EUがシリアへの武器輸出禁止を解除し、ロシアがシリア政府側に武器輸出を続けている。
 
 こうなってくると、冷戦下の代理戦争の様相を呈してきているのだが、相変わらずこの件に関してはアメリカは大人しくしている。
 例の化学兵器疑惑を熱心に追求しているのもフランスがメインになっており、オバマ政権になってから米軍による海外の軍事展開は縮小方向へ進んでいる。

 先に、ロシアが防空ミサイルS-300(報道によってはC-300、ブログ内ではS-300で統一)をシリア政府に輸出するとの報道。






ロシア、シリアに対空ミサイル供与へ 内戦拡大の懸念高まる

2013年05月29日 06:56 発信地:ダマスカス/シリア

オオルリのブログ

【5月29日 AFP】ロシアは28日、シリア政府に高性能対空ミサイル「S300(S-300)」を供与すると発表した。各国からの非難をよそに発表されたこの決定に、シリアで続く内戦の拡大を懸念する声がいっそう高まっている。

「S300」は、航空機や、北大西洋条約機構(NATO)がシリアのトルコとの国境に配備している「パトリオット(Patriot)」のような他の地対空ミサイルを迎撃することが可能。ロシアは今回のミサイル提供は既存の契約の一部だとしている。

 ロシアのセルゲイ・リャプコフ(Sergei Ryabkov)外務次官は、「このミサイル提供が安定化要因になるとわれわれは考えている」と語り、同時に外国からの介入に対する抑止力ともなりうると付け加えた。

 ロシアのこの発表に対してイスラエルは、もしロシアが実際にミサイル供与を行えば、対抗措置を講じると警告した。

 これらの動きは、欧州連合(EU)が27日にシリア反体制派に対する武器禁輸の解除を決定したことで増した緊張を、さらにあおる形となった。

 シリア政権側は、支援国のロシアとともに、このEUの決定を和平努力に対する「妨害行為」と非難。「テロリスト」を支持・奨励しているとして批判した。

一方の米国は、EUの決定は反体制派に対する「全面協力」を示すものだとして、武器禁輸解除の決定を支持すると表明。だが米国はこれまでに、過激派の手に武器がわたる危険があるとして、武器提供は行わないとしている。(c)AFP


↓元記事 AFP通信(日本語版)
http://www.afpbb.com/article/politics/2946740/10816876


写真 ・・・ シリア北部アレッポ(Aleppo)で活動する反体制派の戦闘員ら(2013年5月27日撮影)。(c)AFP/RICARDO GARCIA VILANOVA


 軍事には疎いのだが、S-300のどのクラスなのかが不明。報道が事実ならば、恐らく対輸出用に低カスタマイズされたクラスだと予想される。

 一応、ロシア側の主張は、内戦云々に関係無く、規定の契約であったとのこと。
 ロシアのミサイルは一般の注目度が低いのだが、記事に書かれている通り、かなり高性能だと伺っている。

 その証拠に、イスラエルの反応を見ると如何にロシア製ミサイルが脅威となるのかが分かる。


オオルリのブログ
写真1 : S-300PMU2 右手前が誘導レーダー車両 左奥が発車用車両


 報道通りにシリアに輸出されるのであれば、誘導レーダーと発射管が一体となったコンパクトなタイプだと予想される。
 ただし、高性能ゆえに使いこなすには半年相当の訓練期間が必要と考えられており、その辺りの疑問が解消されなければ、この報道を鵜呑みに出来ない。






 色々と判断に難しいところだが、記事の文面通りに、内戦拡大へ向かうのだろうか?

 S-300(報道によってはC-300)に関しては、現在も情報が錯綜しているのだが、今度はロシアの主力戦闘機ミグ29を10機以上も輸出すると報道された。






シリアにミグ29輸出へ ロシア

2013.5.31 22:53

 インタファクス通信によると、ロシアの軍用機メーカー「ミグ」のコロトコフ社長は31日、ロシア軍の主力戦闘機ミグ29を10機以上、シリアに輸出する方針を明らかにした。

 同社長は「シリアの代表団が現在、モスクワに滞在して、輸出契約の細部を詰めている」と語った。(共同)


↓元記事 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130531/mds13053122540005-n1.htm



