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市民公開講座~住み慣れた我が家で人生を全う出来る地域を目指して~


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「孤高のメス」映画鑑賞会と講演のお知らせ


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その305

☆前回の続きを少し。

 尿閉の患者さんが遠方から夜遅く私の所へ来た話。理由は二つの病院と泌尿器科の看板を掲げている開業医さんで断られたことだが、いずれも納得がいかない。

☆まず病院。当直医は専門家がいないからと言って断ったという。おしっこが詰まって出ないという患者を、泌尿器科医でなくても一度や二度は経験していないだろうか?少なくとも内科医や外科医ならまず絶対経験しているはずである。最近県病から、満室状態が続いているからしばらく入院患者はお断り、という通達が回ってきた。その日の断りの理由のひとつはそれだった。

 しかし、尿閉の患者は入院しなくてもよい。とにかくたまったおしっこを抜いてやればよいのだ。その方法は、ペニスからカテーテルを入れてやるか、私がやったように恥骨の上で針を刺入してやればよい。前者は、コメントを下さった看護師さんが書いているようにややテクニックがいる。後者は一見難しそうだが、一度でも経験していれば最も手っ取り早く確実な方法である。

 県病の当直医は多分経験が皆無だったのだろう。しかし、県病は総合病院である。当然泌尿器科医も常勤でいる。私のところへ電話がかかったのは午後の10時である。自分の手に負えないと思ったら、遠慮なく泌尿器科医に電話をかけてどうしたものか指示を仰げばよいのだ。たとえ真夜中でも遠慮なく起こせばよい。

☆私は神戸の神鋼病院で研修医を送ったが、先輩の当直を買って出て、ひと月の半ばは病院に寝泊まりしていた。夜は急患に何度も起された。真夜中に心房細動の患者が来たときは、真夜中だったが遠慮なく内科医を起こして支持を仰いだ。二度目に同じような患者が来た時は自分で対処できた。未経験の病気を、自分の手には負えませんからと断っていたらいつまでたっても進歩はない。

☆私の恩師羽生富士夫先生のさらに師である中山恒明先生が、ある集まりでこう言った。「病気になるのも時と場所を選ばないと命を失うことになりかねない。週末に胃が破れたり心筋梗塞になったりしたら非常に危ない。たいていの病院は、大学病院の若い医者がアルバイトで宿直に来ているからである。もとより彼らには手に負えないからよそへ行ってくれと言われる。次の病院でも然り。結局たらいまわしの揚句ひどいことになる」

 中山先生は外科医であったが、今日のように専門領域が細分化していない時代に生きられたから、それこそ体のどこにでもメスを入れられた。外科の患者ではないかもしれないし、メスを入れる必要もないが、先の尿閉の患者などそれこそわけもなく引き受けられただろう。

☆総合病院でない民間病院に泌尿器科の常勤医はまずいないだろう。しかし、尿塀の患者はしばしば飛び込むはずで、泌尿器科医がいないから受け入れられません、では病院としての機能をなしていない。情けない限りである。。

 高齢化社会になってこれから尿閉の患者は増える一方だろう。命には関わらないが、尿閉はフン詰まりと同様、死ぬほど苦しい。病院ばかりでなく、開業医さん(まして泌尿器科の看板を掲げているなら)にも、近くの患者なら即対応してもらわねばならるまい。

☆映画「孤高のメス」の上映会と「市民公開講座」のご案内をさせてもらいます。別掲のものご覧ください。

☆いまひとつご案内を。

 2月18日、日本(読売)テレビ夜9時から約2時間、「日本アカデミー賞」の発表があります。別掲のパンフにも書いてありますように、「孤高のメス」は5部門でノミネートされています。ぜひご覧ください。