雨が降り出しそうな夕暮れ

 モカは その店のまえにいた

 モカ 15歳 夢見る乙女

 
 いくつか並ぶお店のなかで
 
 ずっと気になってた

 オレンジ色に光る 大きな扉のお店の前だ


 その店の扉には こう書いてある


  『 形のないものを 形にするお店 』

 ? ?


 よくわからないけど 扉を押し開けた


 目の前に感じる淡い光

 たたずむ老人


 『 お待ちしておりました 』

 まるで昔から私を知っているかのような

 穏やかな 声だ


 そして 

 いつか覚えのある懐かしい香り


 夢や希望に香りがあるのなら

 きっとこんな香りなんだろうなと

 そんな想いをいだかせる 不思議な香り


 一歩前に進むと 意外な言葉が耳にはいった


 『 雨は降り始めます でも 今日は 濡れたまま 歩きなさい 』


 へんな感じだけれど なぜか そうしようと感じた


 しばらく歩いていると 

 ポツリポツリと 小さな雨音が周りを包み始めた

 空の隙間から 

 宇宙のしずく達が 舞い降り始めた


 濡れるのも気にせず歩いていると

 前方に 笑顔の輝く少年が立っていた


 その手には2本の傘を持ち

 私に1本を 差し出しているように見えた


 無意識に手をさし延ばすと

 少年は 私に傘を手渡し 走り去っていった

 
 この 無関心という言葉が はびこる世界で

 今  優しさという花が咲き

 形になった

 モカは 少し微笑み あの店をかえりみた

 静かに 灯りが消えていった


 『 形のないものを 形にするお店 』

 また 訪ねてみよう