君のためにできること (吉祥寺恋色:Short:佐東一護) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

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過去記事 引越し分


短編だが長編に絡み有。


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「今日は暑いね。」

「ああ。」

空を見上げながら***が手で顔を仰ぐ。

「梅雨だしな。蒸しっとする。」


湿気を含んだ空気はいくら風が吹いたとしても俺らに爽快さを感じさせない


「あ~。なんか、飲も。」

横道を逸れ 影になる場所を求めて帰路途中の公園に入る俺の後ろ

「お前はアイスティーでいい?」

「うん。」

ちょこちょこついて来るコイツはいつも紅茶で。クロフネに住んでるくせにコーヒーは苦手なんて冴えねぇよな。


「木陰は涼しいね。」 

***はそう言いながら池のほとりのベンチに座り俺からアイスティーを受け取った。

「ありがと一護ちゃん。」

その笑顔に懐かしさと愛おしさを感じながら隣に座った帰り道。

・・・・


最初こそ口ゲンカばっかでロクに話をしたことがなかったけど


いつかの雨の日 あの日から***との距離が近くなった気がしていた。

少しずつだけどこんな俺にも心を開いてくれてるらしい。なんか打ち解けたっていうか、なんとなく二人で帰ることが多くなったよな。


「そうそう、昨日の夜マスターがね、」

他愛のない会話 思い出し笑いをしながら話をし始めるコイツ


俺は小さく相槌をうちながら話を聞く。


「可笑しいでしょ?マスターったらすっごいドジなの。」

…いや、聞いているふりをしていた。

気づいたらいつの間にか 声や周りの雑踏やじめじめした空気も感じなくなっていて

ただこいつの横顔を見つめるっていうそんな風になっていて。


「ダッセーな、マスター。」


そしていつの間にか俺は心が満たされていて。

二人で一緒に帰る。

二人で並んで座る。

二人で店の手伝いをして、

二人で…笑いあって。


「すっげぇドジだな。」


「でしょ?」

少しでも俺らの距離を縮めたくて店でもコイツの気を引かせるようなことばかりしていた。


本当はさ、店に来る女なんて興味ねぇの。手なんて振りたくねぇの それなのに

『一護ちゃん目当ての子いっぱい来るね。モテモテじゃん。』

だなんて冷やかすし。全然妬いたりしねぇのな。


『まぁな。俺、かっこ良いから。』


…妬くわけねぇか。


・・・・

10年ぶりの再会は 忘れていた恋心を一気に思い出させた。

学校の行きも帰りも待っていたこと。

ヤキモチ妬いて怒って泣かせたこと。


いつも手を引いて歩いたこと。


二人で見た流星群 たった一つの願い 誓い合ったこと。


「マスターそういうところあるの。なんだか子供みたい。」

俺に笑い掛ける***は覚えているだろうか。

「あの人ガキだから。」

キスをしたよな。流星群の空の下 お前は俺のモノだからってキスをした。

「ガキって言い方ヒドい。」

たとえ覚えていたとしても

「子供みたいってのとどう違うんだよ。」

ただの思い出でしかないんだろうな。

・・・・

『もうダメかなって…』

付き合ってる男の話をしている時のコイツは今にも泣きそうな顔をしていた。

初めて見るその横顔に胸が締め付けられた。そんなでも


表情ひとつひとつが愛おしくて堪らない。


俺はもう気持ちを隠し通す事ができなくなりそうで


「…彼氏、」


「え?」

***の横顔から目を逸らし 呟くように聞いた。


「どうなったの。あんまり上手くいってないっつってたろ。」

別れてたらいいのに。知らない間にもう終わっていたらいいのに。


「ああ…。」


だけど***の変わらない寂しそうな横顔にそんな期待は崩れ落ちる。


うまくやっていきたいのに、うまくはいってない。そんな感じ?

「…まぁボチボチ続いてるよ。」

私は好きなのって…そんな感じ?

「そか。」


「うん…。」


「まぁ頑張れよ。」


「うん。…頑張る。」


俺はまたフラれた感じ。


・・・・

そいつと別れることがコイツにとって辛いことでも それでも別れたら良い。

そう思ってる俺は ヒドい幼なじみだよな。

「行こうか。」

「うん。」

だってさ、もしお前が涙を流すようなことになったとしても心配しなくて良いんだよ。

俺が涙を拭いてあげる。お前を泣かせるような奴、ぶっ飛ばしてやる。


そしてそれから、抱きしめてあげる。


俺が全部受け留めてやる。だから

…だから、心配しなくて良いよ。


・・・・


「遅くなっちゃったね、おじさん待ってるかも!」


時計に目をやり 少し早足になる。


「ほっとけよ。あいつの店なんだから。」


もっとゆっくり歩こうぜ。もっと一緒に歩きたい。


「早く、一護ちゃん!」

「ほっとけって。」


だってもっと一緒にいたい。ずっと二人でいたい。


「早く!」


「っるせぇ。」


…だから、早く俺のモノになったらいいのに。



★END★ or Promise15
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