脇若さんインタビュー4~世界を知った上で見る日本~ | OpenMind Official Blog

脇若さんインタビュー4~世界を知った上で見る日本~

Q; 滅私奉公にしても、間違えることを恥じること(授業や会議等で)、多くを語ることをしないにしても、忠義心・恥を嫌う気持ちに武士道の影響が垣間見れますが、その日本人固有の性格形成をどう考えられますか?

脇;

さっきまさに言った話というのは、ほとんど武士道に関連する話だよね
震災時の自粛の話もそうだし、逆にイギリスのリビアの犯罪者をリリースするしないって話も、日本人ができない話だよね
騎士道と武士道の違いはわからないが
西洋の世界はロジックの世界だから、不合理なこと、ロジックの通らない話はしないんだよね
日本の場合はロジックではなく、emotion(感情で)とかがあるよね

昔の山田洋次監督、木村拓哉主演の「武士の一分」なんか不合理極まりない
ああいう世界がいいかって言ったら、今の我々ですら考えられない
ただあれはあの時代でよかったし、さっき言ったように忠義とかそれがいい面で出てくればいいが、行きすぎると問題がある

英国では当時も今もあんなのは考えられないよね
だから僕ら日本人もこういう新しい時代で生活していて、グローバルスタンダードっていう言葉ではよろしくないが、やっぱりコモンバリュー(共通の価値観)、みんながシェアできる価値観は持たなきゃいけないと思う

それは結構重要な話で
グローバルカンパニーを経営するにはそれしかない
英国人・日本人・中国人…いろんな人間が働いている会社の中で、じゃあどうやってみんなをまとめ上げるのかって言ったら、コモンバリュー(共通の価値観)を作ること
それ以外はない

それは例えばなにかといったら、BPの場合でいえば、safety(安全性)だった。
人の命は会社のバリューとしては何にも変えられない
人が怪我やリスクをとってまで金を儲ける必要がないってはっきりしている
だからこそ事故が起こったから大騒ぎしているのだが

さっきあなたたちに、階段上がる時に手すりに触りなさいって言ったのはまさにそういうこと
あれはやってほしいから言ってるんであって
それはもう辞めてもある僕のバリューなんだ

BPの考え方は、朝会社に出てくる元気な姿で家に帰ってくることなんだよ
だからそれはコモンバリューでしょ
国によって、人種によって違う問題ではない
そういうのがいくつかある
また、performance driven(実力主義)に人を評価する
年功序列ではBPは経営できない
日本の企業がinternationalにやってても、なぜglobalにできないかというと自分達の価値観を押し付けてるからなんだ
だから人が入ってこない
だって、日本語が話せなきゃいけないとか年功序列だとか言われたら入れないよ
要するにコモンバリューは高いレベルでの指針で必要なものとなる
だからみんなはそれを見つけなきゃいけない
イノベーションもバリューの一つだしね

Q; 日本企業もやはり今世界にどんどん出ていこうとしてる中で、社内公用語英語化を取り入れる会社がいくつか見られます。
日本人の考え方の中で、母国語が英語じゃない分、やはり世界に出る時に英語というものが占める割合というのは大きいものがあると思うんですけど、グローバル人材育成の観点から見てそれはどう思われますか?

脇;

まず、英語はベラベラに話さなきゃいけないとか、上手く話せなくてはいけないとかじゃなくて、今の情報化社会において全て、英語がベースになっているんだよ。
だから英語が出来ないと世界でコミュニケーションできないようになってきている
これは必然だから、やらざるをえない
単にコミュニケーションの手段だと割り切るしかない

そして、英語はコミュニケーション以上に上手くなってくると、カルチャー(文化)との絡みがあって
英語を話す時と日本語を話す時とでは人間が変わってくるわけだよ
だからそこまで来ると今度はforce(強制)できない
人それぞれのbehavior(行動)は強制できないでしょ
Value(価値観)は共有できるが、Behavior(行動)は文化の違いもからんでくるからglobal company といえど強制できない

だけど日本の企業がそうやって英語公用語化するってことは、英語を上手く話しなさいってことではなくて、マインドセットを変えなくてはいけませんよっていうメッセージだと思う
けど日本人が会議をすぐ英語でやったって出来るわけがない

