melody (吉祥寺恋色:Short:初音理人) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

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・過去記事 引越し分


曲から妄想。cooking彼氏って曲。


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「…違うなぁ。」

また楽譜に手を伸ばし音符を消す。

「…なぁんか違うんだよね。」

ポーンと人差し指で銀板を叩くとヘッドホンを通して響くイメージとは違う音…。

「う~ん…。」

まるで漫画の一場面みたいに 尖らせた唇の上に鉛筆をのせてみる。

「ん~…。」

一人暮らしを始めたばかりの僕。教室の改装が終わるまでの仮の城はすごく陽当たりが良い。

「綺麗…。」

窓から見える桜がふんわりと風に舞う。

そのピンクに心までウキウキとしてくるからテンポの良い曲が弾きたくなって朝からピアノの前にいるわけだけど…。

「…ん~…。」

次の音符が見つからない。全然繋がらない。

調子が良い時は一瞬で曲を作ることができるのにどうも今日はうまくいかない。

・・・・

仮の城はマンションの一室。防音の設備なんてあるわけもなかった。

でも僕はピアノが弾きたい。だから近所迷惑にならないサイレントピアノで曲を作るわけだけど…。

「…はぁ。」

とうとう僕はヘッドホンを外し ぼぉっと窓から見える桜の桃色を見つめる。

気持ちはウキウキ なんとなくだけどメロディーだって浮かんでいる。

「う~ん…。」

なのにどうしても中盤でうまく音が繋がらない。なんでだろう…。

なんてため息をついた時

ぐぅ~…。

「あ。」

腹時計が鳴った。

僕はお腹を押さえながら時計に目をやる。

「…どおりで。」

朝カーテンを開けた瞬間に目に飛び込んできた桜の舞。

その爽やかな美しさに食事を取ることさえも忘れてしまっていたことに今更気づいた。

「お腹すいた…。」

もうお昼は目前だった。曲が出来なかった理由はお腹が空いていたから?だなんて情けない…。

「なんか作ろうかな…。」

お腹を押さえながらキッチンへと向かう。けれど冷蔵庫には飲み物しかなかった。

引っ越したばかりの僕の部屋はまだ何もかもが不揃いで…。

「オムライス食べたい…。」

好きな食べ物を思い浮かべてごくんと生唾を飲み込む。

しばらく口の中は甘酸っぱいケチャップの味でいっぱいになったけれど

「…。」

***ちゃんが作ったオムライスが食べたい…。

好きな子の顔も一緒に浮かんで ため息がでた。

・・・・

一緒に暮らしたかった。そりゃ改装工事の何か月だけのことだけどそれでも一緒に暮らしたかった。

でもまだそれを彼女に伝えていない。だって断られるのイヤだし 困った顔されるのイヤだし…。

「…お腹すいたよ、***ちゃん。」

冷蔵庫を覗き込みながらポツリと溢す。

一緒に暮らしたら僕の腹時計を先読みしてきっと***ちゃんは食事を用意してくれる。

りっちゃんできたよぉ~なんて言って笑顔でご馳走を食べさせてくれる。

僕はご飯より***ちゃんが食べたいよぉ~ってエプロン姿の彼女を抱きしめて

もうやだりっちゃん、ご飯冷めちゃうよって***ちゃんは頬を赤らめて

そんな彼女を もぉ可愛すぎ~ってホントに食べちゃったりして…。

「…そういうのが良い。」

そういう生活…したいなぁ~…。

…なんてことを一人で想像しながらニヤつきつつ ガサゴソと食パンを一枚取り出した時

「ん?」

カウンターに置きっぱなしだった携帯がメール着信の音を鳴らした。手に取って確認すると

「あぁ~!!」

一時間前、30分前、10分前…それはこともあろうに全部***ちゃんからで。

ヘッドホンをしていた僕は音に全然気が付かずにピアノに没頭していて…。

慌ててメールを確認する。

「え…。」

そしてそのメールに目を丸くして…。

「やったぁ!!」

思わず声を大にして叫んでしまった僕。と同時にピンポーンと来客を知らせる音が僕を飛び跳ねさせる。

開けた冷蔵庫はそのままにキッチンを飛び出し廊下を走った。そして

ガチャ!!

「***ちゃん大好き!!」

そう言って卵とケチャップと鶏肉と…ビニール袋を手に持った彼女を思い切り抱きしめた。

・・・・

「できたよぉ。」

エプロン姿の彼女が振り向き微笑みかける。だから僕は

「***ちゃんを先に食べたいよぉ~。」

そう言って後ろから抱きついて君の頬を真っ赤に染めた。

「もう!りっちゃん!!」

「もぉ~すぐに真っ赤になって ***ちゃん可愛すぎ!!」


テーブルに置かれた僕の好物。

黄色いふんわりとした衣装に 赤い♪のバッチをつけていた。

どうしてだろう。それを見た瞬間 僕の中で朝から探していた全ての音が繋がったんだ。

「すっごい美味しいよ!!」

「ホント?嬉しい。」

すごいや、***ちゃん。見つけられなかった音符はここにあったんだね。

・・・・

***ちゃんの笑顔とたくさんの音符が春風にのって僕の頬をくすぐる。

口の中もお腹も想像じゃなくて甘酸っぱさでいっぱいになって…

なんだかもう堪らなく嬉しくって。

「…ねぇ、***ちゃん。」

「なぁに?りっちゃん。」

「あのね…。僕のお願い聞いてくれる?」

やっぱり一緒に暮らしたい。やっぱり一緒に暮らしたいな。

ねぇ良いでしょ だって大好きだよ。

ずっと僕の傍にいて!


★END★
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