7月9日の土曜日の夜に…

妹さんから電話がかかってきた。

ルカのパパがもう持たないと医者に言われて。
今夜がヤマだと言われたと。

仕事終わったら駆けつけますって言って電話を切った。

21時10分に病院に着いた。

ちょうどお母さんとルカと妹さんと妹さんの娘のリジュがエレベーターホールにいた。

すぐさま挨拶をして。

パパの病室にむかった。

こないだよりも悪化してるのが見てすぐさまわかるほどだった。

まず呼吸がおかしい。下顎から呼吸をしてる。
瞳にも全く輝きが無い…
あいているけれどもはや何も見えていないんだろうなという感じ。

涙も堪えられなくて…
必死に頭に手を添えて祈る。

病室にはお父さんとお母さん。
妹さんとリジュとルカがいる。
そこに僕だ。

実は妹さんから電話もらった時。
僕はまた躊躇したんだ。

親族じゃないのにいいのかな?って。

でも僕は遠慮なんかしないことにした。

僕はパパの最後まで一緒にいることを決意した。
それが28日に来れなかった時の教訓だった。

今更遅いかもしれないし取り返しのつかないことだけれども。

また同じことは繰り返せない。



しばらくして…
お母さんにまだルカはパパのことが理解できていなかったから。
でもパパと最後になってしまうから…
ルカにキチンと話した方が良くないですか?ってお話しさせてもらった。

お母さんはルカが自然と死ということを悟るように。
死とはどういうことか経験を通じて理解してもらえればいいって言っていた。

僕もその通りだと思い直してお母さんの判断に賛成した。


どんどんパパの様子がおかしくなってくる。

呼吸が途切れ途切れになっていく…

けたたましい警告音。

看護婦さんが駆けつける…

病室に一気に緊張が走る…


みんなパパに駆け寄り必死に祈る。
必死に名前を呼び続ける。


22時01分。ルカのパパは息を引き取りました。

必死にガンと闘いましたが。
神様は残酷です。

まだ44歳という若さで亡くなりました。

ルカのために頑張り続けたのに。

ルカはひとりぼっちになってしまいます。

神様は残酷です。

もうこの時にはルカも泣いていました。

パパが死んじゃったと理解しました。

素直に純粋にこの時まで治ってまた遊びに行けるって信じていました…


ひとしきりして…

パパをキレイにするために病室から去らなければならなくなりました。

お母さんがルカに最後にパパにありがとうって言ってお別れしてって言いました。


ところがルカは泣きながら椅子から立ちませんでした。

ひたすら怖い怖いと言いながら。

僕はルカに優しく話しかけました。

パパはルカのために一生懸命頑張ったよ。
でもね病気には勝てなかったんだ。

ルカは…
パパが怖いよ

僕は
パパはルカのために必死で頑張ったよ?
パパだってルカとお別れなんかしたくなかったんだよ。

でも残念だけども天国に行っちゃうんだ。
だからルカが最後にお別れを言わないとパパが天国に辿り着けなくなっちゃうよ。

ルカは…
パパともう会えないの?
ルカはひとりぼっちなの?

僕は

パパは死んじゃったけども。天国に行っちゃうんだけども。ルカの心の側にいつだっているよ。

ルカは…

パパになって?


僕は
ルカのパパはパパだけだよ?
ずっとルカの側にいるからさみしくないし怖くないよ。
パパの代わりはできないかもしれないけどできることはルカのためにするよ。


しばらくしてルカは…


落ち着きを取り戻してきてくれて。

椅子から立ち上がり。
パパの側にいきました。

パパに最後のお別れを言ってくれた。

パパありがとうって。

その瞬間僕は本当に悲しくて悲しくて。

自分の娘に思えてきた…



そしてしばらくしてルカのパパはキレイになって。

皆で霊安室まで見送る。


その後すっかり遅くなった病院を後にした…


もう電車が無くなってしまって。

お父さんが僕の心配をしてくれて。

車で送ると言ってくれたが…

家までは遠いので断った。

職場の駅まで送ってもらえれば大丈夫ですよ。
後は何とかしますからって伝えた。

その頃にはルカももうすっかり元気になってて。

もう帰っちゃうの?って言ってきた。

お母さんはそんなルカをたしなめるように叱ってたり。
リジュはお腹が空いたって騒ぎ出したり。
妹さんもそういえばまだ食べてなかったねー。


なんか雰囲気がざわざわしてきたので。


思い切って。


僕はせっかくだし。

皆でご飯を食べに行きませんか?