BPの場合は、日本人でも会議は全部英語だったけどね
やらないと英国人が入って来れないから
日産は通訳をたててやってるし、シェルも同様にして英語でやってる
日本の会社も、外国人がディレクト(引率)するのも時間の問題だし現に社長も今出てきている
英語でやらざるをえない時は英語でやらなきゃいけない
これからそれはもう必然条件になってくるんだよ
さっき言ったように上手く話すではなく分かればいい
日本人は得意ではないけど、韓国だってそういう状況だったのに、今はもう一年生から英語勉強してるし、そもそもマインドセットが違うんだよ
あそこは日本以上に学歴社会が激しいからね
だから、できれば韓国の大学ではなく欧米の大学に入れたほうがいいと知人には言ってるんだ
なぜなら余裕があるから
あんなにがちがちやったら人間として心が育たないんじゃないかなって思うからね

でもやろうと思えばできるんだし、あの国は日本より英語は上だよね
もっと言えば日本は数年来の内に経済的に抜かれると思う
がんばってるし、ハングリーだから
日本人はハングリーじゃないからね
韓国人・中国人がドライバー(引っ張り役)になってしまってるでしょ
中国の人は本当にみんなハングリーだから

それが日本人的に言えばお金にハングリーじゃいやだよねってなるね
だから国のベクトル(方向性)を正しく合わせるリーダーがいて、国民一人一人が立場をわきまえてやれば、今回の震災の問題もそうだけどかなりいいとこいくんじゃない?
今の日本の問題は個人個人の意識の問題が低いのと、あとリーダーがいない
残念ながらダブルパンチだね

Q; 若者(特に20代から40代)の国内の就職状況悪化による消極的な国外流出が増加している上に、国内就職状況は年々悪化、今年は過去最低を記録。そしてそれをかきたてるかのようなメディアの報道。日本全体がどんどんダウンスパイラルにはまっているイメージを持つが、どうお考えになられますか?

脇;

そうだね
まず原因と結果の分析の違いがコンフューズ(混乱)してる気がするね
何が原因で何が結果か、今のものはいろんなものがごちゃごちゃになっている
さっき言ったように原因は、なんでそんな状況になっているかというと、日本人が勉強しないとかじゃなくて、まさにグローバルな経済になってきているということですよ
つまり国際的な分業化が進んでいるということ

日本は、知的財産はいろいろあるが、ローコスト(低価格)での生産は不可能で、今日生産はかなり中国に大きな比重がある
ITのサポートはインドとか、欧州でならアイルランドとか、サービスのインダストリーはラテンアメリカとかだよね
日本のサプライチェーンの重要さがこんなにあるかってくらいにあることは、こないだの地震でわかったことだよね
だからもうグローバルに世界的に分業が進んできてるんだよ

そんな中で日本国内で、ビジネスでどれだけの職があるかっていうと
さっき言った二つ目の問題がでてきてIT、情報革命によって単純作業がなくなっていく中で、日本の職がなくなってきてる
一つ目のグローバル分業、二つ目にIT、そして三つ目に日本の労働環境の硬直性がある

日本で一番腹立つのは、勝ち組・負け組、正社員・非正規社員、既婚・未婚とか、なぜそんなもので勝ち負けをつけるのかってこと
人間に優劣はないのに
そういう社会の問題なんだよ

例え無能でも正規社員をなかなかクビにできない、というのも労基法の問題
だから同じ仕事をしているのに正規か非正規かの違いで給料、待遇の違いが生まれる
これは若い人のせいではなく、システムの違い
こういう問題があるから最初に言った問題がある、これが原因なんだ

その原因をよく理解しないで、いろいろやっても無駄だよ
まず出来ることは、国はやろうとはしてるが、英語教育の充実、海外で不利にならないようなサポート等いろいろやらなきゃいけない

韓国みたいに日本は政府がしっかりしてないから、個人レベルで出来るならやっぱりあなたたちのように海外にでてきて自分の目で外を確かめてね、勉強してみるとかは絶対プラスになる
ただ今の日本の社会が、今余分に一年やってきたからと言って、それを受け入れるかどうかといったら、マイナスがつくような場合すらある
僕の時代ではある会社では学部によって選別していたよ

