「昼間に保育園のクリスマス会に訪れ、プレゼントをくれるサンタ」と「夜中に子ども の家に訪れ、枕元にプレゼントを置いていくサンタ」という2種類の出会い経験に焦点を 当てる。前者は子どもにとって直接的な経験であり、本人の目撃証言が実在性信念の根拠 となり得る。後者は間接的な経験であり、直接目にしてはいないものの、状況証拠や他者 の証言が実在性信念の根拠となり得る。これらの調査では、こうした直接的、または間接 的経験を通して、子どもはサンタクロースの実在世界をどのように思い描き、その認識をどのように発達させているのか

物語世界と一致しない実在世界が描か れたものであり、後者2種類は、経験可能性が低い反面、夜間に非日常空間に登場するな ど、登場文脈が文化的に伝承されている物語世界と一致する実在世界が描かれたものであ る。3つ目の調査では、こうした多様なサンタクロースの実在世界に対して、子どもはど のような認識を持ち、それをどのように発達させるのかについて、各サンタクロースの短 い物語を仮説的に提示し、本物/偽物判断を求めるという方法によって検討する 2)。

第4節 サンタクロースの実在世界に対する 認識の発達
サンタクロースの実在世界の多様性

目的
サンタクロースにさらに焦点を当て、その実在世界に対す る幼児の認識と発達的変化について明らかにすること

手続き
保育園に在籍する3歳児 20名、4歳児20名、5歳児 22名。計 62 名を対象とした。
園のクリスマス会が終了した約1週間後に、園の一室で個別に面接調査を行った。調査 者は対象児と親和的関係を形成した後、以下の順に質問を行った。調査時間は1人につき 約5分であった。
質問1:「これまでにサンタさんからプレゼントをもらったことはある?」。質問2:「そ れはどうやってもらったの? 直接サンタさんからもらった? それとも朝起きたら枕元 に置いてあった?」。質問3(質問2で直接もらったと回答した対象児に対してのみ):「そ のサンタさんは本物だと思う?」。質問は常にこの順序で行った。
結果と考察
全て、約1週間前のクリスマス会でサンタクロースの扮装物に出会い、直接プ レゼントを手渡されている。にもかかわらず、「直接もらった」という回答は3歳児 65%、 4歳児 50%に対し、5歳児では 18%に過ぎず、5歳児の大部分は「直接もらったことがな い」と回答した。3歳児では他の年齢と比べて「直接-本物」 群が多く、5歳児では少ないことが分かった。この事から、扮装物への「本物」判断は3歳から5歳にかけて次第に減退することが示された。

感想
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