って提案した。

そして職場の駅の近くのファミレスに皆で行きました。

そこでルカのパパの話をしながら。
皆でご飯を食べました。

ジュリもすっかり僕になついて。
ルカも一緒になって笑いながら。
皆で楽しく過ごせました。

お父さんがルカのパパの交友関係に連絡したいけれどわからなくて。
葬儀とかもどう伝えていいものか?
と困り果てていたので。


僕が出来る限り声をかけます。

それは僕に任せて下さい。

僕は僕で葬儀は賑やかに最後送り出したいかなって考えていたので。

ベストを尽くす約束をした。

お父さんもお母さんも妹さんも安心してくれて。

それだけでも何よりだった。


親族の方々の心労や無念さは僕なんかと比較にならないくらい大きなものでしょうし。

心配や不安を少しでも取り除けられるなら。

僕もそれでいい。

それにルカのパパの最後に立ち会ったのも僕だ。

お父さんやお母さんや妹さん達と面識があるのも僕だ。

これも何かのご縁なので出来る限りのことはしようって決めてた。


気がつけばもう夜中の3時になってしまい。
皆とわかれてネットカフェにむかった。

翌朝職場で色々な方に協力をしてもらって。

分担してより多くの人に伝えて参列してもらいたくて動いた。

しかしまだ葬儀の日取りは決まっていなかったので。ハッキリとした回答は得られなかった。

そこで翌日、僕は休みだったので。
バイクでルカのパパの家に行った。

そこで打ち合わせに参加させてもらい。
場所も日程もハッキリわかったのですぐさま拡散して。多くの人に伝えた。

13日18時からお通夜で
14日11時30分が告別式。

葬儀場の方が打ち合わせで来ていたので。
喪主をつとめるお父さんと入念に打ち合わせしていた。

しばらくしてお父さんが僕に受付と会計を頼めないかなって言ってきた。

どうやら4名必要らしく。
僕はすぐに引き受けて残りの3名を探すことにした。

誰でもいいわけではなく。
もっともルカのパパと縁の深かったであろう人からあたっていった。

1人はすぐに引き受けてもらった。

僕もルカのパパとも仲が良かったし。
一緒に御見舞いも行ったし。
何よりも信頼できるし。

もう2名はルカのパパが長く勤めていた方々にお願いさせてもらった。
僕も面識あるし良く知っているし。

ルカのパパとは僕よりも全然付き合いが古いし。
その方々のおかげで色々な方に声もかけて下さってるし。
ルカのパパだって20数年勤めていたので。
1番嬉しいんじゃないかと。


