水族館の進む道に思うこと。 | サクのアニマルフリーク~元飼育係の動物園・水族館紀行~

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飼育係・アニマルトレーナーをしていたサクが、動物や自然についてをあれこれとお話するブログ。
全国250以上の動物関連施設を訪問したマニア目線からのレポートを中心に、施設の裏側、裏話などをご紹介します。
当ブログは全て、私が実際に体験した事や訪問した資料、写真を元に書いています。

日本動物園水族館協会(JAZA)から、
しものせき水族館海響館
新江ノ島水族館
竹島水族館
あわしまマリンパーク
の4施設が脱会をしました。


背景には、国際的な反発からイルカの追い込み猟による入手禁止を打ち出したJAZAの方針への反旗をひるがえした形。

海響館と新江ノ島は色々な研究や鯨類の繁殖にも力を入れていたにも関わらず、脱会を決めました。
特に江ノ島は、20年も野生からイルカを入れておらず継続的に繁殖に成功していたのにです。


本来はJAZAの考えに賛同するべきであろう施設の脱会というのは、とてもショックで大きな出来事です。
また、あわしまは数年前に加盟をしたばかりの施設だし、竹島は入館者数が増加をして今いちばん話題の施設。


そのような施設たちが脱会をしたという事は、水族館のJAZAへの加盟意義自体に問題点があるからとも言えるのではないでしょうか。



ただ、イルカ猟は国が認めているとか、伝統的な猟とかよく言われていますが、それは少し違う気もします。
確かに猟は捕獲枠を決めて認めているけれど、猟の枠組みを決めている調査データ自体に信憑性はあまりないし、捕鯨や鯨を食べる文化自体は伝統であってもイルカを追い込んで水族館に運ぶ行為は伝統と言えるのでしょうか??


伝統を継承する事はもちろん大切ですが、相手が自然の場合はそれが限定的になったり場合によっては出来なくなる事もあって当たり前。
自然が相手なんだし、生活様式や考え方だって時代と共に変わって行くんだから。

伝統的に石炭を掘っていたから、需要がなくても掘り続けましょう。
地球温暖化や大気汚染に繋がるけど、伝統的だからたくさん使い続けましょう。
採掘量は昔より少なくなったけど、まだたくさんあるはずだから山を崩して穴を堀り続けましょう。


そうじゃないんじゃないかな!?
一つの歴史として継承して行く事も大切なのでは?


国が認めているから、伝統的だから何でも良いではなくて、なんでもっと先を見た考え方を目指そうとしないのでしょう?



私はイルカの飼育や捕鯨自体を決して反対しているわけではありません。

皆さんと同じようにイルカは可愛いと思うし、水族館にいる事で生き物や自然に興味を持ってくれる人がいるとも思っています。
そこから自然を大切にする気持ちを持ってくれて、野生の姿を見に行くなどに繋がる事がいちばんの理想だと思います。


水族館には、教育的要素も大きいし野生から生き物を連れて来ているのだから、その生き物を少しでもよい環境で飼育をし、少しでも多くの方に見て知ってもらい、継続的に飼育が出来るように努力する事が義務であると思います。
でも、この継続的に部分が間違った方向に進んでいると思います。
野生から連れて来ればいいが本来の継続ではないはず。



私的にとにかく残念なのが、新しい水族館の建設の話が出るたびにイルカの飼育が計画されている事。

これだけ話題になり、世界的に見ても問題視されている事なのに、よく平気でイルカを新たに飼育しますって計画が出来るなと思います。

イルカが入手しずらいと言われているのに、繁殖を考えているとは思えない設計に、繁殖を考えていない飼育方針。


それが、公立で計画されている施設で平気でされています。
私立であっても、これから自然や教育に関わる企業として時代の流れや自然に配慮するという方針が出来ずに他人事のようにイルカの飼育を計画します。


海遊館やアクアマリンふくしま、葛西臨海水族園のように、イルカのショーに頼らずとも運営が上手く行っている施設はあります。
予算がなくても、竹島水族館や加茂水族館のように集客を増やす事も出来ます。


なんで、入手や繁殖の事を考えずに平気でイルカの飼育を始めますなんて言えるのか不思議で仕方ありません。


イルカがいるから集客は問題ありません。
海に飼育する為の生け簀を作るので費用は少なくすみます。
JAZAには加盟しない(していない)からイルカの入手は問題ありません。


生き物を扱う施設がそんな考え方でいいんですか??


そんな計画が出るたびに、ため息が出てしまいます。

水族館大国の日本ですが、考え方や施設方針はいつまで経っても世界から遅れたままです。