。  猪子氏は,たまたま読んだ100年ほど前のお茶の本に,イギリスの茶と中国の茶と日本の茶について書かれているのを見つけたらしいのだが,「イギリスと中国の茶については,何をどのようにしたらお茶がおいしくなるかが示されている。しかし,日本の茶について本の著者は『日本の茶は,おいしく飲むためにお茶を淹れるという目的を忘れている。異常だ』としている」  猪子氏によれば,日本のお茶は「俺の淹れ方のほうがカッコイイ」とか「宇宙につながれる」とか「より精神世界的に高度」だとか,そういったことを言い,普通に考えれば,すぐ飲んだほうがおいしいはずなのに,その前に茶碗を回したほうが美しいなどとする。「そこでは本来の具体的な目的は失われており,行為を消費することを楽しんでいる。日本にはそういう文化がある」と語る。 ネットワークにつながるインタフェース  行為を消費するという点について猪子氏は,情報化社会において「かつて主役だったプロダクトや空間は,今やネットワークに接続するためのインタフェースでしかない」とし,自身のインタラクティブハンガーについても「ハンガーは,インタフェースでしかない,と考えた」と述べる。  行為を別の目的につなげるインタフェースについて,氏はいろいろな実験を繰り返しているのだが,その別の例として,チームラボが開発した「チームラボボール」が紹介された,rmt。  チームラボボールは,浮遊する大きなボールにセンサーとライトが仕込まれたものだ。多数浮かんでいて,ボールに触れると色が変わり,音を発する。また,ボール同士が相互作用を起こすようにも仕込まれていて,これによって観客がインタラクティブに音と映像の世界に飛び込めるようになっている。  これは,ドラクエ10 RMT,カリスマミュージシャンがステージの上で演奏するのを見たり聞いたりする,コンサートというイベントを,一瞬であっても観客自らが主役になれるものとして再構築する試みであるとのことだ。 デジタルテクノロジーの特殊性  情報化社会では,別の変化も起こっている。氏はその変化に関連して「言語化される領域の共有スピードが速すぎて,もはや情報は競争で優位に立つ条件にはならない」と語る。  従来のテクノロジーは国によって格差が発生した。「例えば製鉄技術のようなテクノロジーは,先進国と発展途上国で技術格差が存在していた」(猪子氏)。  一方,デジタルテクノロジーは,あっというまに共有されてしまう。したがって,先進国がそこで勝負しても勝ちを保証できない
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