オオルリのブログ
写真2 : ミグ29戦闘機

 F-15に良く似ていると評されるが、その通りでF-15と同等もしくはそれ以上のポテンシャルを秘めていると囁かれている。と言うのも、派生タイプが多すぎて、外見だけで性能が判断出来ないからだ。

 こちらの報道は、S-300よりも少しは納得出来るのだが、ロシアは既に次期主力戦闘機の配備を進めており、ミグ29は既にロシア国内よりも国外向けの戦闘機になっている。






 それでも疑問は残る。いくら素人でも10機以上となると、受け入れる側の体勢作りが整っているのか? 疑問に感じる。

 冷静に考えて、S-300とミグ29輸出の報道は、例え事実であったとしてもイスラエルとEUに向けての諜報合戦の一環だと分かる。

 近年立て続けに起きている中東・北アフリカの一連の動きだが、リビアまでは黙っていたロシアが、シリアになると間接的に介入してきている。
 
 国政政治が分からなくても、新世界秩序(New World Order)の根幹に関わる地域になることぐらいは分かる。


 一方で対話の場も用意されており、シリア政府は国際会議参加を既に決断、注目は反政府側になるのだが、参加にはアサド退陣が条件になると事実上突っぱねている。


 以前にも触れたが、シリアの反政府グループに誰が資金提供しているのか?が、個人的には最大の疑問になる。

 やはり、崩壊前のリビア政府が主張していた内容と同じだった。






シリア大統領、「外国人のテロリスト10万人がシリアで戦っている」

2013/05/30(木曜) 22:21


オオルリのブログシリアのアサド大統領が、「現在、サウジアラビア、トルコ、カタールの支援を受けている外国人のテロリスト10万人がシリア国内で戦っている」としました。

アサド大統領は、レバノンのアルメナール・チャンネルのインタビューで、さらに、「シリア軍は、同国に対するシオニスト政権イスラエルのあらゆる脅迫や挑発行為に厳しい対抗策を講じる」と強調しました。

また、ロシアのミサイル防衛システムS300の第1便を受け取ったことに触れ、「シリア軍は、自らの軍事力のバランスを変えることで、テロリストたちとの衝突において多くの成功を収めている」と語りました。

アサド大統領はさらに、外国在住の反体制派の指導者たちを批判し、「シリア政府は、ジュネーブで開催される予定のシリア問題に関する国際会議に参加することを決定した」と述べました。

シリア危機は、2011年3月から始まっており、これにより、治安部隊や兵士を含めた多くの人々が死亡しています。


↓元記事 Iran Japanese Radio
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/37583



 イランのラジオ局になるが、親日国だけあって日本語のページを用意してくれている。
 私は、意味が正しく伝われたば良いと考えていますので、これはこれで歓迎したい。寧ろ、暗いニュースが多い中で、少しは安堵感を覚える。

 さて、発言内容の事実関係は分かりませんが、アサド大統領が直接発言したことは事実のようです。
 コンパクトな記事ながら、かなり重要なことが凝縮されています。

 ・ シリアの反体制グループは10万人、リビアのケースと同じく外国勢によるもので、具体的に、サウジ、トルコ、カタールと国名まで名指ししている。
 ・ 先に触れた防空ミサイルシステムS-300が一基、既にシリア国内に納入された。
 ・ 改めて、ジュネーブの国際会議には参加すると表明。


 確実な情報は、ジュネーブ会議に参加を表明していることぐらいでしょうか。

 その会議場で、化学兵器使用に関する議題も出てくるかもしれません。
 化学兵器疑惑も、どうオチがつくのか?気になるところですが、報道映像を見つけましたので、紹介しておきます。

↓YouTUBE 『 シリア内戦 化学兵器の使用をイスラエルが確認 25人以上死亡 』

http://youtu.be/Dlx81j383gA

 私にも考えるところはありますが、読者の皆さんは皆さんで判断してみて下さい。






<さいごに>


 仮に、ロシアによる武器輸出が事実かどうかは、この先判明するでしょうが、現時点では武器を巡った外交的駆け引きが活発化しています。

 事実が何であれ、世界的にシリア政府が化学兵器を使用したと判断されれば、シリア政府を支持して来た国々も支持し辛くなるのは事実です。

 今の日本は、そろどころではありませんが、シリア情勢は注目しておきたいところ。

 それにしても、”工作員なんて居ない”とのツイッターの意見が堂々と罷り通るとは、日本も平和ボケしすぎですよね・・・