これで受付も会計も決まりだ。

後は現在確定している人数だけお父さんに伝えて
僕はルカのパパの家を後にした。


昨夜お通夜だった。

当初の予定人数よりも本当にたくさんの方がルカのパパのために来てくれた。

お伝えしていた予定人数が30から40名とお伝えしていましたのでご親族と合わせて80から90名前後と。

ところが150名でした。
本当に多くの方々に参列してもらって。
ルカのパパもさみしくない。

僕が言うのもアレだけど本当にありがたいことだった。

ルカのパパの人望が凄かったね。

あらためて誇らしく思った。
ルカのパパは凄かった。













ルカのパパは食道癌のステージ4で闘った。

こないだルカとパパの3人で4月に静岡の清水まで遊びに行った。

パパとルカは車で。
僕はバイクで。

パパは少し調子悪そうだったけど。
精一杯元気に振る舞っていたので…
僕も普段どおりに接した。

それから3ヶ月位全く会ってなかった…

フェイスブックの更新もルカの誕生日の5月18日で止まっていた…

僕は気になって何度か連絡した。

すぐに返信返ってこなくても。
後で返信がきた。

いつもどおりの気丈さで。
体調はバッチリだよとか。
元気だよとか。

入院してたけど…退院して大丈夫だよとか。

でもフェイスブックの更新が止まったのが僕には引っかかっていた。

おそらく誰にも会いたくないんだろうなとか。
勝手に思っていた。

6月に入って連絡したら。

退院して体調はバッチリだけど酸素ボンベを持ち歩かなきゃならないって返信きた。

体内の酸素量が少ないみたい…

って返信きた。

さすがに僕は大丈夫なのかな?って思ってきた。

頭の中で気になっていたけど。
なかなか行動に移すことができなかった。
パパに会いに行こうか行くまいか躊躇していた。

でも6月の27日からまた入院するからって連絡きた。
だから28日に行くねってパパと約束した。

でもその日に行けなかった。

僕はなんてダメなんだ。

でも気になって7月3日にお見舞いに行った。

スターウォーズが好きだから
スターウォーズの点を繋いで行くと絵になるという本と色鉛筆を買って。

病院に着いて病室を聞いてなかったので
受付で聞いた。
なんかいつもと違う違和感があって少し嫌な感じがした。
直接本人に連絡してみたけど返信ない…

受付からナースステーションまで行って。
いつも書いたことないのに面会の紙を書かされた。
それで案内されて…

病室の目の前に来ると…
1人部屋になってる…

いつも大部屋だったのに…

カーテン越しから人の声がする。

誰か来てる…

中にいる看護婦さんと話してる。

心なしかパパの声を高くしたような感じなので。

あっ。パパが看護婦さんと喋ってるのかな?

って僕は思った。

タイミングを見計らってカーテンを開けて病室に入る。

ルカとパパのお母さんと妹さんがいる。

看護婦さんと喋っていたのは妹さんだった…

肝心のパパは…

肝心のパパは…

もうもはや僕の知っているパパじゃなかった…

意識ももうろうとして…
目も虚空をさまよっている。
口には酸素マスク。

ガリガリに痩せ細って…

老人になってしまっていた。

こんな変わり果てた姿になっているなんて。
全く僕は想像していなかった。

こないだ会った時元気だった…

尿はカテーテル…

痛み止めのモルヒネ…

パパは全く喋れないし動けない。

僕は…

僕は…

考えたくなかったけど。

最後なんだと覚悟した。

その瞬間涙がでて。パパのもとに駆け寄り声をかけた。

目は開く。

パパの手を握って話しかける。

お母さんも妹さんも泣いてる。

ルカはケロッとしてる。

しまった!

ルカはまだまだ子供だったんだな。

今の現状を理解することができないんだな。

パパは今は調子悪いけど治るって思ってる。

複雑な思いが僕の頭の中で駆け巡る。

ルカにキチンと話すべきだろうか?
それは出過ぎたマネなのだろうか?

ルカのためにパパは頑張って闘った。

でももう最後なんて言いたくないけどその時が来てしまう。

パパとの別れがこのまま何も知らないで迎えていいのだろうか?

