ファンになったのもほぼほぼ同時期で深夜アニメもそれまで一切と言っていいほど見たことがなく、けいおんも俺妹もその他竹達彩奈が名を世にとどろかせた作品には一切触れたことがなかった。
「悠木碧さんだけのファン」ではなく「プチミレディ二人のファン」となり、自信を盛って「竹達彩奈さんのファン」であると言えるようになったのはその年の冬、週末シンデレラの発売とクリスマスのイベントへの参加。週末シンデレラに関しては当時別件で色々あったことによる個人的な思い入れがありつつも、やはりこのシングルとクリスマスのイベントで、彼女の歌や、彼女が作り出す空間を好きになり、ファンになった。

そんなわけで僕は「アーティスト・竹達彩奈」を見てファンになったわけであり、逆に言えばそれしか見たことがないと言っても過言ではなかった。
恥ずかしながら竹達さんが声優として演じたキャラクターで印象に残っているのは「とある飛空士への恋歌」のアリー(アリエル・アルバス)くらい。

だいぶ話が脱線したけども、そんな「アーティスト・竹達彩奈」しか知らなかった私はこの「頭の中の消しゴム」でようやく「声優・竹達彩奈」を見ることができた。印象としては「声優」を通り越して、もっと広く「役者」の竹達彩奈を見た、という感じだった。本気を見た、と言う感じ。


本当に、見に行ってよかったと思う。チケット高いとか言ってごめんなさいじゃ済まない。冗談交じりにプチミレのアルバム(の購入数)減らしてしまったとか言ってたけどもそんなことは全然気にならないほどの舞台だった。
結局、今日パンフレットと原作本を買うためだけにわざわざ天王洲へ足を運んだ。行った時は最後の公演のまさにクライマックスで、「はじめまして。」が聞こえた。


ほんの2週間前にあった悠木碧さんのコンサート「プルミエ!」についても、これより他に行くべきイベントはないと思ったものだが、この朗読劇も同じだった。
2回あったから、1回行けばいいのではなく、2回あったから2回とも行くべきものだったと、そんな風に思う。
また機会があれば最大優先で見に行くし、竹達さんを知る人知らない人構わず多くの人に見に来てほしいと思う。

竹達さんの声優としての最高の仕事が見られたこの舞台。忘れません。
竹達さん、鈴木さん、素敵な時間をありがとうございました。