そういう社会は変えなきゃいけない
若い人だけではどうしようもないが、個人で出来るのは国内で外に目を向けるとかそういうことしかない
言えることは、外に出て、日本をちがう目で見れる人間が増えてこなきゃいけない
なんだかんだ言ったってグローバルな世界で情報革命がおきていて、日本のような硬直性のある場所では外国の人を雇いやすくなってくるかもしれない

BPの社長をしてる時、一番女性が取りやすかったんだ
日本の場合、悪いけど女性が男性と同じように扱われてない
だから優秀だが、不満を持った女性がいっぱいいる
そういう人を呼んで責任ある職につければ、すごくいい仕事をする
日本の外資系はもう宝がごろごろしている
日本の会社はそれを重宝しないから、外資の社長にとってみれば最高なんだよ

だから社会が変わらなきゃいけないんだが、外資系とか外国に行ったことある人とか、外国で生まれた人とかっていうのが日本を変えていくと思う
それと年寄りは早く引いて、若い人に任せた方がいい
年寄りも長く生きていくが、他のことをやればいい
社会のためとか
ただはやくバトンタッチした方がいい、若い人に任せてもできるから

政治家でいうと小泉進次郎はいいと思うね(文芸春秋の2010年12月号にインタビュー記事あり)
彼の言った言葉で

今の自民党は政権をとる資格がありません
自助・共助・公助のバランスに欠けているから 

自助。
まず世の中不満不平があるかわからないが、まず自分に頼るしかない
まず自分がどこまでできるか
なんだってまず自分がどこまでやるか

ただ全部自分でやろうとしてもさっき言ったように社会の問題がある
それは社会がなんとかしなきゃいけない
それが共助。
それがさっきのNPOの役割だよ
そこでもどうしようもないところは公助
公費を使うってこと
国や地方自治体ってことだよ
菅さんは公助からやって、市民活動でうまくやったかもしれないがやはり自助から出発しないといけない

個人ががんばれる世界を作れるようにしないと
それは国や社会の役目だから
個人の役目でもあるが
国や社会がだめならそういうとこにメッセージを発信すると同時に、自分ががんばらないとどうしようもないよってこと
僕は自分は偉いとかじゃなくて、自分で自分の山をストップせず登ってきただけなんだよ

Q; 今の若者に期待することはなんですか?

脇;

外に出ること、新しいものを吸収すること
さっき言ったみたいに英国人の三つの要素を身につけること
常に世の中を見てる
どんな小さな情報も無駄なものはない
と思ってやってけば自分の血となり肉となるんじゃないかな
いい大学行くとかいい会社に入るとかが全てじゃない

たまたま僕はその道をたどったが、それはたまたま
こうやってNPOにはいると過去の栄光とかは全く関係ないから
過去にやってきた自分の蓄積は意味があるが、大学とかは関係ない
今の自分の力がどこまであるかが問題だから

名刺で自分の名前で会社の名前なしで生きていけるかどうかが最終的な問題だよ

みんなブランド名で生きてるんだから

日本人はブランドに弱いし
韓国人も少し弱いし
ただ中国人は弱くない
日本人より強い
中国人は名刺なんかないしね
日本人は会ったらまず名刺だよ
その次に何年入社かだよ
関係ないだろって思うよね
疲れるよね
今の職場は年齢・男女・国籍関係ないんだ

O; 日本の履歴書って年齢、性別は必須じゃないですか。けどこっちのCVって年齢性別絶対書かないじゃないですか。それがすごくおもしろいなって思いました

脇;

CVも自分が今やってることから始まるよね
何年生まれ、何大学卒とか関係ないよね
だからさっき言ったようにいいこともあるけども敬語が嫌いなんだよ

99年にBPの社長に着任した時に敬語がへただとみんなに散々いわれたんだ
けどさっき言ったように日本語はわかんなきゃいけないし、敬語もわかんなきゃいけない
一年でやっと普通の敬語を話せるようになったんだけどね
三井物産にいた時に、あいつはいつも態度がでかいと言われてた
けどそれは、最近に始まったことではないんだよね(笑)

僕は年齢とか男女とか人に関係なく接するから
人間として先輩は敬うけれど、それ以外は僕は普通に話す
だからへりくだることもなくまさに自然体でいく
それが上の人にはかちんとくる