複雑な気持ちだったけれど。
僕もルカに合わせることにした。
パパが治ったらスターウォーズのやつ一緒にやろうね?とか。
ルカを不安にさせないようにしてしまった。

でも僕は…
結局ルカにキチンと話すべきだった…


そのあと。お母さんや妹さんと話をした。


お母さんの話だと。

容態が急変したのは29日の夜中だったそうだ。
28日まではまた大丈夫だったらしい。

28日は約束した日だった。

僕は本当に申し訳ないことをした。
とんでもないことをした。
パパとの約束を破ってしまった。

胸が張り裂けそうだった。

食道癌が肺に転移していたんだけれど。
今回の入院で肺のレントゲンを撮ったら真っ白だったそうだ。

医者からも宣告されたそうだ。

お母さんの胸中を考えるといたたまれない。

お母さんと妹さんが仲の良かった友人や仲間たちに知らせようとルカに聞いたら。

僕の名前しか言わなかったらしい。

僕なんかよりもっともっとたくさん良い友人古い付き合いの仲間たちがいるのに。

お母さんの話では家では全く交友関係とかそういう話は本人はしないそうだ。

なのでお母さんや妹さんからしても誰に連絡をすれば良いのかわからなかったと。


本人はきっとやっぱり会いたくないんだな。
見せたくないんだな。ってまた思った。

まだまだ一緒にいたかったけど…
僕はパパが嫌がるだろうけど。
みんなにできるだけ連絡しようと決めた。

僕の連絡先を妹さんに渡して。
何かあったらすぐに駆けつけますからって言って
僕は病院を後にした。


病院を出た後。

僕はできるだけ今の現状を正確に伝えた。

こんなこと言いたくないけど
もういつまで持つかわからないから
最後に会いに行って欲しいと。

本人は嫌がるかもだけど、知らされた方も色々複雑な気持ちだろうけども。

できるだけ連絡した。



そしてまた今日パパに会いに行った。

今日は病室に色々な人が訪ねてきてるかな?
とか思っていたけど。

病室にはお父さんだけだった…

お父さんとも初対面だったので挨拶をして。
すぐにパパのところに駆け寄った。

今日はパパは一生懸命口をパクパク動かして。
何かを喋ろうとしていた。
声は出ないので全くわからなかった。

手を握って話かける。

今日は手を握っても握り返してくれない。
昨日は握り返してくれた。

もう意識ももうろうとしているし。
お父さんの話では心臓が強いからまだ頑張れていると。普通だったらとっくに…と医者に言われたと。

食べたいものをたくさん食べさせてあげたかったって言ってた。

お父さんが気丈に振る舞っているのがわかった。

僕も奇跡を信じてますとお父さんに言った。

お互い涙を隠した。

そして1時間ほど病室にいて。
僕は病院を後にした。

僕はやはり28日の約束を破ったことが引っかかっている。

それだけじゃなく。
会える時にたくさん会っていればよかった。

いつもいつも後になって気付く。

僕は本当にダメなんだな。




今年に入って母ちゃんに災難続きだ。

去年の暮れに肩の腱を痛めて。
病院に行ったら腱がボロボロ。
過労によるものだった。
手術と言われたが、店が忙しいため。
母ちゃんは手術を選択しなかった。
僕も仕事をしてるので。
大きな宴会の時は休みを取って手伝っていた。

腕が動かせるようになってきたので、僕は自分の仕事を優先するようになった。

しかしある日、母ちゃんは。

店の帰り道に自転車で転倒して頭から落ちて出血が激しかったので救急車で運ばれた。

連絡を受けてすぐさま病院に僕は駆けつけた。
処置してる様子が見えて母ちゃんが血だらけだったので。かなり焦った。
幸いCTで脳には異常がなかった。
7針縫っただけですんだ。

また母ちゃんを休ませないとならないので翌日に急遽仕事の休みをもらって僕が店を手伝うことになった。


母ちゃんは休んで寝てろって言ったけど。
夜に店に様子を見に来た。

まあ母ちゃんも店が生きがいだからなあ。

言ったってきかないから笑


そして昨日。仕事中に母ちゃんから弱気なメールがきた。

血圧が高くて下がらないから病院に行っていたらしいんだけど。高い時は200近くあるらしい。
平均は180位。

薬でもなかなか下がらないので。
血液検査したわけだけど。

なんと。糖尿病が発覚!

しかも町医者が言うには大きな病院の紹介状を書くから入院しなさいとのこと。

それで母ちゃんは弱気になって。
店も閉めなきゃならないなあとか。
もう死んじゃうのかなあとか。
でも明日から予約が一杯入っているから大変だよとか。

聞くと、大きな宴会が3日連続で入っている。

僕も仕事があるし。
手伝うことが出来ない。

しかし、1日だけ休みをもらって結局手伝うことにした。

僕の職場にも大変な迷惑をかけているけど。

今、やれることをやってあげないとという気持ちの方が強くて。

もし入院したりしたらもっと休まなきゃならざるおえなくなってしまうこともあるかも知れないけど。

今日だけは弟も妹も手伝うことが出来なくて。
仕方なく僕が休みを取って手伝った。

これからのことを考えると。
不安しかない。

間違いなく言えるのは。
母ちゃんが無理して店をやっているから、身体がボロボロになってる。

もっと手伝ってあげたいけど。
僕も仕事がある。

店を閉める方向で考えていきたい。

でも母ちゃんのお客さんが悲しむし、淋しがるだろうなとか。
母ちゃんの生きがいを失ってしまうのかとか考えてしまうと。

何がいい解決策なのかわからない。

かと言って僕が仕事を辞めるわけにもいかない。

葛藤だ。