僕は32歳の夏、突如、結婚することを決めた…!




三十数年前、父が母に渡したエンゲージリング。



長男ということもあってか、数年前に母から譲り受けていた。



僕もとうとうこれを使う時がきたんだと、サイズ直しも済み、輝きを取り戻したリングを見ながら、父は「どんな感じで、どんな顔で母に渡したんだろう」と思い更ける。



こんな大切で高価なものをサラッと渡してくれた母に感謝!!




その日の朝、休日にもかかわらず何故かいつもより二時間早く目が覚め、休日の日課であるランニングを敢行。



いつもと同じ距離、同じルートを走ってるが少しだけいつもと景色が違うように感じた。



昨晩、深夜2時を過ぎてるにもかかわらず、テラフォーマーズ全巻を見直すという暴挙に出たから目が霞んでいるのか、それとも!?









こういう職業のわりにボクはあまりヘアスタイリングをしない。



しかし、きょうだけはしっかり整えようと心に決める。


逆方向の場所ではあるがお店で気合いのこもったスタイリング!ハードスプレーも普段より2割増しで♪


若かりし頃、よくこの休日の店内で朝から晩まで一人でカット練習したよなぁ~。



何気なく後ろを振り返ると大量に干したタオルちゃん達がボクのいつも高確率でつぶれてるトップも「今日はちゃんとふくらんでるね、大丈夫だよ!」と言わんばかりに背中を押してくれてる気がした。







決闘の場は大阪のホテル《Noと言わない接客》で有名なリッツカールトン。


サービスパーソンの端くれの僕達にとっては憧れとも言える聖地。ここで男になろうと心に決めた!



大阪市内で仕事終わりの彼女と待ち合わせ、行き先は告げず、リッツに到着。



彼女の服装は若干ラフだったので「何で言ってくれへんかったん?大丈夫なん?」とボクに詰め寄る。



普段は優しく思いやりのある大和撫子も少し怒り気味だ。



ボクはしっかりちゃっかり正装。彼女の焦る気持ちも分かるが「これがプロポーズプランですから許してください」と心の中で思うがサプライズなので言葉にできない。



ゴメンなぁの連呼のなか彼女の手を引きホテル内へ。




少しだけ心臓がパタパタしてきた。




緊張のあまり美味しいはずのフランス料理もなかなか味わえない…。


ってこともなく二人は大変美味しくいただきました。





料理も説明も音楽も温度も全て完璧で、雰囲気の良さに話しも弾み時間の経つのを忘れ予定の時間をオーバーしていた。



ファッ!と彼女の顔を見ると、仕事の疲れと満腹感もあり目が虚ろになっているではないか!


慌ててタイミングを見計らい、リッツのプラン担当の井上さんに合図を送る。



少しまどろむ彼女を尻目に一足先にチャペルに向かう!


あかん!準備バッチリされ過ぎてて逆に緊張してきた。



7、8分で彼女を連れてくると言われたが3、4分で連れてこられたように思う…。




歌詞が自分達そっくりと話した思い出のMINMIのエンゲージリングの曲がかかるなか、約2週間あたためたプロポーズの言葉と共に彼女の指に指輪をはめる。



照れも極限までいくと逆に心地よくなる。照れの向こう側はそんな悪くない。








ボクは望んだ返事がもらえたものの、その時の彼女の顔は驚きが大半を占めていたように思う。



少しして涙が止まらない彼女…。しかし、それが全てを理解してくれた証だとボクは胸を撫で下ろした。



このあと、記念撮影がありますと、井上さん。



急いで涙を引っ込める彼女。「笑顔でお願いします」と、さらに井上さん。


感情のコントロールが大変やなぁと少しワラけた。




冷静に戻ってチャペル内を撮りまくる彼女。




笑顔のあとは逞しさだね(笑)





そう!これからは光指す道も険しいイバラさす道も楽しみながら二人で強く逞しく生きていこう!!





ボクの家で今日最後の1枚!






【一生の間に一人の人間でも幸福にすることが出来れば自分の幸福なのだ】
川端康成









赤い糸の伝説も忘れかけた頃巡りあったあなたへ愛を込めて…。