前回からの続き・・・
 
 【関連記事】: TPP問題 その4 アメリカの本音 vol.1 NEI(国家輸出戦略)とは?

 オバマ大統領は、今後5年間でNEI(国家輸出戦略)による輸出を倍増し、雇用を200万人確保すると明言しました。

 今回は、アメリカ国民や日本国民を欺く、大ウソを検証したいと思います。






 それでは、アメリカの雇用状況はどうなのでしょうか?


<2. アメリカ雇用の現状>

 アメリカ本国の政府公表数値では、失業率が低下した と民主党議員など大手メディアが大喜びした と聞こえてきます。調べてませんが、日本の大手でも報道されたかもしれません。

 ところが、この数値が操作されたものだと言われています。
 (詳しく調べていないのですが、どうやら4週間以内にハローワークに訪れた人やパートタイムに一回でも従事した人は除外しているようです。)
 アメリカの大手世論調査企業・ギャラップによれば、寧ろ潜在的には変化していないと報告されています。

オオルリのブログ
写真1: 失業者と(正規雇用を希望する)パートタイム人口を足した比率
(URL: http://www.gallup.com/poll/149525/Gallup-Finds-Underemployment-Stuck-Mid-Sept.aspx


 パートタイム従業員にも、様々な人々が居ます。家事に忙しい方が、空いた時間にパートタイムを行っていると云う感覚は一昔前の物でしょう。
 その中でも、正規雇用を探している間に仕方なくパートタイム従業員になっている人々も、失業中と同じ扱いにしています。
 私個人は、この考え方は非常に正しい考え方だと思います。失職中に、生活費に困ってパートタイムに従事する それを就業者数としてカウントする方がどうかしてませんか?
 
 ギャラップ社の主張は、このグラフから見えてくる事は、去年と状況的には何ら変化が無いと言いたいようです。(詳しく知りたい方は、英文ですがギャラップ社のページをご覧下さい。)
 そしてアメリカ政府が公表した失業率の低下は、パートタイム従業員が増加した事による統計上のマジックになります。






<2.1 貿易拡大で雇用拡大?それも長い目で見れば嘘!>

 先の話が拡大解釈だと非難されたとしても、アメリカ政府の公式発表からだけでも米国の深刻さが伺えます。

オオルリのブログ
グラフ1: 年度別の米国失業率のグラフ


 それでですねぇ・・・。簡単に纏めましょうか?
 
 NAFTA(北米自由貿易協定) ・・・ 1994年1月1日開始。(アメリカ、カナダ、メキシコ)
 
 勿論、現在も継続中です。
 目立ちませんが、中米も自由貿易協定を結んでいます。
 
 CAFTA(中米自由貿易協定) ・・・ 2004年調印。(アメリカ、コスタリカ、エルサルバドル、グァテマラ、ニカラグア、ホンジュラス)
 
 こちらも、継続中です。

 どちらも調印直後は、失業率は短期的に下がっています。しかし、貿易協定を取り止めた訳でも無いのに跳ね上がったままです。


 ところで、アメリカはなぜか?失業率で話をしようとします。実際には、移民も手伝って人口が急激に増えていますので、失業率が横ばいでも失業者数は爆発的に増えています。

オオルリのブログ
グラフ2: 年度別の米国失業者数のグラフ

 そして厳然たる事実は、アメリカと自由貿易協定を結んだ国は経済成長に苦しんでいます。






<2.2 雇用を減らしたのは誰だ?>

 他にもあるのでしょうが、日本でもメジャーな話題の一つを。

 オバマが行った愚策と呼ばれている政策の一つに、GM(ゼネラル・モーターズ)が経営危機に陥ったときに、政治介入しました。


焦点:オバマ政権、GMの経営不関与方針貫くのは困難か

2009年 06月 2日 13:31 JST

<冒頭から一部抜粋>

[ワシントン/シカゴ 1日 ロイター] 米自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N: 株価, 企業情報, レポート)が1日、連邦破産法11条の適用を申請した。米政府は、新生GMの株式60%を保有することになっている。

 オバマ大統領は、政府が大株主になっても経営に関与しない方針を示しているが、それを貫くのは難しいとの見方が多い。

 オバマ政権は環境にやさしい技術の開発利用促進を優先課題に掲げているが、それはGMの車種などの問題に影響を与える可能性がある。

 議会の存在もある。すでにGMの一部生産拠点を海外に移そうという提案に一部議員が反対している。今後、どこの工場を閉鎖するかという問題から経営幹部の報酬に至るまで、さまざまな事柄に口出ししてきそうだ。

 2008年米大統領選挙の共和党候補マケイン氏の政策顧問を務めたダグラス・ホルツイーキン氏は「政府はすでにCEOをやめさせ、取締役会を刷新、生産すべき車種にも言及している」と指摘。「これがいつまで続くか、簡単に終わらせられるか分からない」と述べている。

