その39からの続き・・・

 【関連記事】: 福島第一原発事故 マスコミが触れない話 その39 全国に広がる食品汚染 Vol.2 沖縄編

 前回までに、放射性物質を吸収し易い キノコ を主軸とした、全国への放射能汚染の現状を分かり易くお届けしたつもりです。
 これでも説明が足りないと感じていますが、現在も重要なニュースが乱れ飛んでおり、取り急ぎ記事にします。


 今回は、内容的には目新しい話ではありません。

 地味な話ですが、本当に深刻な話です。






 我々一般人には、福島第一原発事故の発生後、問題視されるまで気付きもしなかった話でした。
 
 各自治体にある下水施設や浄水施設からは、汚泥が発生します。
 これらの汚泥は、肥料 と 飼料 と 建材(セメントなど)に再利用されています。

 肥料と飼料と建材(セメント)、どれも私たちの生活にとって重要なテーマとなります。






事故発生後の 肥料・腐葉土・飼料に関する基準値

 記事としては古くなるのですが、事故発生後3ヶ月経ち、基準が設けられました。
 新聞記事からも、下水汚泥 → 肥料 へと再利用されている事実が覗えます。

 そして、管轄は 農水省 と福島第一原発事故に関係する省庁が多岐にわたる現状も見えてきます。


汚泥の肥料利用に基準、農水省

2011.6.24 20:00

 下水処理施設などの汚泥から放射性物質が検出されている問題で、農林水産省は24日、汚泥を肥料として広く流通できる放射性セシウム濃度の基準を1キロ当たり200ベクレル以下と定め、福島県など15都県に通知した。

 また、平成24年度末までの特例措置として、一定地域内で集めた汚泥をその地域内で流通する場合に限り、農地土壌のセシウム濃度より低ければ同1千ベクレル以下でも利用できるとした。

 ただ、これまでに見つかった汚泥は基準を大幅に上回るケースも多く、農水省は「現状の汚染レベルでは肥料として再利用できる量は少ない」とみている。


↓元記事 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110624/biz11062420020041-n1.htm


 この農水省の発言を鵜呑みにして良いのか?肥料として再利用されているケースは少ないと主張されている。
 
 こう云う但し書き的な、発言が良く嘘だったりする訳ですが・・・。


     ◇   ◆   ◇


 肥料といっても、畜産物の堆肥、腐葉土も含まれる為に、我々一般人には少々複雑です。
 とにかく、他の肥料や飼料に関しても新基準値が設けられました。


肥料に基準値設定  農水省、1キロ当たり400ベクレル

2011.8.2 22:30

 農林水産省は2日、牛の糞(ふん)尿(にょう)を原料とした堆肥や、落ち葉で作った腐葉土などの農作物の肥料に含まれる放射線セシウムの基準値を、1キロ当たり400ベクレルと定めたと発表した。

 各地への流通が判明した高濃度の放射性セシウムで汚染された稲わらを食べた牛の糞尿を使った堆肥に汚染の恐れがあるため。落ち葉やもみがらなど、野外に置かれた肥料原料の汚染にも備えた。

 基準値は標準的な使い方で40年以上にわたって農地で使っても、原発事故以前の農地の放射性セシウムの最高値を上回らないように設定された。

 畜産農家以外の稲作、畑作、果樹の各農家や肥料の製造業者などにも業界団体などを通して通知し、汚染が疑われる原料を使わないことや、検査の実施などを徹底する。

 基準値が設定されたことにともない、7月25日から東北関東の17都県で生産された堆肥、腐葉土の流通などの自粛要請は解除した。

 肥料以外に、これまで基準のなかった米ぬかなどを原料とする配合飼料については1キロ当たり300ベクレル、養殖魚用飼料については同100ベクレルとする放射性セシウムの基準値も新たに定めた。


↓元記事 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110802/dst11080222300033-n1.htm



 基本的に肥料や腐葉土は、他の土と混ぜますので、耕作土壌全体では薄まる結果にはなりますが・・・。

 細かい話を割愛して、下水汚泥などの人工的肥料 と 自然物からの天然肥料 で 値が異なることに理不尽さを感じます。
 (恐らく、生産者サイドの事しか考慮されていないはずです。)

 後は、どちらも2011年6月と8月の記事です。
 古い情報ですよ と念を押しておきます。






 話を現在に戻すと、今年(2012年)の4月から、食品に関する放射線量の新基準値が始まります。

 【関連記事】: 福島第一原発事故 細かい調整が続く放射線の新基準値 2012年4月から施行

 当然、食料品に対する基準が、暫定基準値(500ベクレル/キロ) → 新基準値(100ベクレル/キロ) へと厳しくなるのですから、これらの肥料も改訂されると予想していたのですが・・・。






現在も変わらない汚泥の基準値

 農林水産省の汚泥肥料に関する基準値は、一向に変化は見受けられません。

$オオルリのブログ
写真1: 農林水産省 汚泥肥料の基準値

↓元記事 農林水産省 公式ページ 取り扱いのポイント
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_hiryo/caesium/pdf/20110720_point.pdf


 農水省による 放射性セシウムと肥料に関する説明のページは こちらへ

↓元記事 農林水産省 公式ページ 「汚泥肥料中に含まれる放射性セシウムの取扱いについて」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_hiryo/caesium/index.html


 因みに17都県は、こちらになります。

 岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県、山梨県、静岡県、新潟県

 大人社会(日本の大人社会)だと、敢えて言う必要の無い話になります。
 政府が公的には これらの17都県は被曝地 だと暗に示したとも受け取れます。
 (※正式に認めないのは、政府補償の話になると一気に財政破綻するからでしょう。)

 私からの疑問です。
 
 ”瓦礫受け入れ”による 瓦礫広域処理が、各自治体を巻き込んで広がりを見せています。
 次回の記事にしますが、焼却プラントから放射性物質が40%排出されているとの意見も見受けられます。
 当然、これらの汚泥中の放射線濃度が上昇する地域も増えるはずです。

 このままの行政指導 及び 現行の法律 

良いのでしょうか?