けどそれがグローバルの人間の態度
無駄にへりくだる必要もない
あなたたちにも普通に接している
特に見下すことも見上げてることもない
同じ目線で話をしている
これは非常に重要なこと

子供と話す時、目の位置を同じにするというのは非常に重要
上から見てはだめ
人と話す時、目と目の間をみなくてはだめ
スピーチなんかやる時は特に重要
目と目の間一点

さっきある人の本を読んでたら、ダボスの会議の連絡の仕事をしてて
日本人にいいスロットがこないからやめたっていってたんだけど。
やっぱ全部中国にいくんだって。
その人が気をつけなさいよっていってたのは

スピーチの前に誰かに紹介して頂いた時は、その後すぐにスピーチを始めろと
じゃないと紹介した人に失礼になるから

原稿の棒読みは最悪いいが、原稿と観衆をいったりきたり見るのは眠くなるからだめです
重要なポイントは3秒間をとって、みんなの目の間をみながらばしっといいなさい

と書いてあったよ
それだけでも今日僕は勉強したよね
毎日が勉強だよ

僕はなんかあったらすぐメモするようにしている
こないだNHKのイタリアの人がやってる番組があって
その番組に日本とイタリアのハーフの人がでたんだよ
司会のイタリア人は日本に住んでた日系イタリア人
ゲストはイタリアに住んでた日本人とイタリア人の子供
その人の発言で印象に残って最近メモしたのは

人々はよく私のことをハーフと呼ぶけれどお母さんはあなたは日本人とイタリア人のハーフではなくてダブルです

って言ったんだよね
すごくいい言葉だよね
だからいいと思ったらすぐにメモして自分のものにしていく
僕が話することであなたたちに伝わってどんどん繋がっていくでしょ
いいことだよね

Q; 今、毎日勉強し、何を始めるにも遅いことはないとおっしゃられてました、気候変動に対しても活動されてます。ご自身のこれからの展望は?

脇;

さっき言ったように大きなプランはないんだよね
こないだ三木谷さんもいってたんだけど
最近、年齢的によく聞かれるんだけど
日本に住むのかイギリスに住むのか
って聞かれるんだ

僕はそれに、決まってないと答えるんだ
それを決めた時点で人生リタイアだと思う
決めない方がいいと思う
三木谷さんは自分の家を買ってないんだって
今でも借り家だって
なぜかと言うと

家を買った時点で自分がそこにSettle(定住)することになるから嫌だ

っていうんだ
非常に共感できたよね
僕は両方に家あるけどどっちに住むとかはきめてないし
どっちかというとアメリカに行きたいなって思ってる
ただNPOはそんなに長くないとおもってるけど
けど少なくとも決めてない

ただ自分の人生では人に物を教えるってのは大事だと思ってるからそれに近いことをやっていくんだと思う
つまりこういうことをやっていくんだって決めてると仕事も変えやすい
それが手段になるから

僕はコンサルできるだろうし、教えることもできるだろうし、仕事がなければそれでいいし
だって仕事なくてもそういうことはできるでしょ
それにちょこちょこコンサルはやってるし
さっき言ったようにプレゼンのコースもやってるし
だから変な言い方すると40歳くらいになってから自分のライフプラン、自分の人生の目的を、purpose of the lifeっていうんだけどそれがだんだんわかってくると思うから。
それを決めたら、あとは何をしようとそれにあってるかどうかっていうそういう検証の仕方になるから
自分の生きている意味がだんだんわかるから

あとはベッドで長く生きてもしょうがないから普段から体の手入れする?
体は車と同じ
メンテナンスしなきゃだめ
大きくエンジンを変えたりはだめ
だから大きな手術はしないようにしなきゃだめ
肺や心臓とるとか
ちょこまかやるのはいいんだよ、油をそそいだりとか
そうすると車は長く走るから
体のメンテナンスやって
そして頭のメンテナンスやって
常に新しいことに興味をもって
家族のこと考えてあとは普通
別に有名とか大きなポジションとかじゃなくて
人をリードするためには
常に自分をリードしなくてはならないんで
常にポジティブにlead the self
これは野田先生の御言葉なんだけど
彼の本 
リーダーシップの旅
て本がすばらしいから読んでみてよ
ヤクルトレディーも、ガンジ―も、マーティンルーサーキングも出てくるよ