 オバマ政権は、GMが法的整理を短期間で終わらせ再生することを望んでいる。

 新生GMには、米政府が約300億ドルを注入し、約60%の株式を取得する。カナダ連邦政府とオンタリオ州政府は、12%の株式を取得する。

 オバマ大統領は「われわれは、消極的な株主として行動する。なぜならそれがGMの成功を支援する唯一の方法だからだ」と表明。GMの経営には関心ない、としている。


↓元記事 ロイター(日本語版)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-38344620090602?pageNumber=3&virtualBrandChannel=0&sp=true


 GMのアメリカ国内の自動車工場を幾つか閉鎖って・・・、関連企業を含めると失業者は激増するはずです。

 具体的に公金を注入して救済した訳ですが、おまけに新生GM株を大幅に所有しました。更にGMのアメリカ国内工場を幾つかを閉鎖して海外移転を認可しました。
 企業が生産効率を考えて行う事は、決して悪だとは言い切れませんが、それを アメリカ政府が公認した 事による国内からの反感は凄まじい物でしょう。

 この話は、アメリカ議会でもかなり論争を呼んだようですが、なぜかアメリカ大手メディアでもこの後の話になかなか触れようとしません。


 そこで、海外移転するなら、世界からは結果が報道されるはずです。
 東アジアのニュースからは、GMが関連する大規模工場の報道がされています。

GMの中国合弁、新工場建設へ

2011年9月26日(月) 11時15分

オオルリのブログGMの中国合弁、上海通用(瀋陽)北盛は23日、遼寧省瀋陽市において、新工場建設の起工式を行った。

上海通用(瀋陽)北盛は、2004年に設立。上海GMが50%、GMチャイナと上海汽車(SAIC)が、それぞれ25%ずつを出資し、ビュイックブランドのミニバン、『GL8』やシボレーブランドの小型セダン、『クルーズ』を生産している。

今回起工式を行った新工場は、遼寧省瀋陽市に建設。70億元(約840億円)を投資し、2014年に稼働する予定で、年間30万台の完成車と45万基のエンジンを生産する。完成車は、上海GMを通じて販売される計画だ。

新工場は、敷地面積が約2平方km。プレス加工から塗装、組み立てまでの各工程を備える一貫工場となる。完成すれば、中国北東部における乗用車の工場としては、最大規模となる。

GMチャイナのケビン・ウェール社長は、「新工場はGMの中国5か年計画において、重要な役割を担う」と述べている。
《森脇稔》



↓元記事 レスポンス
http://response.jp/article/2011/09/26/162809.html



韓国でもGMの新型車が、販売されました。


GMのグローバルセダン、マリブ新型…韓国で生産開始

2011年10月19日(水) 14時30分

オオルリのブログGMの韓国法人、GMコレアは18日、新型シボレー『マリブ』の生産を開始した。新型マリブは世界市場へ投入されるが、韓国が新型の生産を開始した世界で最初の拠点となった。

新型の組み立てを開始したのは、インチョン(仁川)に位置するGMコレアのプピョン(富平)第2工場。11月からの韓国での新型マリブ発売に合わせて、その第1号車がラインオフした。

GMコレアのマイク・アルカモネ社長兼CEOは、「新型マリブは2011年で最も重要な新型車。GMコレアがシボレーの次の100年の成功に向けて、重要な役割を担う」と語る。

韓国向けの新型マリブは、2.0リットルまたは2.4リットルの直列4気筒ガソリンエンジンを搭載。トランスミッションは6速ATだ。GMによると、優れた乗り心地やハンドリングは、スポーツセダンと呼べる領域にあるという。
《森脇稔》



↓元記事 レスポンス
http://response.jp/article/2011/10/19/164049.html



 少なくとも、海外との関係をも考慮せずに、今すぐ雇用を増やしたいならGM工場の海外移転を全力で阻止すべきです。新GMの持ち株もアメリカ政府は60%と言われており、公正な口出しも可能です。
 
 しかも現地生産なるので、サービス部門の貿易額はアップするでしょうが、アメリカの実質経済が上がるのか・・・?
 (貿易は金で換算されますので、現地生産でもサービスによる収益は米国企業の輸入と考えられます。)

 GM車だけど、Made in America ではありません。
 こうなると、俺たちの雇用を奪ったのは、国と巨大企業だ! となるのは当然です。

 アメリカでオキュパイ運動が拡大するのは、これらの話からも頷けます。






 恐らく少し調べれば、他にも似たようなケースはあるのでしょうが。
 先に大筋を書いてから考える事にしました。

 野田政権がTPP参加を閣議決定して、もう変えないとなってからでは手遅れですから。


 よくよくTPP(環太平洋戦略経済連携協定)を考えてみませんか?
 FTA(自由貿易協定)どころの騒ぎじゃありませんよ。実際・・・。



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