 今の流れで行くと、なし崩し的に 17都県 → 全国 に切り替わるのは明かです。
 
 そうなると、濃度の高低差はあれ、全国的に放射性物質が拡散・蓄積されることになります。






建材(セメント)への再利用


 既にご存じかと思われますが、社団法人セメント協会に対し、政府から放射能汚染された汚泥利用の要請がありました。

1.セメント各社の対応状況

上記の状況の中、政府(厚生労働省、経済産業省、国土交通省)から6月28日付けでセメント協会に対して、放射性物質が含まれている脱水汚泥等を安定的に受け入れるよう要請があり、会員各社に周知を行いました。

要請内容は以下のとおりです。

(1) セメントを生コンクリートや地盤改良材として利用する場合には、生コンクリートや土壌と混練する段階まで管理されていることから、少なくともセメントが2倍以上に希釈されることを考慮し、セメントの段階ではクリアランスレベルの2倍の濃度まで許容されることとなる。ただし、セメントとして袋詰めで一般に販売される場合には、販売店に引き渡される前に、セメントの段階でクリアランスレベル以下とすることが必要である。
セメント各社は、脱水汚泥等の放射能濃度の管理や希釈度合いをコントロールし、セメントを利用して製造される生コンクリート等が安定的にクリアランスレベル以下とすることにより、今後とも脱水汚泥等を安定的に受け入れるようお願いしたい。

(2) 別添2では、セメントのユーザー団体(124団体)ならびに下水道管理者(都県ならびに市の24自治体)に、上記(1)の内容を満たしているセメントを利用して差し支えない旨の周知が行われています。

なお、クリアランスレベルについては「セシウム134とセシウム137の放射能濃度の和が100Bq/kgである」ことが明記されています。
セメント協会の会員社ではこの要請を受け、放射性物質が検出された下水汚泥、浄水発生土の使用について慎重に検討し、セメントの放射能濃度が政府より示された要件を満足することを確認して、下水汚泥、浄水発生土の使用を順次、再開しております。


↓社団法人セメント協会 公式ページ 「放射性物質が検出された下水汚泥、浄水発生土のセメント原料の利用について」
http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/110728.html


 このセメント協会のページには、ご丁寧に政府からの要請文書がPDFとして頒布されています。
 http://www.jcassoc.or.jp/cement/4pdf/110728.pdf


 恐らく、居住に関する環境基準や建築基準を満たす話になるのでしょうが・・・。

 コメや牛乳でも問題になりましたが、どこをどう読み取っても 行政指導として 混ぜなさいもしくは混ぜても結構だ と読み取れます。
 
 理由は簡単で、セメント製造業者の汚泥受け入れ時の基準が明記されていません。
 しかも、クリアランス基準が 100Bq/Kg なので、200Bq/Kg までなら、製品にして良いですよ と書かれています。


 またまた、私からの疑問です。

 製造することしか考慮されてませんが、アスベストと同じく、解体時に危険ではないでしょうか?

 この辺りの話は、かなり専門的になりそうですので、深くは切り込めませんが・・・。


 とにかく、肥料や飼料に比べれば、日常的には外部被曝が中心になります。
 肥料や飼料の方が、より深刻な話に繋がりますので、強くは主張しません。
 
 しかし、頭の片隅にでも覚え込んでおいて損はしない話です。
 何にせよ、事故後に家などを新築する場合は、軽くでも放射線値を計測しておくことを強くお勧めします。






最後に

 纏めます。


 <肥料に関して>

 ・ 事故発生後、人口肥料と天然肥料の基準値が設けられた。
 ・ 汚泥利用の肥料(200Bq/Kg)と天然肥料(400Bq/Kg)で、基準値が異なる。
 ・ 汚泥利用の肥料は、汚染が酷い地域では1000Bq/Kgまで利用できる。

 <飼料に関して>

 ・ 米ぬかなどを使用した飼料は 300Bq/Kg
 ・ 養殖用飼料は 100Bq/Kg

 <建材(セメント)に関して>

 ・ セメントは 100Bq/Kg
 ・ ただし、混ぜる前の製品としてのセメントは 200Bq/Kg


 用途は同じでも、数値はバラバラです。
 
 食品に関する基準が4月から 暫定基準値(500Bq/Kg) → 新基準値(100Bq/Kg) に変わります。

 【関連記事】: 福島第一原発事故 細かい調整が続く放射線の新基準値 2012年4月から施行


 他の基準値は、そのままで良いのでしょうか?
 
 しかも、我々の食べ物や、住居、職場に関する根源的な話になります。

 結果として、数値の変動や法改正が行われなくても、徹底的に議論し尽くされるべき事象だと思います。






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